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37.互いの色を束縛の約束として

 婚約式の朝はお風呂で体を磨いた。いい匂いのする油を塗ってもらって、ぴかぴかにする。それからお着替えをした。用意された服は僕がお洋服のお姉さんに伝えた通り、紫が入ったお洋服だ。下のズボンは足首まであってゆるっとした感じ、濃紫色だった。黒に近い色で、光を当てると模様が出てくる。


「綺麗」


「番様によくお似合いですよ」


 侍女の人が上着も着せてくれる。袖のないシャツがすごく長くなったみたいな形で、膝の下まで長さがあった。歩きにくいかと思ったら、腰のあたりから下は割れ目が入ってる。スリットと呼ぶんだよ、覚えた。横に入ってるスリットが開くから、歩いても突っ張らない。


 首の近くはズボンに似た濃紫で、下へ向かって薄くなる。裾は白っぽいくらい薄い紫だった。上着の下に柔らかいシャツを着る。これも長袖で手首まですっぽり隠した。上着はいっぱい飾りボタンがついていて、それを侍女の人がひとつずつ留めていく。一度脱いだら、僕が着るのは無理だと思う。


 難しそうなボタンを留める間、目の前の鏡を見ていた。僕の上着は動くときらきらする。布も艶があるけど、銀色の糸で模様が入っていた。ドラゴンだ! 体を少し動かしたら、ドラゴンが浮き上がった。カッコイイし、アスティに似てる!


「銀のドラゴン、アスティだ」


「ええ。女王陛下をイメージした刺繍ですわ。よくお似合いですよ」


 ボタンを留め終わった侍女の人にお礼を言ったら、最後に顔にいろいろと塗っていく。目を閉じたり開けたり、唇も何か塗られた。筆みたいなのが右左に忙しく動く。


「お疲れさまでした。ご覧ください」


 微笑む侍女の人に勧められ、鏡を覗いた。僕じゃない子が立ってる。同じ動きをするけど、黒髪はぴたりと頭にくっついてて、後ろで縛って揺れてる。銀の飾りがいっぱい飾られた黒髪と、赤い目の周りを金色っぽい色で飾っていた。唇も真っ赤だ。


「誰、これ……」


「カイ、迎えに……まぁ! 素敵! カッコいいわ、可愛いわよ。カイ」


 部屋に入ってきたアスティも凄かった。いっぱい飾られてる。僕を抱き締めようと伸ばす日に焼けた腕は、薄い布で覆われていた。透けてる布なんだけど、刺繍の飾りが入ってるよ。飾りを壊さないようそっと触ったら、アスティに抱っこされた。


 アスティの服は胸の辺りが大きく開いてて、肌にきらきらする粉を塗ったみたい。おへその辺りまで細く開いた布は濃赤だった。腰の横から僕の上着みたいにスリットが入って、すらりとした長い足が見える。でも薄い透ける布のスカートを履いてる。


 赤い布は模様みたいに色が変化して、黒い鳥が刺繍されていた。小さい鳥がたくさんじゃなくて、大きい鳥がどーんと腰や胸にかけて羽を広げてる。肩や裾は小さな羽根が落ちた感じの絵だった。


「アスティ、かっこいい!」


 銀の髪は僕と同じにぴたっとさせて、後ろで揺らしてる。刺さった飾りに赤い石が付いてて、僕とお揃いだった。


「ふふっ、婚約式だもの。大切なカイが私の番だと皆に知ってもらうのよ。民にも告知して、誰もがカイを好きになるわ。でもカイが好きになっていいのは、私だけ。約束してね」


 明るい声で言うのに、アスティは何か怖がってるみたい。僕が約束したら、笑ってくれる?


「僕、アスティだけでいい。約束する」


 にっこり笑ったアスティにほっとする。アスティはいつも笑顔でいて欲しいから。僕はいくらでも約束できるよ。

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