第2話 はじめましてギルド本部
まだ探索しません。ヒロイン?は5話から出る予定です。
私は11歳のときに孤児院から抜け出して、樹海で1人暮らしをしています。その年齢の子どもがひとりで樹海暮らしなど本当に大丈夫なのかと思われる方も多いと思います。結論から言えば大丈夫でした。私が生きて今ここにいることがなによりの証拠です。
しかし、危険なことも大変なこともたくさんありました。最初は食料不足や寝床の確保に苦労しました。危険なモンスターに襲われたり毒のある植物を食べてのたうち回ったりしたことも覚えています。生活魔法で水が確保できていなければ早々に死んでいたことでしょう。
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探索者とはいったいなんなのか、と思われている方も多いと思います。ここらで解説しておきましょう。
森林の植生や海の生態系を調査に加え、火山や雪山といった極限の地を踏破して冒険者のサポートをするのが探索者の主な仕事です。
冒険者ももちろんいますし、花形で高ランクになれば収入も大商人や貴族並みです。それ相応の才能や努力、運が必要になってきますが。
私は冒険者としての才能には乏しかった一方、探索者としては恵まれたものがありました。それでそちらを目指しました。他にも理由はありましたが……。とにかく、私は探索者として大事なものを持っていたのです!
私の身体はパワーこそ不足気味です。しかし、速さと跳躍力を兼ね備えこぼれるほどの魔素に満ちていました。ところが、残念ながら私は魔素を魔力に変換できても、それを魔法として行使するという点で重大な欠陥を抱えていました。特に攻撃的な魔法は戦闘において致命的なまでに使えず、生活や探索に便利な魔法しか使えません。
どうにも体内の魔力器官が常人とはよくも悪くも違うらしいです。この異常は、私の生い立ちが関係しているのかもしれません。幼少期の極貧生活による栄養失調。それが魔力器官の成長に異常をもたらしたのではないかと魔法医には言われました。多分、孤児院での生活も影響していると思います。
そんな私ですけれども、16歳から探索者として働くことを決意しました。
理由は探索者になれるのが16歳からだからです。それに、サバイバル生活は5年もやれば十分だろうと思ったからです。とりあえず故郷の街に戻ってそこで探索者生活を始めようと思います。不安なこともいっぱいありますが楽しんでいきたい所存です。
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5年間暮らしてきた樹海に別れを告げます。いくつか拠点としているところはありましたが、定住している住処はなかったので引き払うのは簡単です。人を襲うモンスターに存在が気づかれないようにするには、その方が色々と好都合でした。
樹海は故郷の街から歩いて3時間ほどのところにあります。そこそこ街から近く危険なモンスターが跳梁跋扈してはいますが、基本的にモンスターが自分の生存圏から出てくることはありません。また、冒険者たちもモンスターたちがそこにとどまる限りは基本的に彼らを討伐しないのです。
冒険者の討伐対象になるのは何らかの理由によりそこから出てきてしまった個体。ほうっておけば生態系を崩壊させてしまうようなモンスター。それから犯罪者や魔族に使役され人に害を及ぼす場合です。逆に言えばそうでないモンスターは討伐する必要がありませんし、してもいけません。
非戦闘職の探索者が成り立つ理由はここら辺にあります。必ずしも討伐を要請される依頼ばかりではなく、戦闘能力を問われない依頼も多いからです。
それよりも深く広い知識や自然を観察する能力、場合によっては何週間も未開の地で行動することが求められます。もちろんそれらを兼ね備えた冒険者もいますが。要は適材適所ということです。限られた人材を有効活用することが大事なのです!
そうこうして歩いているうちに故郷の街に着いきました。ここら辺では最も大きな街、アーダーンです。5年ぶりともなるとさすがに懐かしさを感じます。いい思い出も嫌な思い出もどちらもたくさん詰まった場所です。割と嫌な思い出ばかりですが。とりあえずギルドで探索者登録を済ませてしまいましょう。
ギルドへ向かう道すがら少し街を見物します。大きな変化はあまりないようです。これなら多分孤児院の場所も変わっていないと思うので近寄らないようにしましょう。私のことを覚えている人がいるかどうかはわかりませんけれども。
アーダーンは大きく3つに分けられます。
この街を治める貴族の城を中心とした城下町、ギルド本部のあるギルド街、モンスターパークを中心に広がるパークエリアです。
もちろん私が訪れるのはギルド街でここは全体の6割を占めています。残りの4割は城下町とパークエリアで半々です。
ちなみに孤児院があるのは貴族街で、治めている貴族というのは私の父です。実権を握っているのは義母になりますが。義母はかなり苛烈な女性で、私も汚物を見るような目で見られた記憶があります。まあ彼女の心情を考えれば仕方ないことでしょう。私にとっては恐怖の象徴です。
結局のところ、父が母を家から追い出したのは義母の怒りをなんとか鎮めたかったというのが大きいと思います。孤児院でも義母の手先を自称する人々に散々いたぶられました……。
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「げほっごほっおえぇ!」
「あなたのように呪われた子どもはこうやって浄化するしかないのですよ〜。ほらっ!」
「やめっ!苦しい!げぼごぼぼがぼぼっ!」
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探索者として活動するにはいい環境の街ですが、義母や父のことを考えると本当は寄り付きたくありませんでした。しかし、そのデメリットを補うほどのメリットがあります。ギルド本部の存在です。
というわけでギルド街を見ていきましょう。ギルド街にはギルド本部の他にも様々な建物が軒を連ねています。冒険者や探索者、ギルド職員の家とそれらを顧客としたお店は特に多いですね。
それから、最小4名からなる冒険者の「パーティ」が拠点とするホームや彼らの共有スペース。
また、4つ以上のパーティが構成する「レギオン」はここに多種多様な本拠地を構えています。
さらに、パーティやレギオンの垣根を越えて集まる「サークル」も大抵活動はギルド街で行っています。
ぷらぷら見学しながら歩いているうちに、ギルド本部にたどり着いたようです。ちなみに本部というのはこの街の、ではなく世界全体のギルドの本部ということになります。建物はそれ相応に巨大です。
ひっくり返った巨大な四角錐を地面に植えて、その真ん中から細長い円錐を伸ばしたような形をしています。かなりヘンテコな見た目です……。周辺には様々な施設が付随しています。今回は特に用がないと思いますが、時間ができたら見物しておきたいところです。
……人が少ないときに。
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ギルドはビッグ○イトの逆三角に東○スカイ○りーをぶっ刺した感じです。