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132.二人で最高の贅沢をした

 次の日の仕事をすべてキャンセルして、アスティと僕は一緒にいた。僕のお勉強の予定も変更したよ。


 アスティ以上に優先する人なんていないから。仲良しのヒスイだって、アスティと比べられない。外へ出掛けることもなく、お部屋でごろごろした。仕事で疲れたアスティを膝枕して、銀髪を撫でながらキスをする。少ししたら抱き合ってベッドに寝転んだ。


「何もしない日って贅沢ね」


「うん。アスティと二人きりで、すごく幸せ」


 呼ばないと侍女の人達も来ない。護衛のルビアもドアの外にいてもらった。昨日のアスティの様子を知ってるアベルは、特に何も言わない。気分転換にいいさ、とボリスは笑ってた。


 幸せな時間は早く終わる気がする。日暮れになって、離れるのが惜しくて抱き付いた。


「明日がゆっくり来ればいいのに」


「ふふっ、同じことを考えてたのね」


 アスティも同じ? 嬉しくなって首筋に唇を押し当てる。ちゅっと音を立ててキスをしたら、僕の額や頬、唇にいっぱいキスを返された。竜族は逆鱗という鱗があって、その周辺はとても敏感なんだ。僕がキスしたのは、その近くだったみたい。


 番の僕が触れると、すごく気持ちいいと言ってた。どの鱗だろう。探そうと覗き込んだら「まだダメよ」と止められる。結婚式の時に、その鱗を見せてくれる約束をした。結婚したら触れてもいいんだって。


「もっとお勉強するね」


 竜族の習性や礼儀作法は独特で、僕はお勉強の最中だ。アベルやボリスから習い始めたばかりだった。アスティの頬と僕の頬をくっつけて、にこにこ笑う。お互いに頬が動いて、笑ってると分かるの。


「アスティは明日、何するの?」


「ネズミの駆除よ」


 それって、女王様のお仕事なのかな? 首を傾げていたら、アスティに予定を聞かれた。


「僕は稽古とお勉強があるよ。ボリスやヒスイと剣術の稽古をして、お昼を食べたら竜族のお勉強」


「アベルが担当?」


「うん!」


 久しぶりに、アベルがお勉強を見てくれる。竜族の歴史はこないだ終わったから、習性についてだったかな。


「私が教えてもいいけれど、照れちゃいそう」


 くすくす笑うアスティと夜まで、べったりくっ付いて過ごした。翌朝が遅く来るように願ったのに、いつも通りに来てしまう。朝日が差し込む部屋で、着替えた僕はアスティの胸に顔を埋めた。


「いってくるわ」


「うん。いってらっしゃい。待ってる」


 今日は僕の方が早く終わる予定だった。午後がアベルだから、時間通りのはず。先に待ってる約束をして、護衛のサフィーと歩き出す。迎えに来たヒスイと合流し、ボリスに剣術を習った。途中でルビアが合流して、一緒に剣を振るう。


「お昼の前に汗を流しましょうか」


 サフィーに言われて、くんくんと自分を匂ってみた。確かに汗の臭いがするね。頷いて、ヒスイと一緒に水浴びに向かった。お風呂ほどじゃないけど、冷たくない池があるんだ。


 綺麗な湧水を流した池は、赤い魚が泳いでいた。その端に、水浴び用の石畳がある。服を着たまま、魔法で汲んだ水を被った。


「ひゃっ、いつもより冷たい」


「本当です。温めましょう」


 ヒスイと二人で協力して水をぬるく温め、せーので被った。サフィーは見守るだけ。水浴びを終えた僕達は、用意されたタオルで体を拭いて……僕の記憶はここで途切れた。

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