プロローグ5
たぶんこれで…………
赤く染まったシマを黒く侵食していく。
操作盤に点る赤い点が溶けるように消えていく様は、夏の暑い日にアスファルトの上に落とした氷が解けていくようだった。
モニターに目を移すと、なんの障害もなく突き進むユニットたちの姿を現していた。
本気の戦闘というものを見た気がする。
特にユリウスの戦闘は、戦闘という言葉では言い表せなかった。
ゴブリンたちが、静かに倒れていくのだ。
そして、モニターに映したゴブリンたちの集団のほとんどが、緑色の液体にまみれていた。
「終わったか?」
「はい、ほぼほぼ3割程度かと」
「そうか、ほぼほぼか。ところで、ハイゴブリンは、どうなった」
<わが主よ。お望みのままに、倒しております>
「そうか、ご苦労。第3階層に戻すので、ゆっくり休んでくれ」
ユリウスからの報告を聞いて、第3階層に配置していたユニットをドロップ、元の配置に戻す。
モニターに目を移すと、黄昏た状態で床に座り込む、ゴブリンたちの姿があった。
これくらいがいいのだろう、増えすぎず、減りすぎず、生かさず、殺さず。
ん?どこかで聞いたことがある言葉だな。
「ところで、いくつかカードが赤く点滅しているの、なんだ?」
「一定の経験を積んだカードですね」
「一定の?天井ってことか?」
「どうでしょう。…確かに成長限界というものがあるとの記録は残っています」
「よし、確かめてみようか」
赤く点滅しているコボルドのカードの一枚に触れてみる。
転職可能な職業と進化可能な種族が表示された。
「どうやら、転職も進化も可能になっているな」
そうして、コボルドたちを進化と転職させた。
アイスオルトロス直属部隊を、進化したウェアウルフを筆頭にグループ編成を変更した。
ほかのユニットは、コボルドファイターとコボルドソルジャーにそれぞれ転職させた。
結果は次のようになった。
■アイスオルトロス(エルス アルス) B
■ウェアウルフ D
■コボルドソルジャー E
■コボルド F
■コボルド F
■コボルドコマンド D
■コボルドソルジャー E
■コボルドソルジャー E
■コボルドソルジャー E
■コボルドファイター E
■コボルドファイター E
■コボルドファイター E
■コボルド F
■コボルド F
■コボルドコマンド D
■コボルドソルジャー E
■コボルドソルジャー E
■コボルドソルジャー E
■コボルドファイター E
■コボルドファイター E
■コボルドファイター E
■コボルド F
■コボルド F
全体の強度は、高くなったとおもうけど、どうかな。
次の間引きまで、どうするんだっけ?
「第4階層を設置しましょうか」
「ああ、そうだった。それでクロコダイルたちを配置するんだったな」
操作盤を出して、第4階層の設置作業に入る。
迷路、草原、ジャングル、迷路の順になるのか…。
「草原と密林の間に迷宮をはさみたいな」
「またですか?」
「そうだよ。全部が全部、ダンジョンにいるとは思わせない。そのための階層構成にしたい」
「そうですね・・・。では、外来のゴブリンを、その間にはさむ迷路階層に住まわせるというのは、どうでしょうか」
「第1階層ではなく?」
「DP獲得のために、もっと強力に管理することにします」
「それは、ゴブリン牧場にしようってことか」
「そんな感じでしょうか」
「管理させるのは、誰にする?」
「サキュバス族が遊んでますから、そこで働かせましょう」
「え?大丈夫か?かえってゴブリンが暴走しないか?」
「サキュバス族がもつ能力がありますから、……大丈夫です」
なんとなく、なにかの気持ちが入っているように思うけど、気のせいだろうか?
第1階層の中を、生き残っているゴブリンたちのそばに大きなスペースを作る。
草原化して、適度な穴倉をいくつか作っておく。
そのあたりに住まわせるとして、サキュバス族が居つくためのスペースも作りこむ。
魔族とはいえ、いちおうね、女性だし、ダンジョンコアがなにかものいいたげにしていたけど、それぞれに個室を作ってあげた。
第2階層と第3階層は特に変更はしなかった。
第4階層は迷宮、第5階層を密林にした。
とりたてて、罠以外の工夫はしていない。
そして、順番を入れ替える。
4、2、1、5、3の順に入れ替えて、階段の通過条件を変更した。
新しい迷宮は罠以外はありきたりとしたけど、モンスターハウスを多めに設置した。
モンスターハウスは割とDPお高めだが、手持ちのユニットカードにならないのはもったいないのだが、ランダムでユニット化したモンスターなどを召喚できるものだった。
そして、第1階層である程度増えてしまえば、外に向かってあふれ出すという、氾濫やスタンビートといわれる現象を起こしてくれる。
そのことによって、人間の冒険者がやってくる可能性につながるということだった。
まだまだ、そこまでいかないということだったけどね。
それから、2度ほどゴブリンが居つき、ウェアラットという鼠人間みたいのが居つこうとしたが、病気持ちということで即座に殲滅した。
あとから居ついたゴブリンたちがモンスターハウスを開けまくったことで、氾濫が起きてしまい、ダンジョンの外で野生のモンスターを見ない日が続いた。
そうこうしているうちにも、ゴブリン牧場は盛況に活動していた。
サキュバス族が種族スキルを駆使してゴブリンたちをそれこそおとなしく飼育していた。
そして、ある程度育つと他の階層に送り込んでDPに変えていく作業を繰り返した。
このとき、ゴブリンの生殖というものを見る機会があったのだが………なんて奴らだ。
いくら魔物とはいえ、そんなことで繁殖できるというのが、この世の不思議だ。
そして、ダンジョンは10階層を重ねるまでに至った。
「これで、いっぱしのダンジョンになったかな?」
「そうですね、ユニットも揃ってきましたし、B級冒険者では攻略できない硬さを持っていいるのではないでしょうか」
「それでも、A級だと難しいのか?」
「相性によっては、A級でも最終層までたどり着けないと思います」
「なるほどね」
人間の冒険者というものが来るまでは、このままため込んでおくことに越したことはない。
そのときは一気に深層化することになるだろう。
十階層ごとに拡張などに使われるDPが多くなるのだ。
それで、いくらあっても足りないくらいにならないように、いまのうちにため込めるだけためこむというのが、当面の方針になっている。
そのため、新しくできた階層にはユニットの配置はほとんどない。
ガチャをひいて、海棲ユニットが手に入ったことで、海の階層を設けて配置したくらいか。
そうそう、引いたといえば初のAクラスを引くことができた。
ただ海棲ユニットだったので、活躍は限定的かとおもったが、階段と階段の間に海を置く構成にしたことで、渡ろうとするところを襲うことでほぼ殲滅できるだろう。
新第1階層から新第4階層まで迷宮であるが、モンスターハウス多めでユニット配置はない贅沢仕様。
新第5階層は、海になっていてA級ユニットがほぼ殲滅してくれる。
外来の魔物相手では、ほぼ攻略されることはないだろう。
そんなときだった。
外につながる出入り口に、布にくるまれた何かを見つけたのだった。