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第10話 See The Stars

ブクマ、評価励みになっています!


本日は2話投稿しています。こちらは2話目です。

ご注意ください。

 3日目ともなるとルトラともだいぶ馴染めてきた感じがします。


 彼女は可愛いものもかっこいいものも両方好きだと熱弁を振るっていました。可愛さとかっこよさを兼ね備えた虎は最高なんだとか。そのうち虎と結婚してそう。


 可愛いもの好きは私もです。かっこいいという感覚ふわふわしていてあんまり分かりませんが、そのうち分かるときが来るのでしょうか。えっ?となりの女性を見ればわかるですって?


 それはそれとして、探索者としてのはっきりとした目標を持つ必要があると感じました。ルトラとの交流が私にそれをいっそう強く意識させたのです。


 ルトラにはシュトゥルムティーガーの存在を証明するという一大目標があります。そのために彼女は色々な虎系モンスターを研究していて、スネコスリの家畜化も課題にしています。それだけではなく、嵐の分析をしたり実際に虎系モンスターの追跡調査を行ったりしたこともあるそうです。この人本当に新人か……?


 それに対して私は、これといった目標もなく漠然と極地に行きたい、希少モンスターを研究したいと考えているだけです。これではそこら辺の一般探索者と何も変わりません。私には有名探索者になって父を見返すという目標がありますからね。もっと向上心を持たないとダメですね。


 そういうわけで、私の探索者として最初の目標は夢を見つけることになりました。多くの依頼をこなすうちに見えてくるものもあるのではないでしょうか。張り切っていきたいところです。



☆☆☆☆☆



 さて、気を取り直して探索を続けます。昨日見つけたビッグサイの痕跡をたどっていっていますが、特に不審な点は見つけられません。多少興奮しているモンスターや怯えているモンスターもいますが許容範囲内です。


「ブランビーの群れが少し浮き足だっていますね」

「そうだね。けど、あれくらいなら問題ないよ」


 しかし、改めて大きな足跡です。これほど大きな生物がどうやって飲水を確保しているか気になります。


 資料では魔素をなんらかの方法で水に変えている可能性が高いと書かれていました。魔法で生み出しているか、魔力器官で変換しているのではないかということでした。大きな湖を使っている可能性や、海の水から塩を魔法で取り除いている可能性もあると考えられているそうです。


 また、スライムの存在にも言及されていました。ほとんどの種類のスライムは子供でも倒せるほどに弱いので軽視されがちです。しかし、生態系の維持という観点ではこれほど重要なモンスターもいません。


 彼らの身体は水と魔素で構成されています。魔力器官を持つ生物にとって魔素は食料の代わりになります。魔素を体内に取り込んで魔力に変換することでエネルギーにすることができるのです。人間にも可能です。スライムは水と食料がはいずり回っているようなものですね。


 かく言う私も樹海生活時代はお世話になっていました。変種のミートスライムからは動物性タンパク質も摂取できます。


 それだけでなく彼らは環境の維持にも役立っています。魔力器官を使ってなるべく元の姿に生息地を変えようとする習性があるのです。1匹だけでは僅かな影響しかありませんが、とにかく数が多いので塵も積もれば山となるわけです。


 他にも様々な役割と能力を持っているので、スライムを専門に研究している人も珍しくありません。私たち探索者にとっても注意して観察しなければならない存在です。スライムはその土地の状況を表す鏡のようなものですから。


 モンスターにもそれがわかっているのか必要以上に食べることはありません。ギルドでもスライムの乱獲はご法度になっています。破った場合は重い処分が下され、抵抗すれば討伐依頼の対象となるほどです。


 人間、モンスターに関わらずスライムを乱獲すると「悪魔の鉄槌」「破滅の龍」「空飛ぶ象」などに制裁されるという伝説は各地に残っています。スライム以外のモンスターでも同様の言い伝えがあるそうです。これらを総称して「裁きの獣」と言います。



☆☆☆☆☆



 気を取り直して探索を続けると、少し奇妙な点に気づきました。奥に行くにつれスライムは徐々に数を増やしているのに対し、ブランビーの群れは落ち着かない様子で草原の奥から遠ざかっているのです。

 

 これだけで異常が発生していると断定はできないのですが、その兆候の可能性はあります。


「魔力の消費が心配だけど、ここからは隠密魔法を使おう。何か嫌な予感がする」

「それなら私に任せてください。魔力量には自信があります」


 私はルトラにも隠密の魔法をかけます。ここまでどちらかといえばルトラに負担がかかっていますからね。


 しばらく追跡していると、ビッグサイの足跡に変化が見られました。少し早足になっているのです。


「地面がかなり抉れてますね……」

「キックバックもものすごいことになってるよ……」

「少し急いだだけでこうなってしまうとは、ビッグサイ恐るべし」


 改めてビッグサイの凄さを思い知ったところで今日の探索は終了になりました。日没が来てしまいましたし、体力的にも深追いは危険です。ビッグサイの行動の割に、草原のモンスターがそこまで怯えていないのも理由です。


 先程見つけたブルーラピッドも全く慌てていませんでした。とても危険に敏感なモンスターであるブルーラピッドがそうである以上、差し迫った問題はないと判断します。



☆☆☆☆☆



 一日中続いた追跡でお腹が空いてしまったので、夕食はミートスライムとギルド特製の行動食を食べました。もきゅもきゅ食べながらルトラはシュトゥルムティーガーについて持論を述べました。


「絶対、裁きの獣なんだと思うんだよね。現存する伝承が妙に少ないのも、言い伝えで国が滅んでいるのもそれで説明がつくと思うんだ」

「確かに、その線はあると思います。わかっているだけでもシュトゥルムティーガーはまさに虎に翼です。虎系モンスターの守護神としてこれほど相応しい存在はいないでしょう。しかし、虎系モンスターを乱獲できるような存在がいるのでしょうか?それとも、スライム関連なのでしょうか?」

「やっぱり、そこが難しいんだよねー。まさか虎やスライムを乱獲するわけにもいかないし。もし本当にシュトゥルムティーガーが暴れて国を滅ぼしていたら、その国の残骸があるはずだし」


 話し込んでいるとき、ふと空を見上げると満天の空に星々が瞬いていました。今晩はスライムのパーティーこそ見られないようですが、光の粒が散らばった凄絶なまでの夜空の下で過ごせそうです。


『See the stars 』


 星を見上げなさいというどこかに伝わる言葉です。子どもの頃、樹海にいた頃の私は辛い時や苦しい時、いつもこの言葉を思い出しては星空を見上げていました。でも、今は楽しい時なのに自然と心に浮かんできて宇宙を見上げたのです。


 私たちは星々に見守られながら、裁きの獣について語り合い3日目の夜を過ごしました。


 

お読みいただきありがとうございます。


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