最強ネクロマンサー、聖剣に選ばれる
「シオン殿これは一体何があったのですか?」
竜王とゴブリンの戦いが始まろうという最中、騒ぎを聞きつけたのか黒騎士さんが屋敷に訪れた。
「何故か竜王のロンロンさんとゴブオさんが戦うことになっちゃったんですよ…」
「なるほど…では私が立会人をしましょう。竜王の決闘ともなればちゃんとした見届け人が必要ですからね」
「わかりました、よろしくお願いします」
そう言って、黒騎士さんが、ゴブオさんと竜王の間に立った。
そして、ゴブリン対竜王の戦いがはじまった。
「どうして…どうして…なんでゴブリンに竜王の私が…負けるのぉ!!」
ゴブリン対竜王、その勝負の結果はまたも一瞬でついた。正面から突進してきたロンロンにゴブオさんがよけて、足払いしたら派手にこけて、倒れてしまった。その後、足をずっと押さえて立ち上がらないロンロン。タンスの角に足の指をぶつけた人みたいになってる。
さすがに、今回ばかりは言い逃れできないレベルのやられっぷりだ。
「シオン…きて…」
「え?どうしたの…?」
「…これをやるから黙っておいてくれ…」
そう言って、ロンロンは口からいかつい見た目の剣をぺっと吐きだした。
「何ですかこれ?」
「これはな…先日、我に戦いを挑み敗れた勇者が持っていた聖剣シャベルンデスだ」
「聖剣シャベルンデス…」
…喋るのかな? それにしても名前のセンスがひどい…。
「この 聖剣はかつては王国の宝と言われていた。意思を持ち、喋る。所有者に選ばれればどんな者でも、世界最強になると言われていた剣。しかし五百年ほど前、意思を失い、喋らなくなった。それ以来世界最強の聖剣がただとても頑丈で切れ味がいいだけになってしまった剣、もしもこの剣が目覚めてさえいればお前なんかに負けなかったのにー…って勇者がやられる前に早口で言ってた」
「はぁ~…すごいものなんですかね」
名前さえださくなければ…いろんな人が欲しがりそうだ。
「そうだ!これはとんでもないレアアイテムだ。これで今回と前回の負けは良い感じにごまかしておいてくれ」
「でも…別に僕は剣士じゃないからなぁ」
「頼む!それで今回の事は良い感じにごまかしておいてくれ…!私だって別にこんな剣いらないし、けっこう胃のアイテム収納量を喰うから…誰かにあげるつもりで持ってきたし」
剣を僕にぐいぐい押しつけながら、ロンロンは涙目でそう頼んでくる。可哀想になってきたので、なんとかしてあげよう。
「わかったよ…なんとかごまかしてみるよ」
「ありがとう…!さすが私の将来のつがいになる男だ!」
それはたぶんなることはないけど。
「あの…シオン様、俺が勝ったのですか?」
ゴブオさんが困惑気味で聞いてきた。
「いや…違うよ。今回もロンロンは調子が悪かったみたい。風邪引いてたんだって」
「ごほっ、ごほっ。頭が痛い…のども焼けるように痛い…」
竜王がちょっとへたくそな演技で後押ししてくれている。
「あぁ!なるほど…それであんなに苦しんでいたんですね…」
ゴブオさんが納得がいったという表情をしたあと、微笑んだ。
「そりゃぁそうですよね…さすがにゴブリンの俺に竜王が負けるわけがない…とはいえ、風邪気味の竜王になら勝てるぐらい強くなってるってことだからやっぱりシオン様はすごいなぁ…俺なんて元々Bランク冒険者程度だったんですが、シオン様のアンデッドになってから凄いですよ!この間も奴隷商人の護衛にSランク冒険者がいたんですが…俺一人で余裕で勝てたのです!」
「ははは…それはすごい」
「うぅ…ゴブリンに負ける竜王……いやでも風邪だって事になってるから…」
ゴブオさんの発言で精神的なダメージを受けたのか、とても悲しそうだ。
「…つらそうだから屋敷のベッドで休むです」
タマが気を利かせて、ロンロンを屋敷につれていってくれた。なんとかごまかせたかなとほっと一息ついていると、黒騎士さんがまじめな顔で僕を見ていた。
「シオン殿…少しいいですか?」
「どうしました黒騎士さん」
「前回から薄々気づいていたのですが、もしかして竜王の調子が悪いのではなく、シオン殿のアンデッド強化が凄すぎるだけなのでは…?竜王戦う前凄い元気に見えましたよ…?」
「そ、そんなことないですよ…」
黒騎士さんが気づきそうになっている。
「いえ、竜王をいなしたあのゴブオ殿の動きは私でもとらえきれないほど素早かった…ずばり、シオン殿のアンデッドになったゴブオ殿は竜王…いやそれこそ私より強いのでは?」
「そんな…!それはさすがにないんじゃないですか…?」
「いえ、竜王はまだ若く未熟とはいえ、魔王軍幹部と同等の実力を持っています。その竜王を圧倒するということは…幹部筆頭の私以上だと思います」
「そんなに…」
正直ゴブオさんにも負けるの見たので、以外と竜王って弱いのかなって思ったけど、そうじゃなかったんだ。たしかに王国では竜人っていったら、最低でもAランク冒険者が数人で戦わないと倒せないっていわれてたもんね。その王様なんだからほんとは強いはずだ。何故かゴブオさんやエイファがその竜王より圧倒的に強いからちょっと感覚が麻痺してたよ。
「それにしても…元々とんでもない実力の持ち主だと思っていましたが…まさかここまでだとは…規格外というほかないですね…本当に仲間になってもらえてよかった…まだ幹部になって間もないのに、次々と大きな成果を上げていますし、今度の幹部会ではシオン殿が主役ですね」
「…あの黒騎士さん、幹部会ってなんですか?」
「あぁ、シオン殿はまだ聞いていませんでしたか、簡単に言うと魔王軍の幹部達が集まって成果を魔王様に報告する会ですね」
「報告会…成果…なるほど、そういう事もあるのか。う~ん、他の幹部の人に会うのは初めてですけど大丈夫かなぁ…たしか人間嫌いの幹部さんもいるって言ってましたよね」
「あぁ、タイランのことなら心配いらないですよ。彼はいつも幹部会には不参加ですから。前線で戦うこと以外はどうでもいいタイプなんです」
「そうだったんですか…じゃあ大丈夫かな」
でも幹部会で成果の報告っていわれても…エルフの村とゴブリンの件ぐらいしかないんだけど。
「そういえば、ディアボロスもシオン殿会えるのを楽しみにしてるって言ってましたよ」
「ディアボロスさん…?」
ん…?何かどこかで聞いたことがあるような。
「では、私は幹部会に向けて少しでも多くの勇者を討伐しないといけないので、ここで失礼します。また後日幹部会で会いましょうシオン殿!」
黒騎士さんはそう言って、足早に立ち去った。それにしても、勇者なんてほとんどがSランク冒険者の中でも指折りの実力者揃いなのに、それを討伐してくるって黒騎士さんって凄いんだな。
「おい、そこの少年よ」
「ん…?」
あれ、なんだろこの声。
「我の声が聞こえんのか?」
なんかさっき竜王に押しつけられた聖剣が喋ってるような。
「その通りだ…我こそ聖剣シャベルンデス、新たなる主よ…しかし我はとっくに剣として死んだはずなのだが…なぜ蘇っているのだ?」
少年サンデーで連載中の「メメシス」柳生卓哉先生からとっても素晴らしい黒騎士のファンアートをいただきました。
柳生卓哉先生のメメシスは勇者に美少女の代わりに仲間からクビにされたアシューとキジラというが二人の冒険の物語です。二人は魔王を倒すために猛烈な修行をして強くなるのですが、その理由は勇者より先に魔王を倒して自分達を捨てた勇者を後悔させてやるという「男に振られた女がそいつより格好良い男を捕まえて私を振ったことを後悔させてやる」みたいな女々しい、そんなしょーもない理由で頑張る二人なのですが、絵がファンタジーとしてすごい迫力があって圧倒されるのですが、どこか間が抜けた会話のギャグセンスや、胸が大きくて可愛い女の子が多かったりで、とっても面白い漫画で、現在はサンデーうぇぶりというアプリでも無料で読めるので是非チェックしてみてください。https://www.sunday-webry.com/series/1211