第4話
ダブル台風の台風一過、というには被害が大きいです。
被災されている方には、お見舞い申し上げます。
第20階層まで増やすことができた。
ダンジョンコアがいうには、天災級が来ても心配ないだけのDPを稼ぐことができたとのこと。
なので、新しい5階層のうち4階層を第5階層海岸エリアの次に差し込むこととした。
階層としては4階層だが、それぞれを3回抜けないと次にいけないようにした。
実際には12階層分増えたようなものだ。
それから、農場だけの階層を都市エリアの前に増やした。
農場では外来の生命体のうち、食用になるものでおとなしめなものを集めて繁殖させている。
ほかに穀類や野菜などといったものも作付けしている。
農場でできるもののほとんどは、ポポルに使われるが繁殖している生命体にも使っている。
農場の運営には、ガチャで新たに引いたグローブやドライアドといった実体のある精霊系に一任している。
彼ら?にとっても戦闘に使われるよりは、作物の育成のほうが性に合っているとのことだった。
もっとも、進化しにくくなるけどね。
「そろそろ、人間の冒険者を呼び込んで、さらに発展させてもいいと思います」
ダンジョンコアがそんなことを言ってきた。
「そうかな」
「5階層ごとに攻略されれば、5階層ずつ増やしていけばいいことです。時間もかかりますし、すぐに困ることはありませんよ」
「んー、わかった。あ、でも、せめてもう5階層深くしてからにしないか」
「わかりました。これから5階層増やすだけのDPが増えたら、いよいよ開放本番ですね」
「開放本番?」
「いままでのは、予行演習ですよ、あくまでも。人間の冒険者を入れてこそのダンジョンですから」
「なんか、今までになくワクワクしているな」
「ダンジョンコアとしては、攻略困難なダンジョンになるのがいちばんの名誉ですから」
「それって、どうしてわかるんだ」
「ええと、なんとなくわかります。いま生き残っている268のダンジョンの中で、ここより後に生まれたコアをのぞくと、213位です」
「それってあまり強くないってことか?」
「んー、どうでしょう先に生まれたコアのうち40くらいは抜いていますから、それをどう見るか、ですね」
「成長率としては高いほう、ということか」
「それは言えると思います」
「わかった。まあ、とりあえず5階層増やしていこう。今度は、海エリアの前に差し込んで、モンスターハウスマシマシにしておけばいいだろうね」
前に第13階層にあった都市エリアは第18階層になっている。
そこに居を構えてしばらくたつ。
立ち並ぶ家々には、人型になるユニットのうち、あまり戦闘向きではないものを住まわしている。
それらのユニットには、ダンジョンのメンテナンス要員として働いてもらっている。
メンテナンスといっても、外来の生命体や作物類の面倒を見てもらうわけだが。
それから、ポポルがずいぶんと大人びてきた。
猫耳な生命体なためか、成長が早いらしいと、コアからきいた。
父ちゃんからあんた呼ばわりになっていないのがいまのところ救いだと思っている、いや本当に。
「お父さん、おはよう」
「おはよう。さて、朝ごはんにしようか」
「ええとね、今日の朝ごはん、私が作ったの。だから、おいしく食べて」
「え?」
「なぁに、ちゃんと作れたよ」
「…味見、したのかな?」
「……した、と思うかな…」
目がドーバー海峡を渡るくらいに泳いでる。
…どーばーかいきょう?
食卓に出されてきたものを見ると、スープに見えるものとパーネのような塊に、サラダとおぼしき葉っぱの塊と何かわからない黒い平たい塊だった。
それが1人前。
「ポポルのは?」
「お父さんの分を作るのでいっぱいいっぱいだった」
「……そ、そうか」
しばし、見つめあっていると。
「……食べてくれないの?」
「食べる、ものなのか?」
「食べてほしいなって思って、作ったの」
ポポルが少し涙目になる感じでこたえる。
いや、泣きそうなのはこちらなんだがな。
「……食べなきゃいけないのか」
「ぜひぜひ食べて!」
期待に満ちたような顔をされると、食べざるを得ないのだろう。
そうして、割とマシのように思えたスープのようなものから手をつけた。
「……味がしない」
「えええっ」
「……これはパーネというよりは焼き菓子のように固いな。お菓子としてはちょっと味がしないけど」
「ぎりぎり大丈夫だね」
「……これは、ただ葉っぱを皿にのせているだけだし」
「あ、ソース忘れてた」
「いや、こういう固い芯は切り落とさないと、食べにくいぞ」
「…そこは残せばいいのよ」
「……これは元が何かわからないけど、火が通りすぎて炭になってないか」
「…ラーシュのステーキなのっ。生よりはいいでしょ」
少しばかりめまいを感じた。
いまいるユニットに、料理スキルを持ったのなんていただろうか。
いや、とりあえずサキに料理の基礎を教えてもらう…まてよ。
サキも、それほど料理がうまいというわけではなかったかもしれない。
ある意味、家庭料理の域を出ていない。
やはり、料理スキルを持つユニットを探さなくては。
「ポポル」
「なあに、お父さん」
「料理を教えてくれるものを連れてくるまで、誰かに食べさせるの、禁止な」
「な、なんで!」
「自分で作ったものを自分が食べるのはいいよ」
「サキとベルゼ先生には食べてもらっていたよ」
「え?全部、か?」
「だいたい全部」
「サキ!ベルゼブブ!!」
操作盤で探すと近くで瀕死状態になっていた。
跳ぶとそこは厨房だった。
「サキ!ベルゼブブ!大丈夫か!生きているか!」
今日も平和…かな。