革命の星と呼ばれた日
「同志昭夫、新聞に載ったぞ!」
「え、また!? 昨日も“未来を語る男”って書かれてたよね!?」
「今日はもっとすごい! “革命の星”だ!」
「なんか、アイドルみたいになってない!?」
朝の喫茶店。美咲が新聞を広げて見せてきた。
そこには俺の顔写真――しかも、演説中のドヤ顔――がデカデカと載っていた。
《若きカリスマ、未来を語る! 学生運動に新たな光》
《“革命の星”武井昭夫氏、全国の学生に影響拡大》
「いやいやいや! 俺、ただの転生者だよ!? Wikipedia読んだだけだよ!?」
「同志の言葉が、全国に届いているんだ!」
「それ、ちょっと怖い!」
真由が喫茶店の奥から現れた。カメラ片手にニヤニヤしてる。
「スクープ! “革命の星”、ついに全国デビュー!」
「やめて! その見出し、芸能ニュースっぽいから!」
「でも、事実だよ? 昨日の演説、ラジオで流れてたし!」
「え、ラジオ!? 俺、放送されたの!?」
「うん、地元局が録音してた。しかも、リスナーからの反響がすごくて、再放送決定!」
「再放送って、昭和にもあるの!?」
「あるよ! 録音テープで!」
「テープって、巻き戻すやつ!?」
俺の昭和ライフ、どんどんメディアに侵食されている。
しかも、俺の発言が“預言”として扱われてるらしい。
「同志昭夫、次はテレビ出演だ!」
「え、テレビ!? 白黒の!?」
「そうだ! 教育番組で“若者の声”として出演依頼が来てる!」
「それ、絶対俺じゃなくて美咲が出るべきじゃない!?」
「同志の言葉が、未来を変えるんだ!」
「いや、俺の未来、変わりすぎてる!」
玲子が喫茶店に入ってきた。新聞を手に、ため息をついている。
「……あなた、また騒がれてるわね」
「いや、俺もびっくりしてるよ!」
「“革命の星”って……ネーミングセンス、昭和ね」
「それ、俺も思った!」
玲子は新聞を畳みながら、俺をじっと見た。
「でも、注目されるのは悪いことじゃない。影響力があれば、運動は加速する」
「それ、ちょっと怖い使い方しないで!」
「別に……あなたのためじゃない。運動のためよ」
「また“別に”!」
アナも喫茶店の隅に座っていた。静かにコーヒーを飲みながら、俺を観察している。
「任務だから」
「いや、何もしてないのに監視されてる!」
こうして俺は、“革命の星”として全国に知られることになった。
未来知識を持つ転生者が、昭和の学生運動の象徴になる――そんな展開、誰が予想した?
「……俺の昭和ライフ、もう芸能人みたいになってきたな」




