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(二)-4
自分でも気が抜けた脱力状態だとわかる動作で、益田はスチール製の事務椅子に座った。
「とにかく、諦めずにまた提出するしかないのでは」
隣の席の吉見福江がパソコンに何かを入力しながら言ってきた。吉見はこの道二十年のベテラン職員で、この事務所にいなくてはならない存在だった。万事きびきびしていて厳しい人で、不正は見逃さない人だった。普段からの口調も結構強めであった。しかし、今はその強い口調に励まされている気がした。
「ああ、そうだな。とりあえず、明日役場にまた行ってくるよ」
そう言うと、益田はもう一度深くため息をついた。
(続く)