第6話 ハウス・オブ・ルトラ
本日は2話投稿しております。こちらは2話目です。
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彼女と私の部屋の構造は同じようです。本棚に置いてある資料は、虎系統のモンスターについて書かれているものが多くあります。それにしても、他人の部屋に入るのは恐怖でしかないですね。なんとか怖がっていることを気づかれないようにしないと。
「すっ、すすすす素敵なお部屋ですね」
「そんなに緊張しないで。怖くないよ〜。さんもつけなくていいからね!」
ビビりまくっているのはバレていたみたいです。にこにこ笑いながら背中をさすってくれます。
「ふふふ可愛いなぁ……早速このもち肌の秘訣を聞かせてもらおうかな!」
「……グローブバナナの果実は肌に良い影響があります。三股イチゴと合わせて食べるとより効果的です」
「おお!」
なんとか美容の話題で盛り上がりました。ルトラからは大軍牛のステーキと、色とり鳥の蒸し焼きをおすすめされました。その後は探索者として何を目標にしているかを話す流れになりました。
「私は虎系のモンスターを研究してて、森林とか山での探索のエキスパートを目指してるんだ」
「本棚も虎系モンスターの資料ばっかりですもんね」
「えへへ……ばれてたか。アジサイは?」
「私はまだはっきりとは決まってないですが、希少生物の研究したいと思っています。極地や未踏の地にも踏み込みたいですね」
「いいね!私たち2人とも研究者気質強めの探索者だね」
「そうなんでしょうか……そうかもしれません……どうなんでしょう……」
探索者にも色々います。未知のモンスターの発見を目指す者や新しい薬草を求める者。人類未到の地へ向かうことを目標にする者もいれば、富と名誉を求める者もいます。
そんな彼らの中でもモンスターや植物などの研究を熱心に行なっている人達がいます。そういった人は研究者気質が強いとか、研究者タイプだとか言われるているのです。
モンスターの生態系や縄張りをよく観察し、異常や変化を察知することが探索者の仕事の基本です。そうなると当然モンスターや自然、その他様々なことに対する広く深い知識が要求されます。それが高じて私たち探索者の中には研究者としての二足の草鞋を履く人も出てきます。
学者や学生が探索者を兼任することもたまにあるのです。しかし、近所の林や川ならともかく多くの森や山、河川には危険が付き物です。代表的なものとしてはモンスターの存在。
雪山や火山ならそれそのものが脅威になりますし、そもそも大抵の山岳は人の手による整備が全くされておらず、とても一般人が立ち入れる場所ではありません。そして、そのために私達のような探索者がいるのです。
冒険者でも可能な場合もあります。しかし、彼らは自身の戦闘力に重きを置いており、専門的な知識を持ち合わせていない場合がほとんどです。
私としては自分が研究者だとはそれほど思っていませんでした。どちらかと言えば冒険者よりというか、自然でのサバイバルで力を発揮するタイプだと考えていました。
でも、よく考えて見ればそれと研究者気質であることは同居できるように思えます。視野狭窄とまではいきませんが、考えが方が固くなっていたようです。気づかせてくれたルトラに感謝しなければ。
「おーいアジサイー。えいっ」
「ひゃあ!いきなりうなじを撫でないでください!」
「えへへ……無防備だったから、つい」
考え事に夢中になってしまっていて、ルトラを放置してしまっていました。申し訳ないです。
それはそれとしてうなじをつうっと撫でるのはやめてほしいです!やたらと艶かしくてなんだか変な気分になります!
「ルトラはなぜ、虎系モンスターを研究し始めたんですか?」
「子どものころから猫が好きでねー。北の方の出身なんだけど、虎系モンスターもたくさんいたんだ。麗虎とかカンタイガーとか、色々いたから調べて研究しているうちにどっぷりハマっちゃって」
話しながら、ルトラはちゃっかり私を膝の上に載せ横抱きにしました。身長があんまり変わらないから、どことなく恋人っぽい距離感です。耳がトマトのように真っ赤になってしまいます。
「学者とか研究者になるのも手かなーって思ってたんだけど、それだとフィールドワークが大変でしょ。依頼するのにもお金がかかるし。それで、いっそのこと私自身が探索者になっちゃえ!って考えたの」
「それは……随分思い切りましたね。でも、確かに虎系モンスターは冒険者や探索者しか行けない場所にいますからね。クエストを発注したらだいぶ依頼料がかさんでしまいます」
「うん、それで私は高い運動能力と魔法力があったし、自然の中で身体を動かすのも好きだったから探索者の道を選んだんだ。けど、この選択は大成功だったね!」
「ん?なんでですか?」
「それは……」
「それは?」
ガバッ!
次の瞬間、ルトラはがばっと抱きついてきました。の人は抱きつき魔です!心臓の健康に悪影響をもたらします!
「アジサイみたいな可愛い子と友達になれたからだよ〜♡」
「ともだち⁉︎」
「うん、私たち、もう友達でしょ?」
「私に……友達……」
自然と瞳から雫が溢れてきます。嬉しくて泣くのは初めてのことです。
「ううっ……ひっく……」
「泣いていいんだよー。でも、笑顔も見せてね」
ルトラが、暖かい言葉をかけてくれます。
「ひっく…ひっく…はい。ありがとうございます」
「うん。やっぱりあなたには笑顔が似合うね」
ひとしきり泣いて、笑って、語り合ってルトラと解散しました。ルトラはとても気さくで明るく、私を怖がらせないよう気遣ってくれました。私の事情は話せていませんが、ルトラはギルドからおおよその事情を聞いていたのでしょう。
まだ話したりないことばかりでしたが、明日に備えなければいけません。ルトラに見送られ部屋に帰りました。
お読みいただきありがとうございました。本日は前にもう1話あります。
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