表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

126/154

123.匂いを嗅いでいいのは番だけ

 今日は、サフィーと一緒にお菓子を作る。お昼までに作れば、お茶の時間に出せるって。ヒスイも手伝ってくれるの。


 アスティに美味しいお菓子を出したい。ルビアに頼んだら、料理はサフィーが得意ですと教えてくれた。ルビアは苦手なんだよ。


「ルビアに作らせると、なぜか焦げて黒くなります」


 黒い焦げたのって、炭? 食べられるのかな。お菓子用の粉や卵、ナッツを用意する。お菓子の作り方は、サフィーが本を見せてくれた。


「いいですか、重要なのは量をきちんと計ること。それから順番を変更しないことです」


「わかった」


「頑張ります」


 慎重に二人で粉を計る。重さピッタリだよ。卵を割って、隣に牛乳も用意した。書いてある通り、順番に従って混ぜていく。捏ねたら平らにして型を抜いた。


「これは犬?」


「こっちはドラゴンです」


「ナッツは細かく……このくらい?」


 あれこれ騒ぎながら、沢山の型を使って色んな形のお菓子を作った。これを焼くのは、危ないから大人の仕事。サフィーに任せることにした。オーブンに入れたお菓子に手を合わせる。


「美味しくなりますように」


「俺もお願いします」


 粉がついた手を洗ったけど、ヒスイから甘い匂いがする。焼き菓子に入れたお砂糖かな。くんくん首筋の匂いを嗅いでいたら、サフィーが注意した。


「そういうのは、番とだけだ。首の匂いは特別なんだぞ」


「そうなの?」


 びっくりする。アスティの首の匂いを嗅いでも、誰も何も言わなかったのは、番だから? じゃあ、ヒスイの匂いはダメなんだね。


「ごめんね、ヒスイ」


「いいえ。俺は気にしませんが、竜族の方は厳しい方が多いので……次から気をつけましょうね」


 ヒスイは僕より大人みたい。いけないことをしたのに、怒らなかった。僕は人族で育ったから、そういうお話を知らないの。いろいろ教えてもらおう。


 ヒスイと手を繋いで、お庭に出る。最近は授業もなくて、お屋敷を作る作業のお手伝いが多かった。僕達は色を塗ったり、小さな道具を運ぶお仕事だ。今日もお手伝いすることあるかな。


「え? 番様とヒスイは今日休みと聞いてます。だからお菓子を作っていたのでは?」


 あれ? 僕はお仕事は午後からで、お昼までは時間があるからお菓子を作れると思ってた。顔を見合わせて、お手伝いに行くと伝える。


「せっかくの休みですから、空を飛んでみませんか。俺の背に乗せますよ」


 誘われて、ヒスイとちらちら目を合わせる。それから二人で頷いた。


「「乗る!」」


 サフィーは青い鱗のドラゴン。水や氷を使った魔法が得意で、落ち着いた性格の人だよ。でも空を飛ぶと性格が変わるみたい。


 すごい勢いで上昇したり急降下したり、僕達は大興奮で手綱を握った。魔法で落ちないとわかってても、下へ向かうとお腹がぞわっとする。ぶわぁってなって、じわじわするんだ。すごく楽しかった。


 気づいたらお昼を過ぎていて、慌ててアスティのところへ向かう。もしかして、僕がいないから食べてないかも。心配は当たってしまい、出かける時は気をつけようと決めた。


「お菓子を焼いたんだよ、おやつに食べよう」


「ふふっ、それでカイから甘い匂いがするのね」


 くんと僕の首筋の匂いを嗅いだアスティ。僕の番だから平気。ちゃんと覚えたよ。笑いながらそう伝えて、アスティの首筋に顔を埋めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ