表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/154

15.ドラゴンは小さくて可愛い生き物が好き

「女王陛下、幼子を言い包めるのはおやめください」


「何が悪いの? 私の番よ」


 大きな部屋で言い争う人達は、僕の話をしているみたい。怖くて体を丸めた。震える僕を撫でながら、アスティが時々髪にキスをする。僕の黒い髪は汚いと言われてたけど、綺麗と褒めたのはアスティとお母さんだけ。この人達も僕の色が嫌いなのかも。


 アスティが座ってる席は階段の上にある。5つくらい段があって、その上だった。だから立って話をする人より少し高いくらい。上から見下ろすみたいになって、僕は居心地悪くて目を逸らした。


「物心つくまで、彼の意思を尊重すべきでは?」


「まだ幼過ぎます。どこかへ預け、ゆっくり愛を育むべきでしょう」


 預ける? アスティと僕は一緒にいる約束をしたのに。この人達は邪魔するなんて。悲しくなった。僕が綺麗な銀色や金色の髪だったら、こんなこと言われないかも知れない。僕の赤い目もお父さんそっくりで気持ち悪いと言われた。


「アスティ」


 小さい声で呼ぶ。怖い顔をしてたけど、「なに?」と僕を見る目は優しい。この紫の目、すごく好き。夜が明ける前の空みたいだし、黒とも青とも違う不思議な色だから。銀色の髪や鱗にとても似合ってる。じっと見つめた後、僕は右目の上を手で覆った。


「この赤い目がいけないの? それとも黒い髪? どっちもいらないから、僕を捨てないで」


 髪がいけないなら、全部切っていいよ。赤い目がダメなら、蓋をすればいい。それでダメなら、目を開かなくするよ。だから僕と一緒にいて。


「そんなこと言ってはダメよ。カイ、あなたの髪一筋、視線ひとつでも私のもの。誰にも奪わせないわ」


 気づいたら、段の下にいた人は皆、黙っていた。驚いた顔で僕を見ている。それが怖くて、ぎゅっと抱き付いた。


「申し訳ございません、怯えさせる気ではありませんでした」


「番様のお気持ちが固まっているなら、我らが口を挟むことはございません」


 聞こえてきたのは、難しい言葉ばかり。意味が分からなくてアスティを見上げる。僕はダメと言われたの?


 ふぅ、アスティが溜め息を吐いた。びくりと肩を揺らした僕の額に唇が触る。もっと下、僕の唇に触れて。ここは特別なんでしょう? 僕だけだって言ったから。目を閉じて顔を上げて待つ。少しだけ唇を尖らせて……触れた柔らかい感触に嬉しくなった。


 アスティと出会ってから、嬉しくなると口が緩んじゃうの。へらっと笑った僕を撫でて、アスティが何かを言いつけた。皆が頭を下げて部屋を出ていく。


「僕、嫌われたの?」


「そうじゃないわ。皆はカイがまだ子どもだから心配しただけ。あなたを嫌う竜なんていないわ」


 ドラゴンは小さくて可愛い生き物が好きなのだと、こっそり教えてもらった。だから皆は僕を好きだよ、って。


「大きくならないようにする」


 ぐっと力を入れて拳を握り、そう言ったら、アスティは笑った。


「安心していいわ。カイが大人になっても、ドラゴンから見たら小さくて可愛いもの」


 明日はドラゴンがどのくらい大きいか、見せてもらう。小さな約束をした。明日叶う約束だけど、明日もまた別の約束をするんだ。そうしたら、一緒にいられるでしょう? アスティは僕の質問に「そうね」と微笑んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ