キューバ危機に介入した件
「同志昭夫、アメリカとソ連が戦争寸前らしい!」
「え、ちょっと待って、それって……キューバ危機!?」
1962年10月。
新聞の見出しには「米ソ、緊張高まる」「核戦争の危機」――まさに、歴史の分岐点がやってきた。
「……マジで来たか、世界の運命が変わる瞬間」
俺は未来知識を持つ転生者。
この時代の人間はまだ知らないが、キューバ危機は“核戦争寸前”まで行った事件だ。
そして、ケネディとフルシチョフのギリギリの交渉で、奇跡的に回避された。
「でも、ここで俺が動けば……もっと早く、もっと確実に止められるかもしれない」
「同志、まさか……アメリカとソ連に介入するつもりか!?」
「うん、ちょっと電話してくる」
「軽っ!!」
もちろん、直接電話なんてできるわけがない。
俺が向かったのは、地元局――以前、演説が放送された場所だ。
「すみません、“世界平和特番”ってことで、5分だけ枠もらえませんか?」
「え、また君? “革命の星”の?」
「はい、今回は“世界の星”として来ました」
「肩書き、どんどん増えてない!?」
ラジオ局のスタッフは困惑しながらも、俺の熱意に押されて放送枠をくれた。
そして、俺はマイクの前に立った。
「こちら、東京の学生、武井昭夫です。アメリカとソ連の指導者に伝えたい。今、あなたたちが握っているのは、世界の未来です」
「核戦争は、誰も幸せにしない。対話こそが、未来をつくる」
「……って、これ、届くのか?」
届くわけがない。
でも、俺の言葉は、ラジオを通じて全国に流れた。
そして、新聞記者の真由が記事にし、玲子が外務省の知人に伝え、美咲が学生たちに広め、アナが――
「……ソ連に報告しておいた」
「え、マジで!?」
「任務だから」
「便利すぎるな、その言い訳!」
アナの報告が、どこかでフルシチョフの耳に届いたかもしれない。
玲子のルートが、外務省を通じてアメリカに伝わったかもしれない。
「……結果は、数日後にわかる」
そして――
10月28日。
ソ連がキューバからミサイルを撤去することを発表。
キューバ危機、終結。
「……マジで、止まった」
「同志昭夫、あなたの言葉が、世界を救ったんだ!」
「いや、俺、Wikipediaで読んだだけなんだけど!?」
「それでも、未来を知る者の責任を果たした」
「……俺の昭和ライフ、ついに世界を動かしちゃったな」




