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【完結】世界を滅ぼす僕だけど、愛されてもいいですか  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
本編

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144.やっと自信を持って言えるよ

 えいっ! 大きく振った剣が、ボリス師匠の大剣を弾く。そのまま踏み込んで、振り抜いた剣をぴたりと止めた。ボリス師匠の脇腹に触れる手前で止まる。咄嗟に鱗で竜化したボリス師匠の腕は間に合わず、僕の勝ちだった。


「見事だ。ヒスイはともかく、番様に負けると思わなかったぞ」


 からりと笑ったボリス師匠に頭を撫でられた。


「やった!」


 勝ったら大人の証拠だと思って、いつも挑んできた。強い竜族の将軍を務めるボリス師匠は、とにかく強くて。ヒスイもこないだ、ようやく勝てたばかりなの。ヒスイは僕よりずっと強いのに、それでも苦労していたよ。


「昨日はラーシュを負かしたと聞いたぞ」


「うん。炎の魔法の後ろに氷で作った矢を隠して、風の弓で飛ばしたの」


 魔法陣で防ごうとしたラーシュの頭上に飛ばし、背後から戻ってくる矢にしたんだ。にこにこと種明かしし、背中を掠めて慌てたラーシュを思い出す。僕の魔術は一人前だと言ってくれた。


「そんなに急いで大人にならなくていいんだぞ」


「昨日、同じことをアスティにも言われたよ」


 でも早く大人になりたかったんだ。ピンクの髪のマデレイネの死は、僕に時間と怖さを教えてくれた。どんなに愛していても、寿命が違えば死に別れてしまうこと。奪われる可能性もあること。何より、待たせることの辛さも。


 子どもだった僕は、何も知らなかった。知らなくてもいいように、アスティが守ってくれてたんだ。甘えてそのまま生きる方法もあると思うけど、僕はアスティを支えたいの。だから強くなりたいと願った。


 僅か3年、されど3年――僕、魔術も剣術も強くなったよ。


「やっとアスティに言える」


 大好き、より上の「愛してる」と伝えたい。守られる僕じゃなくて、強くなった僕を見て。まだ隣に並ぶには足りないけど、斜め後ろに立つくらいはいいよね?


「いいことを教えてやる。女王陛下は……」


 わざと言葉を止めたボリス師匠は、手招きした僕の耳元でこそこそと内緒話をした。


「それ、本当?」


「ああ。嘘をついてどうする。強いドラゴンは嘘を吐かないんだ」


 ボリス師匠はよく口にした。嘘は弱い者が使う手段だ。だから強いドラゴンは嘘を吐かないって。嬉しくなって笑顔で頭を下げた。


「今日の稽古は終わりだ。というか、お前ら二人とも鍛錬だけすればいいぞ。自分達のペースでやれ。俺もお前らに混じって鍛錬する」


 これからは師弟じゃなくて同等の仲間だ。笑うボリス師匠に抱きついて、もう一度お礼を繰り返した。弱い僕を強くしてくれて、本当にありがとう。


「カイ様、急いでください。女王陛下の執務があと1時間で終わります」


 情報提供は、協力を頼んだアベルだね。ヒスイも準備を手伝ってくれた。


「わかった、ありがとう。ヒスイ」


 手を振って走り出す僕に、後ろからボリス師匠が叫んだ。


「頑張れよ、番様」


「うん!」


 今日、僕はいろんな人の手助けを借りて、アスティに愛してると伝える。喜んでくれるよね。

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