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84.僕も助けに行きたい

 僕が教わったお勉強では、この世界に4つの種族がいた。ドラゴン、魔族、獣人、人族。一番強いのが竜族で、魔族も強い。獣人だって人族よりは動きが早くて、強かった。一番弱いのが人族なの。


 僕は魔族と人族の子だけど、人族だったお母さんに似たのかな。走るのは遅いし、たくさんは動けない。ほとんど人族だと思う。一番強いドラゴンのアスティは、僕を抱いたまま魔法を使った。弱い僕がいるから片手なのに、槍を持った人が吹き飛ぶ。


「カイ、ヒスイも。耳を塞ぎなさい。嫌な言葉を聞くかもしれないわ」


「わかった!」


 僕は両手で耳を覆った。外の音はほとんど聞こえなくなる。戦うアスティはカッコよくて、でも蹴飛ばされたり魔法で倒された人が気になった。痛いのや、苦しいのは可哀想だな。


 よその子を攫ったり、お母さんやお父さんから奪うのは悪いこと。だから仕方ないと聞いてるけど……痛そうな声が聞こえなくても嫌で目も閉じた。少しすると、僕の頬をつんつんと突かれる。そっと右の目だけ開けたら、アスティが笑っていた。


「怖いの、もう終わった?」


 アスティが何か言ったけど聞こえなくて手を離したら、頷くのが見えた。両方の目を開けてアスティと目を合わせる。


「戦いはもう終わりよ。この先は傷ついた子どもがいっぱいいるの。カイみたいに虐められてた子を助けるわ」


「うん! 僕も助けに行きたい」


 そこで慌てて後ろを振り返る。


「ヒスイはいる?」


「はい、大丈夫です」


 微笑むヒスイにケガはないみたい。ほっとして笑顔で手を振った。魔族の人も大丈夫そう。彼にも手を振ったら、小さく返してくれた。嬉しなってにこにこしたら、頬にキスをもらう。僕のお返しも頬だよ。


 歩くアスティが足を止めたのは、両側にたくさんのお部屋がある廊下の突き当たりだった。ここより先は何もないのに、どうして止まったんだろう。首を傾げる僕の背をぽんぽんと叩いたアスティが、大きく息を吐き出す。


「私が先行する」


「いいわ」


 魔族の人が前に出て、真ん中より右側の壁を叩いた。模様になっている部分を何度か叩くと、扉みたいに開いたの。驚いた僕が目を見開く。ヒスイも「すごい仕掛けですね」と呟いた。そうだよね、びっくりするよね。


 開いた穴に、魔族の人が溶けるみたいに消えた。かつんかつんと靴の音がするから、硬い床なのかな。絨毯を敷いたらいいのに。そう声に出したら、アスティとヒスイが笑った。


「本当にそうね、カイの言う通りだわ」


「音がしたら場所がバレる確率が上がるのに、愚かなことです」


 ヒスイがすごく難しそうな話をした。僕の方が長くお勉強してるのに、賢いんだな。自分のことより嬉しくなる。


「ではいくぞ」


 アスティが黒い壁の穴に入り、最後にヒスイも続いた。音が響く中は薄暗い。外から見たら真っ暗だったけど、中に入ると思ったより明るかった。階段を降りたら、そこはまた廊下がある。変な臭いがする廊下の両側にお部屋があるけど……こんな形のお部屋は初めてだった。

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