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113.アベルのお家にお泊まりした

 アベルのお家は、お屋敷より少し小さい。皆が入れるかと心配したけど、お客様用の部屋があるから平気なんだって。お邪魔しますと挨拶して入るラーシュをみて、僕も繰り返した。ただいまとは違う挨拶みたい。


「壊れたアスティのお屋敷は、どうするの?」


「作り直すのよ。それに私の屋敷だけどカイの屋敷でもあるわ。どんなお部屋にするか、一緒に考えてちょうだい。もちろんヒスイ達もね」


 僕のお屋敷? 凄い! 興奮した僕は体を揺らし、笑いながら押さえてもらう。暴れてごめんね、落ちちゃうところだった。


「ご無事で安心しました。一時期はどうなるかと……心配で」


 泣きそうなヒスイの頭を、抱っこされた上から撫でる。いつもは僕より高い位置にある頭だけど、アスティの腕にいるから今は僕が上だよ。


「泣かないで、ヒスイ。アスティ、ヒスイのお部屋も作ってくれる?」


「ええ。皆でもう一度屋敷を作りましょうね」


 侍女の人も頷いて、誰もケガ人がいなかったと教えてくれた。ラーシュとアベルが避難させたんだって。


「こちら側の部屋は、全部自由に使っていただけます」


 ありがとう、とアベルにお礼を伝える。ラーシュは一番奥にある部屋に入って、「疲れたから明日は起こすな」とドアを閉めちゃった。


「ラーシュは疲れたの?」


「そうね。あれだけ魔力を搾れば、さぞ疲れたでしょう」


 笑うアスティに釣られて笑い、僕は抱っこした羊皮紙に声をかけた。


「シ……えっとシドは強かったんだね」


 シグルドと全部呼んではいけない気がして、最初の音と最後の音をくっつけた。


「名前を聞いたの?」


「うん。でも全部は言わないの」


 アスティが僕に嘘を言わないから、僕も同じ。だけど、名前は言わない。話してと言われることもなかった。


 誰もシグルドの名前を呼ばなかったから、きっと秘密にしてたんだ。僕に教えてくれたのは、お友達だから? ヒスイみたいに名前を呼びたいけど、短くして呼ぶね。そうしたら本当の名前は、僕とシグルドだけの秘密だもん。


 お腹が空いた、そう口にしたアスティはラーシュの隣の部屋に入った。僕も一緒だよ。そこからヒスイ、侍女の人達が部屋を借りる。


 お部屋はあまり広くないけど、お風呂があった。ベッドもいつもより狭い。でも今日はくっついて寝たいから、ぴったりだね。運ばれてきた果物を「あーん」で食べて、羊皮紙を眺める。


「シドはお腹空かないかな」


「封印されている時は、眠ってるのと同じ。食べたりお風呂に入ったりはしないのよ」


 僕が差し出した「あーん」で、果物を食べたアスティが教えてくれる。分かりやすい説明に頷いて、羊皮紙を撫でた。寂しいって言ったから、たくさん話すね。寒いなら、抱っこしてる。


「僕、ずっとシドを抱っこしてたいな」


「ずっと? 私も抱っこして欲しいわ」


 アスティがそんな風に言うから、お風呂に入った後は抱っこし合って寝た。ベッドの中でピッタリくっついて。


 寝てる間に潰すといけないから、羊皮紙は机に置いたよ。余ってる枕に乗せて、上からタオルを掛ける。撫でてから挨拶した。


「おやすみなさい」

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