第4話 受付嬢はクール美人
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前回までのあらすじ
貴族の愛人の子である主人公、胎児なのに母ごと家から追放される。
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母が亡くなって孤児院に行ったら迫害されたので、樹海に逃走。
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樹海でめっちゃ成長する。
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探索者になりにギルドへ行くもコミュ障晒す。みんな優しかった。審査はいい評価をもらえた。これからは父親への報復として探索者活動をがんばろうかな。
探索者になったばかりですが、メイアさんから依頼の受け方について簡単な説明を受けました。
「探索者の受ける依頼は、大半が指名依頼です。ギルドから他の探索者との協力を要請する場合もあります」
メイアさんは優雅に靡く長髪を耳にかけ、話を続けます。その動作があまりにも様になっていて、同い年とは思えない大人っぽさです。
「理由としてはまず、探索者の数が少ないことが挙げられるでしょう。ただでさえ数少ない探索者に依頼を選り好みされると、我々も困ったことになってしまいます」
「……そんなに少ないんですね」
ちょっと驚きだったので思わず口から言葉が出ました。説明の腰を折ってしまい恐縮すると、メイアさんはニコリと微笑み説明を再開してくれました。
「次に、危険が伴う依頼が多いのにもかかわらず、探索者たちはあまり強くないという点です。実力に見合わない依頼で死んでしまわれると大変なことになります」
メイアさんは補足として冒険者からの依頼の多さを付け加えました。探索者がいないと進められないシチュエーションで誰も手を挙げなければ、冒険者が元々受けていた依頼も達成されないとのこと。確かに考えてみればそうなります。きっと、ギルドとしてもそんな状況は避けたいでしょう。
最後に、探索者の依頼は研究機関等からのものもあるということを教えてくれました。
「それらは専門的な知識を持った者にしかこなせないので、ギルド側から指名する必要があるんですよ。依頼についてはこんなところですね。他に何か聞いておきたいことはありますか?」
気になることがあったので聞いておくことにしました。これは今じゃなくてもいいかもしれせんが、メイアさんから優しい印象を受けるのでここで聞いておきたいです。怖い人に質問したくないですからね。
「ご説明を聞く限り、探索者にはあまり自由がないように思えるのですが」
「確かに、例えば冒険者と比べた場合それは事実です」
メイアさんはクールな表情を崩さないまま話を続けます。
「しかし、実はそれほど拘束がきついわけではありません。自由が制限される分の見返りもあります。そのため、依頼の質や量は保証されるし、能力向上のための支援も手厚いです」
「そうなんですね」
彼女から椅子に座ることを勧められました。どうにも話が長くなるようです。お互いが椅子に腰掛けると説明が再開します。
「はい、また、依頼を受ける方法は探索者によって異なります」
長話で緊張し始めた私への配慮でしょうか、彼女は微笑みを向けてくれました。美人の笑顔は破壊力が高いです……!
「例えば、ギルドがその人に提示する複数の中から選ぶ形もあれば、探索者本人が依頼人と直接交渉して決める形など様々です。最初は合同になる可能性が高いのも、このあたりが関係しているんです」
「そうなんですね、ありがとうございます。でも、やっぱり合同クエストは不安です。人見知りというか、人付き合いが苦手なので……」
不安が口をつきます。しかし、メイアさんは私に安心するようにいいました。
「大丈夫ですよ、アジサイさん。心配しないでください。明日、アジサイさんと組む人はさっぱりした性格の優しい人ですから。あなたの性格と事情もそれとなく伝えてあります」
私がコミュニケーションに不安を抱えていることは、もちろんギルド側も把握しています。それで、もう1人の新人との相性は考慮してくれていたみたいです。先程私が審査の結果を待っている間に、彼女へ連絡が行っていたとのこと。
というのも、面接で醜態を晒したこともそうですが、そのときにびくびく怯えまくってた理由を聞かれたのです。そこで孤児院時代のことをぼそぼそ伝えたところ、なんとも言えない苦い表情をされていました。
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「あなたはなぜそんなに怯えていらっしゃるのですか?もし差し支えなければご事情をお聞かせ願えませんか?」
「じっ、実は孤児院でいじめられていたんです。しかも、この5年ばかしほどは樹海で一人暮らしだったのでますます緊張してしまって……」
「なるほどそういった事がおありだったのですね」
「はい……」
孤児院が潰れたこと、関係者の多くが逮捕されていたこともその時に知りました。
「アジサイさん。落ち着いて聞いてほしいのですが、あなたがいた孤児院は2年前に潰れているのです」
私は少し驚きましたが、どちらかと言うとあのような状態なら当然のことだろうと納得できました。
「そうですか……」
面接官の方はさらにこう続けました。
「当時の関係者はほとんど逮捕されています。孤児たちについてですが、年長の者はギルドの更生施設に入りました。幼すぎて悪事にほとんど関わっていなかった者たちは、新しい孤児院に転院しています」
正直、当然のことだと思います。これで心置きなく街を歩けるでしょう。探索者として大成し、見返してやりしょう。
それと、新しい孤児院がどんなものか気になったので聞いてみたくなりました。大きく深呼吸をして、身体をリラックスさせてから質問しました。
「新しい孤児院は、どなたが運営していらっしゃるのですか?」
この質問に面接官は少し悩むような素振りを見せましたが、おもむろに話し始めました。
「現在は、ギルドとアシュリークーパー公爵夫人の共同運営体制になっています」
言葉にできない衝撃でした。自然と足が震え始めます。アシュリークーパー伯爵夫人というのはつまり、私の義母です。ギルドは孤児院を潰した際に私の事情も把握していると思われますから、伝えづらかったのでしょう。
しかし、意外に思われるかもしれませんが公爵夫人から直接何かをされたことはないのです。印象的な冷たい目で見られたことは何度かありますが、そもそも彼女は誰に対しても冷ややかな態度を取る方なんです。
義母の部下を自称する人たちはいかにもなチンピラで、公爵夫人の下で働いているようにはとても見えませんでした。義母は一体全体何を考えているのでしょうか?女傑と名高い方ですから何か深い意味があるのでしょうが。
混乱から抜け出せないまま、面接は終了しました。
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メイアさんに別れ際、手続き等の関係でまた明日来てほしいと言われました。まだ手続きあるんだ……。
おそらくそこでもう1人の新人と、合同で初クエストを受けてもらうことになるとも。どんな人が来るのか不安です……。同じくらいの年齢の人と接すると、まだまだ恐怖心が先立ってしまいます。5年も経っているからもう大丈夫かと思っていましたが、そんなことはありませんでした。
宿を取って明日に備えようかと考えていましたが、メイアさんに探索者用の女子寮をお勧めされました。
無料で借りられるそうです。きっと、これも探索者への支援のひとつなのでしょう。ありがたく使わせていただくとします。
寮生活となると孤児院でのことが脳裏に蘇ってきて、気分が悪くなってしまいます。しかし、財布の中身がすかすかになっている以上、ただで使える優良物件を逃す余裕はありません。
ビビりながらも寮へ向かって歩みを進めていく私でした。
次回はヒロイン登場です!
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