表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

96/154

93.何も知らないでいるから

 僕はアスティのお膝に座る。隣にヒスイ、その隣にルビアとサフィーが並んだ。ボリスやアベルも座ると、ぐるりと丸いテーブルがいっぱいになる。


 運ばれたお料理を一緒に食べて、アスティと同じお茶を飲む。美味しいし嬉しい。僕に「あーん」で食べさせてくれるアスティへ、果物を差し出した。ぱくりと食べて、僕の指も舐めるから擽ったい。


「ふふっ、私のカイは本当に可愛い」


 何度も繰り返すアスティが少し変だけど、僕は笑って首に手を回した。ぎゅっと抱き付く。


「僕もアスティが大好き。ずっと一緒にいようね」


「もちろん離さないわ」


 やっぱり、アスティがいつもと違った。これは気づかない方がいいと思う。アスティが僕に話してくれるまで、何も知らないでいる。そう決めて、アスティの頬にキスをした。





 次の日から、ルビアやサフィーがいる部屋でお勉強になった。お屋敷の中で、僕が一人でいてもいいのは自分のお部屋だけ。お庭やお勉強の移動はもちろん、いつも誰かがいてくれる。皆は大変じゃないのかな? そう尋ねたら、楽しいですと答えた。


 アスティはお仕事が忙しくなった。アベルやボリスも、あちこちにお出かけして帰ってくる。ヒスイとお昼寝することが増えて、変な気持ちにもやもやした。


 ヒスイといるのは楽しいし、嬉しい。全然嫌じゃないけど、アスティとの時間が減るのは嫌だった。お仕事のお部屋で、一緒にいたいのに。今は本当に忙しいだからダメみたい。口に出してお願いして、困らせるのはいけないこと。我慢して飲み込んだ。


 アベルは疲れた顔で、いっぱいの紙を抱えている。ボリス師匠も訓練はお休みだって。ルビアとサフィーは交代じゃなくて、二人でお仕事する日も増えた。暇なのは僕だけかな。


 ごろんと寝転がって、そう呟いたらヒスイが笑った。


「俺もカイ様と同じ予定ですよ」


 あ、そっか。僕が暇なら、ヒスイも暇になるんだね。自分だけじゃないと思ったら、すっと楽になった。


 おやつの時間にお部屋に来たアスティと、手を繋いでお庭を歩く。抱っこしたいと言われて、両手を伸ばして首に絡ませた。冷たい銀色の鱗が気持ちいい。


「アスティ、僕……ずっといてもいい?」


 綺麗な紫色の瞳が大きく開いて、僕を映し出した。すぐににっこり笑って「一緒じゃないと困るわ」とキスをくれる。ヒスイが目を逸らしたの、どうしたんだろう。


「今は危ない時期だけど、アベル達と安全にするわ。そうしたら今まで通りよ」


 うん。頷いてアスティの頬にキスを返した。大丈夫、少し怖いけど……アスティの言葉なら信じる。だから今日は一緒にお風呂に入って眠りたいな。そうお願いしたら、嬉しそうに叶えてくれた。


 大好きだよ、アスティ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ