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【サポーター特典SS】※2022/7/2公開

 アスティに時間が出来た。訪ねてくる予定の人が遅れてるみたい。だから午後はお仕事がなくなったと聞いて、僕は嬉しくなる。本当は良くないの、遅れた人を喜んだらいけないけど……夜ご飯を一緒に食べられないと聞いて、寂しかったんだもん。


 ドキドキしながら待っていると、真っすぐ僕の所へ来てくれた。お部屋の入り口に立つ僕を見つけて、嬉しそうに抱き上げる。頬にキスを貰って、僕も返した。


「おかえり、アスティ」


「ただいま戻ったわ、カイ」


 抱っこされて僕も首に手を回す。今日も綺麗な銀の鱗に唇を寄せたら、慌てて止められた。


「ここは……ちょっと」


 顔が赤いアスティが、もごもごと言い淀む。何だろう。僕が悪いことしたなら、注意して欲しい。違うみたいだけど、言いづらいのかな。ちらっとアスティが目配せしたら、扉の脇に立っていたルビアが外へ出て行った。


「首筋の鱗は敏感だから、あまり触らないで欲しいの」


 びんかん? 意味が分からなくて指先でつーとなぞったら、さらに赤くなった。もしかして、撫でたり唇を当てると具合が悪くなる場所なの?


「アスティ、ここ具合悪くなるの?」


「あ、ええ。ええ、そうなのよ」


 勢いよく頷くから驚いたけど、僕の所為で具合が悪くなったのはごめんなさいだった。撫でたいけど、我慢するね。


「ごめんなさい、もうしないね」


「……うん、大人になったらしてもいいわ」


 大人になると治るの? よく分からないけど、きっとアスティの言うことは正しいはず。僕は頷いておいた。だって、聞いたらアスティがもっと赤くなって、熱くなる気がしたから。


 手を肩に置いた僕は、どうしようかと迷う。しっかり抱っこされると首の鱗に触っちゃうけど、アスティが具合悪くなるのは困るよね。


「あのね。ぎゅっと抱っこされた時、触ったら困るけどどうしよう」


 考えても分からないことは、聞いてもいい。そう言われたから言葉にしたら、アスティが考え込んでしまった。変なこと聞いたのかな。


「キスだけ止めましょう」


 キスだけ? 唇を当てなければいいと説明されて、頬をすり寄せてみた。様子を窺ったら、少し赤いけど真っ赤じゃない。


「大丈夫? 我慢してない?」


「平気よ。カイの体温が気持ちいいわ」


 そう言ってくれて良かった。すりすりと頬を寄せて、冷たい鱗を確かめる。この鱗に触れると、アスティだなって思うの。そう伝えたら、嬉しそうなのに眉尻が下がってた。困ってる時の顔みたい。


「本当は嫌?」


「いいえ。気持ちよすぎて困るのよ」


 気持ちいいのはいいことなのに、どうして過ぎるとダメなんだろう。首を傾げた僕は、ご飯に例えて教えてもらった。美味しい物を食べるのは幸せだけど、たくさん食べ過ぎるとお腹が痛くなる。それと同じで、ちょっとがいい。もう少し欲しいところで食べるのをやめるのだと教えてもらった。


 そっか、アスティの鱗もまだ触りたいところでやめたらいいんだね。触ってもいいと言われたのが嬉しくて、僕はまた頬を寄せた。ぴたりと張り付くと、胸みたいにドキドキの音が聞こえる。僕もドキドキしてるのかな。アスティに伝わればいいのにね。


 一緒にご飯を食べてお風呂に入って、並んでベッドに眠る。今日も僕はアスティが大好きで、アスティも僕を好きでいてくれた。ずっとこんな日が続きますように。

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