表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

【第二話】処刑されるくらいなら『ユニコーン』に殺されたいのです

この国では、成人王族の王位継承と婚姻については、前王の崩御など、特殊な例を除いては『花祭り』と呼ばれる、いわば春の季節にのみ行われる。

今回も例外ではなく、この季節に行われたのだ。

婚姻前最後の冬にはすでに妃教育を終えており、ニルヴァーナは冬解けを待ち遠しく思っていた。

全ては愛するラディールのため、厳しい妃教育に耐えてきたのだから。

それなのに、なぜ、このようなことが起きてしまったのだろう。

ラディールは、私を本当に信じてくれているだろうか。

色々と不安な気持ちが心を巡り、押しつぶされそうだった。

その時。ずっと沈黙を貫いてきた大神官様がようやく口を開いた。

「国王陛下、王妃様。この御懐妊が『過ち』ではないということを、確認する方法がございます。」

ラディールと私は目を丸くしながら同時に大神官様へと声を上げる。

「「それは、いかような方法でございますか!」」

二人揃って同じ顔、同じ言葉、同じ声量で食いついてしまったため、さすがの大神官様も少し引き気味に、

「お、お二人とも、どうか落ち着いてくださいませ・・・。」

私はその言葉に、はっ!と我に返り、

「大変失礼いたしました・・・・。して、一体どのような方法なのでしょうか・・・。」

大神官様は、オホン、と一度咳払いをしてから、こう言った。

「大神官という地位が、なぜ高いのかはご存じでいらっしゃいますね?」

ラディールは静かに耳を傾け、私は自分の知る中での大神官様のいわば『特権』を話し始める。

「ええ・・・聖獣や精霊を、使役できる唯一無二の存在であると聞き及んでおります。」

その答えに大神官様は軽く拍手をしながら続ける。

「その通りにございます。つきましては、その聖獣の中でも、『処女以外を殺す』といわれている『ユニコーン』で真偽をはっきりさせるのがよろしいかと。」

ラディールが少し慌てたように口を開く。

「しかし、万が一『処女ではない』と『ユニコーン』が認めてしまったら・・・ニルヴァーナは殺されてしまうのだぞ?!」

大神官様は、ふぅ、と一息ついて、ラディールの方を見て話し始める。

「・・・国王陛下。王妃様が仮にそれで亡くなられたとしても・・・それ以外の方法で証明ができないのであれば、陛下を裏切った大罪人として処刑されるでしょう。もし、堕胎をなされたとしても、次にお子を望めるかは定かではありません。どうか、ご決断くださいませ。」

突きつけられた事実に、歯がゆそうな顔をしてラディールが拳を強く握りしめていた。

私は、これまでのやり取りの中で、ふと気になっていたことを侍医に問うことにした。

「・・・私の・・・この身体に宿った命は・・・いつごろから、宿っていたと推定されていますか?」

侍医が答える。

「推定、三月ほどかと。」

・・・つまり、花祭りの始まる前。冬解けが始まった頃なのだろう。

「そうですか・・・。」

全く身に覚えがない。誓って、覚えがないのだ。

大神官様にあらたまり、心に決めた言葉を口にする。

「大神官様。私は何度でも、誓って『過ち』は犯しておりません。ですから、『ユニコーン』にその真偽を、委ねたいと思います。」

私は覚悟を決めた強い眼差しで、大神官様の顔を見据えるのだった。

大神官様も私のこの強い決意を受け止めているようだった。

「王妃様、『万が一』の時は・・・『王妃様は婚姻の儀の最中に毒を盛られてお亡くなりになった』として、国葬とさせていただこうと思います。王妃様の名誉を守るためにも、よろしいですね、陛下。」

ラディールは、自分の無力さを感じている様子がうかがえた。

何も言わず、ひとつ、頷くだけだった。

ニルヴァーナは、少し目を伏せながら再び話し出す。

「私は・・・あらぬことで名誉を傷つけられ、処刑となれば、父上、そして母上も罰せられるでしょう。国内でも名のある公爵家のその地位も剥奪されるでしょう。処刑されるくらいなら・・・『ユニコーン』に殺されたいのです。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ