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ディオン様の親戚?


 お嬢様と呼ばれ、体を揺すられて目覚めた。


「レーヌさん、すみません」


 レーヌさんにもし起きて来なかったら、起こしてくださいと伝えていてよかった。

 使用人なので、本当は自分で起きないといけないのに。反省。

 昨日来ていた服はレーヌさんのものだったらしく、今日はお仕着せを貸してもらった。

 動きやすくて素晴らしい。白のエプロンもレースが着いて可愛らしい。

 本来、侍女は自前の服を着るみたいだけど、私は持ってないし。

 私が発見された時に着ていた服もお仕着せのようだけど、制服かもしれないとレーヌ様が言っていた。そこから、何かわかるかもしれないとその服は、手紙と一緒に王都に送られている。


「お食事はぜひディオン様と取ってくださいね。身支度を整えたら、ディオン様を起こしに行きましょう」

「レーヌさんは?」

「私はすでに済ませてありますよ」

「すみません」

「いえいえ、お嬢様はお客様なのですから」


 レーヌ様は恐縮する私に優しく微笑んだ。

 

「お姉ちゃん、おはよう!」

「あ、起きていたんですね」

「ディオン様、私のことをお忘れですね」

「あ、ごめん。レーヌ。おはよう!」


 寝起きのディオンの柔らかそうな金色の髪は跳ねていて、鳥の巣のようになっていた。

 可愛いけど。


「さて、顔を洗って歯を磨きましょうか」

「うん」


 レーヌさんは水の入った桶を、私はタオルやブラシを持っていた。


「まずはお顔を洗いましょう」

「自分でできるよ」


 ディオン様はぱしゃぱっしゃと桶に手を入れて顔を洗う。


「もっとしっかり洗ってくださいね」


 レーヌさんは片手で桶を持つと、ディオン様の顔をもう一度洗い、私からタオルと受け取って顔を拭いた。


「一人でできるのに」


 ディオン様は面白くなさそうに口を尖らせる。

 可愛いなあ。

 

「次は、まずは歯を磨きましょう。お嬢様、お手伝いしてあげてください」

「はい」


 人の歯磨きを手伝うなんて初めてだ。

 ドキドキしてブラシを持つと、ディオン様にブラシを奪われた。


「僕は赤ちゃんじゃないんだって。自分でできるよ」

「そうですか」


 ちらりとレーヌさんを見ると苦笑していたので、いつも彼女が手伝っているのだろう。

 ディオン様はゆっくりとブラシを口に入れ、歯を磨き始めた。


「水差しから水を注いでもってきてください」

「はい」


 一生懸命歯を磨いている様子が可愛くて見惚れていたら、レーヌさんに言われ、部屋を見渡すと、隅っこに机があって、そこに水差しとコップが置かれていた。

 水を注いで、ディオン様のそばに戻るとやっぱりレーヌさんがまだ歯磨きを手伝っていた。

 ディオン様は不服そうだったけど。

 それから、桶やタオルを片付けて着替えを手伝う。  

 着替えも世話係の役目なんだけど、私は部屋を追い出されてしまった。

 まあ、昨日会ったばっかりの人に裸は見られたくないよね。わかる。

 ディオン様はまだ小さいけど嫌だろう。多分。


「さあ、どうぞ」


 レーヌさんが寝間着を抱えて部屋から出てきて、中に入るように勧められる。

 髪型も整えられ、少し痩せ気味だけど育ちの良さそうな貴族令息がそこにいた。

 

「どう、かっこいい?」

「うん。かっこいい」


 かっこいいというよりも可愛いだけど。

 男の子は可愛いと言われるのをあまり好まないだろうから。


 お仕着せの私が本当にお屋敷の坊ちゃんであるディオン様と一緒に食べていいのかと思ったけど、誰も何も言わなかった。みんな優しそうな目でディオン様を見ている。

 愛されてるなあ。

 でも両親が恋しいんだよね。

 うん。頑張ってお姉さんやろう。


「もう、お腹いっぱい」

「ええ?もう?このパン、すっごい美味しいよ」

「本当?じゃあ、食べてみる」


 ディオン様は甘い人参が入ったパンを手に取る。


「うん。美味しい」


 小さめに作られたパンはあっという間になくなった。

 後ろに控えていたメイドがちょっと泣きそう。

 沢山食べさせなきゃ。

 痩せすぎだ。


 そうして朝食を終え、庭を散歩するというので付いていく。

 手を差し出され、レーヌさんを見ると頷くので、手を取って一緒に歩く。

 あったいなあ。手。

 

「あ!」

「どうしたの。お姉ちゃん?」


 思い出した。

 夢でディオン様の青年版を見たんだった。

 マギーって私のことを呼んでたっけ。

 もしかしてディオン様に兄弟いるのかな?


「ディオン様。お兄さん、いますか?」

「いないよ」


 そうか。じゃあ、あれは単なる夢?あ、でも親戚とかだったら。


「ご親戚に、ディオン様より十歳くらい歳上の男の人いますか?」

「いるよー。マリオンは僕のこと嫌いみたいだけど」


 マリオンか。いるんだ。その年頃の男の人が。


「その」

「ごほん」


 急に咳払いを聞こえ、背後を振り返るとレーヌさんだった。

 うん?


「それよりもディオン様、お嬢様に見せたいものがあるのではないですか?」

「あ、ある!」


 ディオン様が私の手を掴んだまま走り出し、私は転びそうになったが、どうにか付いていく。

 おかげでマリオンのことを聞くのをすっかり忘れてしまった。





 


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