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23.海へ向けて出発

 この国はドラゴンであるアスティが治めてる、と侍女のお姉さんに教えてもらった。侍女のお姉さんや騎士の人も、皆ドラゴンなの。王宮と呼ばれるこの屋敷で、ドラゴンじゃない人のが少ないんだって。


 僕はドラゴンじゃなかった。魔族と人族のハーフなの。お母さんが人族で、お父さんが魔族みたい。髪や目の色が魔族の色と聞いた。でも、このお屋敷で会う人は、ドラゴンと違う僕にも優しい。


 お庭の一部が広くなってるの。そこまで一緒に手を繋いで歩いた。僕がずっと抱っこされてると、歩けなくなるとお医者さんに言われたから。毎日少しでも歩くようにしてる。いつもは朝ご飯の後、アスティとお庭を歩いてるんだけど。


 今日はお空を飛んで隣の国に行くから、お散歩の時間はなかった。広くなった場所は、丸い形をしてる。騎士の人が手合わせをすると聞いた。見せてもらおうとしたら、危険だからアスティと一緒じゃないとダメだったの。今度見せてもらう約束をしたよ。


 騎士の人は外側に立ってて、手合わせはしてないみたい。丸い場所は中央から同じ模様が外へ広がって、綺麗な石が敷かれていた。贈り物で貰った紺色のズボンと白いシャツ、それから紺色の靴を履いてきたんだ。上に羽織る服もあるけど、これはいらないと思う。


「上着を着て、カイ」


「どうして」


 日向で暖かいからいらないよ。首を傾げたら、優しく説明してもらえた。空の上を飛ぶと、うんと寒いんだって。お日様が近くなるのに寒いなんて変なの。でもアスティは嘘をつかないから、僕は上着に袖を通した。先に右手を入れて、左手を……あれ、お洋服の反対側はどこ?


「手伝わせてね」


 アスティが上着を僕の肩にかけて、袖を通してくれた。左手も上手に出たから、着替えは終わり。荷物と僕を置いて離れたアスティが、ふわりと浮く。すぐに光って、アスティは銀色のドラゴンになった。


「おいで、カイ」


 呼ばれて走り出し、荷物を振り返る。どうしようと思ったら、騎士の人がアスティの近くに運んでいた。爪で掴んで飛ぶけど、落とさないように紐も結ぶ。僕は騎士の人が用意した箱に入った。


 箱は下半分しかなくて、蓋がないの。その中にクッションを敷いて座る僕は、上から毛布をかけてもらった。そんなに寒いのかな。腰についてるベルトを箱に固定する。落ちたら大変だからね。アスティの背中はすべすべした鱗で、落ちたら掴まるのは難しいかも。


 準備が終わったら、アスティが一声鳴いた。騎士の人が皆で頭を下げる。僕もペコリとしていたら、ふわりと浮き上がった。空の旅は二度目、最初はこのお屋敷に来る時だった。今回はここから出掛けるなんて、わくわくする。遊びに行って、また帰って来ると約束したから。


 あっという間に高くまで飛んで、本当に寒くなった。毛布を首まで巻いて、丸くなる。アスティが魔法で、あまり風が来ないようにしてくれるんだけど……それでも寒い。少し飛んだら、暖かくなってきた。同時に、変な匂いがする。


「アスティ、変な匂い」


「潮の香りね。海が近いのよ、ほら」


 太陽に向かって飛んでいたアスティがくるりと左に向きを変えると、見たことがない大きな水溜まりが広がっていた。青と白でキラキラしてる。


「うわぁ!」


「下へ行くと、もっと香りが強くなるわよ」


 この水の匂いなのかな。触ってみたいし、どんな味か飲んでみたい。こんな広い水溜まりなら、僕やアスティを飲み込む大きなお魚がいるのも当然だよね。

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