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114.黒猫のぬいぐるみ、名はシド

 壊れたお屋敷を片付けるドラゴンは、軽そうに石や木材を運んでいく。きっと軽いんだと思って小さいのを手に取ったら、持ち上がらなかった。


「何をしているんですか」


「ヒスイ、これ持てる?」


「無理です」


 良かった。僕だけじゃない。ヒスイも持てなかった。安心して説明した。ドラゴンは凄いね、という結論に行き付き、二人で空を見上げる。危ないから、少し離れた木の陰にいるよう言われたの。


 働いているドラゴンの中に、アスティやアベルの姿も見える。


「頑張って!」


 叫んで手を振れば、皆が尻尾を振ってくれた。


「お待たせしました。お茶とお手拭きですよ」


 今日の護衛はルビアのお仕事。お茶と布巾が入った籠を運んできた。中が平くて、大きい籠を覗いたらお菓子も入ってる。


「お菓子だ!」


「番様もヒスイも。手を拭いてからです」


「「はい」」


 声を揃えて返事をし、仲良く並んで手を拭く。それからお茶を飲んだ。お菓子は口の中でもそもそするから、先にお茶を飲むんだよ。お作法のお勉強で教わったの。


 涼しい木陰で、お茶を飲んでお菓子を食べる。僕達はそのままお昼寝もすることになった。本当は起きて見ていたかったんだけど……お昼寝は大きくなるために必要なんだって。


 僕は早く大きくなって、アスティと番になるの。今も番だけど、もっと仲良くなるんだよ。アベルもボリスも、どのくらい仲良くなるのか教えてくれない。大人になれば分かるのかな。


「おう、ここだったか」


 ラーシュががしがしと黒髪を掻きながら現れ、お昼寝で横になった僕の隣に転がった。


「だめだ、まだ眠い」


「一緒にお昼寝する?」


「おまっ……ま、いっか。そうやって誰でも誘うんじゃないぞ。せっかく救った世界を、竜女王に壊されかねない」


「アスティは、そんな悪いことしないよ。それに、ラーシュは平気だからいいの」


 アスティも怒らないと思う。ラーシュは僕を助けてくれたから。それに僕と同じ色なの。黒い髪と赤い目。目の色は時々違うけど、でも赤も持ってる。


「羊皮紙はどうした?」


「ここ」


 抱き締めた、黒猫のぬいぐるみを見せる。前にお部屋にあった大きな猫や熊は、全部ダメになっちゃった。破けたり、燃えたり、天井に潰されたんだよ。そうしたら、新しいぬいぐるみをアスティが買ってきた。


 赤いリボンの黒猫で、目は紫色。名前はシドにした。お腹の中に羊皮紙を入れたんだよ。そうしたら僕がずっと抱っこしていられるし、勝手に触らない約束も守れるでしょ?


 得意げにそう説明したら、ラーシュはなぜか大声で笑って、苦しそうにお腹を押さえて、また笑った。


「いい考えだ。憑依の禁止魔法陣を書き足したら、問題ないだろ。やるのは……もう少し魔力が戻ったら、な」


 ルビアが驚いた顔をしたけど、ラーシュはそのまま眠ってしまった。僕は抱っこした黒猫を撫でる。ゆっくり目を閉じて、気づいたら後ろのヒスイはもう寝てた。前も後ろも温かいな。目を閉じて、シグルドに声を掛ける。


「一緒だから、もう寒くないよ」

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