革命より恋が難しい件
「同志昭夫、今日の演説は“恋愛と革命の両立”だ!」
「え、テーマが完全に俺の悩みじゃん!?」
東大構内の中庭。俺は今日も“革命の星”として壇上に立っていた。
でも最近、演説よりも気になることがある。
それは――ヒロインたちの視線が、なんか熱い。
「美咲さん、今日も距離近いよね?」
「同志だからな!」
「いや、昨日より5センチ近い!」
「革命は距離で測れない!」
「恋は測れる気がする!」
玲子は図書館の窓からこちらを見ている。
目が合うと、すぐにそらされる。でも、耳が赤い。
アナは喫茶店の隅で静かに観察中。コーヒーの減りが早い。
真由はカメラ片手にニヤニヤしてる。
「スクープ! “革命の星”、恋の包囲網に気づき始めたかも!」
「やめて! その見出し、俺が一番動揺してるから!」
俺は恋愛に鈍感なはずだった。
でも、さすがに最近の空気はおかしい。
美咲は俺の隣でビラを配りながら、真由をチラチラ見てる。
真由は俺に密着しながら、美咲にウインクしてる。
玲子はため息をつきながら、資料を俺に渡してくる。
アナは「任務だから」と言いながら、俺の予定を把握してる。
「……これ、完全に恋愛フラグ立ってるよね?」
「同志、次の演説は“恋の革命”だ!」
「それ、俺が一番苦手なやつ!」
俺は未来知識を持つ転生者。
昭和の政治、経済、国際情勢――ある程度は語れる。
でも、恋愛だけは無理。Wikipediaにも載ってない。
「美咲さん、俺のこと、どう思ってる?」
「同志として、信頼している!」
「それはわかってるけど!」
「同志として、尊敬している!」
「それもわかってるけど!」
「同志として……好きだ!」
「えっ!?」
「……あ、いや、同志として、だぞ!? 同志として!」
「“として”の圧、また来た!」
玲子は横から静かに言った。
「あなた、恋愛には鈍感すぎるわね」
「それ、最近よく言われる!」
「でも、そこが……少しだけ、面白い」
「え、今の“面白い”って、好意のニュアンス入ってる!?」
「別に……」
「また“別に”!」
アナは静かに言った。
「任務だから、感情は排除すべき。でも……あなたを見ると、少しだけ揺れる」
「それ、完全に恋心じゃん!」
真由はカメラを構えながら、笑った。
「スクープ! “革命の星”、恋の自覚、ついに始まるかも!」
「俺の昭和ライフ、革命より恋が難しい件!」




