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第20話

 ビッグサイの依頼から1週間。レポートを提出し終えた私たちは各々自分の研究を進めたり、魔法の練習をしたりして過ごしていました。


 初の依頼が大きなトラブルに見舞われたことで、ギルドからはしっかりと休息を取るように言われています。これは大変ありがたい!


 とはいえ、私もルトラも初依頼で問題点が見つかったばかりでした。じっとしていられるはずもなく、適度に休息をとりながら修行をしていたのです。


 私はアシュリーダイブの改良を考えていました。なぜならこの技は目立ちすぎるからです。戦わない私にとって、黄金に光るのは基本邪魔なだけなのでね……。


 ルトラは最終局面であまり役に立たなかったのが悔しかったらしく、防御魔法の特訓に勤しんでいました。機動力を伸ばしている私との相性を考えてくれたそうです。嬉しい……。


 そんなふうに過ごしていると、ギルドから呼び出しがありました。


「おはようございます、メイアさん」

「メイアおはよー」

「お2人ともおはようございます。本日は新たな使命依頼が入っております」


 よかった、今日のメイアさんは本来のクールなメイアさんです。この前は大変でしたからね……。でもあれのおかげで彼女と以前よりも打ち解けられた気がします。


「どんな依頼なんでしょうか?」

「モンスターパークの研究者から、チドリを観察する依頼が入っています」


 メイアさんはおもむろに依頼書をルトラに渡すと、私たちの顔を見て笑みを浮かべます。


「実は、ギルドからお2人にプレゼントがあるんです!」

「「プレゼント?」」


 一つ頷くと、彼女はカウンターの下からそのプレゼントを取り出しました。


「大変貴重な記録用の魔法具、照魔鏡です!」


 それは片手から僅かにはみ出す長さの筒でした。その片側には魔力を帯びた鏡が嵌められており、反対側は片目で覗き込める構造です。


「なんで、照魔鏡?っていう名前なの?」

「魔法によって、本来ならもう2度と見られない光景を写し出す鏡だからです」

「これを使って見た光景は、また見られるというわけですか?」


 そうだとしたら革命的です。世界の歴史の転換点になるほどの魔法具になります!


「はい。しかも使用者のみならず、他の人も見ることができるんです!」

「それはすごいね!どうやってやるの?」

「照魔鏡から壁とかに見た光景を映し出せるですよ」


 私が考えていた以上に素晴らしいもののようです。思わず興奮して身を乗り出してしまいます。


「これは、とんでもない発明ですよ!世界に広まれば、歴史が変わります!」

「あーそのことなんですが……」


 私が想いを口にした途端、メイアさんがトーンダウンしてしまいました。何か欠点でもあるのでしょうか?


「重大な欠陥がありまして……この魔道具は魔法的、魔力的に適した眼を持ってない人が使うと、大変なことになるんですよ」

「大変なことですか?」


 照魔鏡が爆発するとかですかね?


「使用者が失明したり、発狂したりするんですよね。最悪の場合、死に至ります」


 ええっ⁉︎死ぬんですか!私たちは何かの理由で、実験台に選ばれたのかもしれません……。


「ちょっと、アジサイを殺す気なのかな⁉︎それなら私にも考えがあるよ!」


 メイアは虎の尾を踏んでしまったみたいです。ルトラが両手をバン!と叩きつけながら彼女に詰め寄ります。メイアは涙目になってまたクール美人が行方不明になってしまいました。


「ひいっ!落ち着いてください!お2人は大丈夫なんです!」

「私たちは大丈夫なんですか?」

「はい、そうなんです。……だからルトラさん、落ち着いてくださいぃ」

「……わかった」


 激怒していた虎が冷静になったのを見て、メイアさんは説明を再開しました。ちらちらルトラの顔色を伺う姿がなんとも言えない情けなさを醸し出しています。


 初めて会ったあの日、とても立派に見えたあの少女はどこに行ってしまったのでしょう?


「お2人の眼は魔法的にも魔力的にも照魔鏡に使われている、魔鏡を見ても問題のないものです。そればかりか、普段は隠されているこれの本来持つ力を引き出せるほどです」


 そう言われると納得できる部分もあります。ルトラの眼はこの世で最も尊いものですし、私も自分の眼には自信があります。白虎のように悠然とした少女がくれたものです。

 

 え?さっきのあれ?どんな虎だっていきなり尻尾を踏まれたら怒りますよ。


「でも、どうしてそんなことがわかったんですか?わたしたちの眼のことは誰にも話してないですよ?検査とかもありませんでしたし」

「ああ、それはモンスタートーカーの方がミニサイとビッグサイから聞いたんです。特別な眼をしている人間だって。しかもビッグサイは魔鏡を支配できる眼を持っているとまで言っていたそうですよ」


 ビッグサイにそこまで言っていただけるのは光栄ですね。ところで、今私の隣から猛虎が野に放たれました。


「ビッグサイが言っていただけなんだね……?実験とか検査とかはしてないんだね……?」

「ああっ!しまった!どうかお許しを!」


 あまりにもあんまりな姿に、ちょっとかわいそうになってきたので助けてあげることにしました。


「まあまあ、それぐらいにしてあげてください。実験はこれからやりましょう?」


 そう説得すると、ルトラも納得してくれました。


 その後、弱目の魔鏡からだんだん強いものに替えて実験を行いましたが、問題は発生しませんでした。照魔鏡も無事に使えたので一安心です。


 それと、もう一つ嬉しいことがありました。Cランクへと昇格できたのです!初依頼でコミュニケーション能力の向上が見られたというのが主な理由でした。元々、そこさえ良ければCランクスタートだったという話でしたしね。もちろん、依頼達成も理由の一つですが。


 さらに、ルトラもCランクになりました!というかDランクだったんですね。今回の依頼での功績と能力の高さが認められた形にです。


 また、例の照魔鏡はビッグサイを鎮めた功績に対するギルドからの褒賞だったようです。結果的にとはいえ、いきなり適正ランクを超えた依頼に送り出してしまったことに対するお詫びでもあります。


 さて、明日からはまたルトラと2人で探索です!

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