【第五話】まるで生まれ変わったかのようだ、と。
王族としての公務の一切はラディールが引き受け、一方の私は大神官様を筆頭に高位の神官様らの住まう大神殿宮で儀式の日まで過ごしていた。
「ユニコーン・・・気高く美しき心を好むと聞いたことがあるわ・・・。」
思わず、目を細めてしまう。認めてもらえるのか。否、認めてもらえる。
「・・・そう、私はこの国の王妃、国の母なのよ。しっかりしなさい、ニルヴァーナ。」
自分が王妃であることへ不安を感じてはならない。
私の不安は、民の不安。大丈夫、私は国の母なのだから。
今この瞬間もラディールは一人で国を背負っている。
私も愛するひとの隣へ戻らねば。
そう願いを込めながら、神殿で毎夜長く祈りを捧げていた。
その願いが、何をもたらしているか、何も知らぬまま・・・。
そうしてついに、『ユニコーン』を召喚する準備が整い、『星の間』という、大神殿宮で最も大きな聖堂の真ん中でその儀式は行われた。
『ユニコーンは処女以外を殺す』、そのために私に付き添う大神官様以外の高位の神官様たちが周囲へ結界を張る。
そして、『星の間』の真ん中へ促され・・・召喚の儀式を行った。
まばゆい光が地から這い出たように見える。そして段々と鋭い一角を持つ馬のような獣の姿となっていった。
あまりにも不思議で、そしてその光がこちらへ向けられているものだとわかり、思わず目を丸くしてしまう。
ただ、それがどういった感情を持っているのかはなんとなくわかっていた。
ユニコーンの前へ、ゆっくりと近づく。
そして、頭を垂れて、その顔の前で跪いた。
ユニコーンは私をじっと見下ろしているようだったが、頬に、すり、と柔らかく、暖かな感触が触れてきた。
そして、自ら離れていくと、そのまま光が弾けて消えていった。
しん、としていた『星の間』が、盛大な拍手に包まれる。
そして口々に叫ばれたのが、『王妃様は聖女でもあらせられた!』という歓喜と興奮の声。
この日、ようやく認められた王妃であり聖女で、真の純潔を持つニルヴァーナ。
疑いが晴れた今、こう思った。
まるで生まれ変わったかのようだ、と。