最強ネクロマンサー、ゴブリンを救う(3)
ゴブリンハンターが街の外へ出たので、彼の後ろを気づかれないようにつけていく。集団で固まって移動すると気づかれる可能性が高くなるので、「私に任せてください!エルフの森で見張りしていたときにもエルフハンター達に気づかれないように尾行した経験があるので!」と自信がありそうなエイファが先行して、ゴブリンハンターのあとをつけて、僕たちはだいぶ距離をとってエイファからの合図を待って進んでいく。
そうして、しばらく尾行を続けて数時間。
「シオン様、ゴブリンハンターが洞窟の中にはいっていきましたよ~」
エイファが
「もしかしてあの中が隠れ家なのかな…?」
「シオン様どうしますか?」
「しばらくここで待ってみようか」
しばらくすると、ゴブリンハンターがゴブリン達を引き連れて洞窟から出てきた。
「お前らあそこに隠れてる女を捕まえてこい!ちょっと肌の色は黒かったが、あれはおそらくエルフだな!売ればすげぇ金になるぞ!ちびのガキと獣人が一緒にいたが、お前らならあれぐらいやれるな?」
これは僕たちのことが。なるほど、どうやら向こうは気づいていたみたいだ。
「わ、私が尾行してたのばれてました!?」
うーん、エイファってもしかしてあんまり隠密的な事得意じゃないのかな?よく考えたらエルフハンターの時も見つかってたという話だったよね…。人には向き不向きがあるから仕方ないことだ。そもそもエイファってエルフだけあってすごい美形で、オーラがあるから、気づかれやすい気がする。
「さぁて…ゴブリン共いってこい!!」
「ぐわぁああ!!」
ゴブリンたちが悲鳴にも似た咆哮をあげて、僕たちに突進してくる。
さて…魔王様に言われた通り、アンデッドの支配権の横取りできるか試してみようかな。確か、相手のアンデッドに自分の魔力を注ぎ込んで、相手の魔力を押し流すようなイメージだって言ってたな。
僕が魔力をそそいだ瞬間、ゴブリンの体がわずかに発光していた。エイファの時と似ている。すると、僕達に向かってきていたゴブリンが立ち止まった。
「おいどうした…!?ゴブリン共、あそこにいるやつらだ…おいどうした?なんで急に止まった。なんで動かない?」
「…不思議だ…力があふれてくるぞ。それにいつもなら命令を聞けば嫌でも勝手に体が動くのに…止まった。それにまったくこいつの言葉から強制力が感じなくなっている。契約が切れたのか…?いや契約が切れたなら俺たちの体は朽ちていくはず…力が湧き出るようなこの感覚はおかしい…」
「ゴブオさん!俺たちもそうです!なんか体が熱くて…力が有り余ってる感じです!」
「お前たちもか…これはどういうことだ?」
「ゴブリンのみなさん!こちらが魔王軍の新幹部シオン様です。あなたたちを助けに来たんですよ。契約もシオン様が上書きしたのでもうそこの悪いネクロマンサーの言うことを聞く必要はありませんよ」
「え、エルフの姉ちゃんあんた何を言ってるんだ…?魔王軍の幹部様が俺たちを助けに…?たかがゴブリンの俺達を…?」
「ど、どういうことだ?」
「てか、魔王軍の新幹部が人間なのか!?それにもうあいつとの契約もきれてこの人のアンデッドになったって本当なのか?」
ゴブリンたちが騒然としている。
「おい、どうした!?ふざけるな…何を馬鹿なことを真に受けてるんだ…!支配権の横取りなんてテイマーでもネクロマンサーでも相当術者に実力差がない限り成功しないんだぞ!?俺は天才ネクロマンサーなんだぞ!!B級モンスターでもAクラス冒険者レベルに引き上げることができるんだ!ネクロマンサーが不人気職で偏見さえなければ、Sランク冒険者になることだって出来たんだ… この俺から支配権を奪うなんてことができるやつがいるわけがないだろうが…!嘘つくんじゃねぇ!」
「そういわれても…できたみたいなので」
「いや、そんなはずがない!ありえねぇ!おい、ゴブオ!お前がリーダーとしてさっさとそいつらを捕まえろ!!」
「…本当に命令に強制力を感じない…」
「おい…ちょっと待てよ。何だ…何で俺に向かってくる?何のつもりだ?俺の命令が聞こえてないのか?」
「俺は解放されたら絶対に決めていたことがある」
「あぁん?いいから、さっさとそいつらを…」
「お前を一発殴るとな!!」
「ぐぎゃあああ!!」
「俺達も!!」
殴り飛ばされたネクロマンサーが地面に転がる。他のゴブリン達もネクロマンサーに詰め寄って足蹴にしてる。温厚で優しいって聞いてたんだけど…。いや、長年のつもりつもった恨みが爆発してるとしたら仕方ないのかな。
「や、やめろぉ!!やめてくれぇ!!」
「あの…それぐらいにしておいてくれないかな。その人には聞きたいことがあるんだよね」
「…あぁ、すいません!これまでの積年の恨みがあってつい…」
「俺に聞きたいことだと…?」
「はい…なんで、ゴブリンハンターの貴方がなんでゴブリンを使って悪さをしてたのか知りたいんです」
「…あぁ、それは元々依頼だったんだよ」
「依頼?」
「あぁ、ネクロマンサーとしてかなり腕に自信のある俺だが、お前も知ってるだろうけど、ネクロマンサーってのは不人気でどこにいっても扱いが悪い。クエストの報酬の分け前をしぶられたりするなんて事は日常茶飯事だ。いっそのこと冒険者なんてやめてやろうか…そんな風に思ってたがある日、俺に変な女が話しかけてきてな]
なるほど、確かに僕も似たよう目にあったことある。
「そいつ曰く、ゴブリンをアンデッドとして使って、女を襲ってくれっていう仕事を俺にもちかけてきたんだ。襲った女は殺すも犯すも俺の自由だってな。それでたまに売れない奴隷はクエストを受けて引き渡してたそれがこうじてゴブリンハンターって言われるようになったわけだ」
「そんな仕事を依頼する人がいるのかな?目的は一体何なんだろう?」
「そんなことは俺も知らないな。なぁ、お前がこの集団のリーダーなんだろ?頼むから見逃してくれ、同じ人間…それにネクロマンサーじゃねぇか…な、頼むよぉ!」
ゴブリンハンターが涙を流しながら、僕に近づいてくる。
「う~ん…」
この人のやったことは許されるようなことじゃないけど、なんだか可哀想だな。僕もネクロマンサーとしてけっこう人に邪険にされてきたし、歪んで悪事を働いてしまうのもなんとなくわかる気がするんだよなぁ。でも、ゴブリンの人達の気持ちを考えたらここで許すというわけにもいかないし。
「隙ありぃ!お前を人質にして、ここから逃げ出してやっ…ぐへぇ!!」
「え?」
僕が悩んでたら、いつの間にか、ネクロマンサーの頭に矢が刺さってた。
「エイファ…?」
「その男が懐からナイフを取り出してシオン様に飛びかかろうとしていたので私が討ちました」
「そっか、危なかったね…助かったよ」
「いえいえ、シオン様を守るのはメイドの私の当然の役目です!」
メイドの役目かな?
「これでこいつも死んだのか…」
「長年こいつに支配されてきてずっと殺してやりたいと思ってたけど…まさかこんな形でこいつが死ぬとはな…」
ゴブリン達がネクロマンサーを見て、複雑そうな表情を浮かべている。そして、ゴブオさんが僕の前に出てきて頭を下げた。
「シオン様…ありがとうございます。まさか、また自由になれる日がくるとは…まぁ、死んでしまったことには代わりがねぇけど…これからは少なくとも…あの女子供を襲って痛めつける事をしなくてよくなると思ったら…心が楽になったよ」
「…俺たち、あの野郎に3年ぐらいずっと利用されてきて…恨みも何もねぇ女達に乱暴して奴隷として売っていかれるのを見るだけの地獄ような生活だったんです。それをシオン様のおかげで救われました…!」
「シオン様ばんざーい!俺、故郷の村にシオン様の銅像を建てるぞ!」
それはやめてほしい。
「シオン様、これで解決したということで彼らを連れて魔王軍に帰りましょう。ゴブノスケさんに報告しないと」
「そうだね、ゴブオさんついてきてくれるかな」
「…俺達なんかが本当に魔王軍にいっていいのだろうか?」
「どういうこと?」
「魔王軍に迎え入れてもらえるのは…ありがてぇ話ですが、俺達にそんな風に扱って貰える資格がないんです。さっきも言いましたが、俺達はあのネクロマンサーに操られて、多くの女子供を襲ってきました。人間だけじゃねぇ、亜人もたくさんいた。そして時には彼らを殺してしまうこともあった。そんな俺らが魔王軍に受け入れてもらえるんだろうか…?」
ゴブオさんが、悲しげにそうつぶやいた。
「そう言われてみると…確かに俺達これまでひでぇことしてきたよな…」
「どうせ1回死んだ身だし…このまま墓に入ったほうがいいかもなぁ…」
なんかゴブリン達がすごく落ち込んでるな。
彼らがそんな罪悪感を抱えていたとは…。彼らの根は温厚な善人…命令されて無理矢理やっていた事とは言え、過去の行いは自分で許せるものではないんだろう。何か、彼らの心が救われるようなことができたらいいんだけど。
「…あ、ちょっと思いついたかもしれない。ゴブオさん達は、今までのやってきた事の逆のことをやればいいんじゃないかな?」
「俺達がやってきたことの逆とは…どういうことですか?」
「うん、今までは女性を襲って奴隷として売ってきたことに加担させられてた、これからは女性を助けて解放すればいいんじゃないかな?」
「…おぉ!!そんなことができるなら、これまでの行いの贖罪にもなりますし、俺達としては願ったり叶ったりですが…」
「なら、今後は魔王軍を拠点しつつそういう活動をしていけばいいと思うよ。僕もできる限り手助けするからさ」
「…そこまでしていだけるとは!!本当にシオン様は聖人のようなお方だ…!」
「ほんとになぁ、あいつとは比べものにならねぇよ…」
「そういう事なら魔王軍で頑張ろうかな…」
ゴブリン達の表情が少し明るくなった。
「さすが、シオン様です!ゴブリン達に対して新しい希望になるような提案をすぐに思いつくなんて!私が助けを求めたときも、すぐに応えてくれたし、本当にシオン様は聖人です!!」
「エイファそれは褒めすぎだよ…」
まぁ、何はともあれ、ゴブリンの一件がこれで解決して良かった。こうして、魔王城へと帰還してゴブノスケさんにクエスト完了の報告をする時にゴブノスケさんとゴブオさんは感動再会を果たした。「シオン様!本当に貴方にお願いして良かった!!」と泣きながら感謝されてしまった。
そしてゴブリン達は魔王軍で自分が魔物だとばれないようにフルフェイスの鎧を着て王国と魔国両方で活動している。
そうしていろんな所をめぐって、奴隷商人を襲って、奴隷を解放したり、暴漢に襲われる女の人を助けたりしている。そんな彼らの活動は人間の王国でも話題になっているそうだ。その活躍が吟遊詩人の歌になってるらしい。
「本当にシオン様にはなんと感謝していいか…新しい生きがい…いや死にがいっていうですかね。ともかくこの体が再び朽ちるときまで、正義と女性の味方ゴブリン軍団として頑張ろうと思います!」
時々、こうやって魔力補給もかねて、魔王城に戻って報告にくる彼らはアンデッドだけど、とても生き生きしてる。ただ、今日僕の屋敷にきているのはゴブオさんだけではないんだけどね。
「シオン…!そんな奴の報告なんて聞いてないで私と勝負しろぉー!!あ、この間のエルフはダメだぞ?よく考えてれば、私は紳士的な竜王なので、女を相手にしては本気が出せないのでな、違う相手を所望するぞ」
「そう言われても…僕のアンデットってレインさんとエイファと…それこそ今来てるゴブオさんのゴブリン軍団ぐらいしかいないんだけど」
「なら、そのゴブリンと勝負するしかないな…うむ、これは絶対に勝てそうだ…勝ったらシオンは私のものだからな!」
「あのロンロン様、それはさすがに都合が良すぎるかと」
「そうだぞロンロン…いくらなんでも、ゴブリンと竜王の勝負など…」
「この竜王ずうずしいです…」
「姉上は黙っていただきたい…!エルフの子も…ちょっと黙っててほしい…かな…できればでいいんですけど」
ちょっとエイファに対して当たりが弱いのは前回一発でのされたトラウマなのだろうか。
「でも勝負するメリットがそもそもないんですよね…」
「ならば今回は勝ったらシオンと姉上は私のものというのはなしでもいい、とりあえず私の強さをシオンと姉上にちゃんと見てもらえればそれでいいよ。だからそこのゴブリンと勝負させてくれるか」
「でもゴブオさんを危険な目に遭わせるわけには…これからも立派な役目があるわけだし」
「ぬぬぬ…とにかく勝てそうな相手と勝負させてくれるまで帰らないからな…!私は自信を回復したいんだぁ!」
なんかだだをこね出した。しかも要求がすごく理不尽だ。
「あの、シオン様良ければ俺が相手しましょうか…?いや、ゴブリンの俺が勝てるとは思えませんが、とにかく誰かが勝負しないと竜王様が収まらないよう気がします。シオン様に強化してもらってるおかげで少しぐらいなら相手できると思います」
「う~ん…ゴブオさんがそういうなら」
「話は決まったな…!ならばそこの庭で勝負だ!!」
こうして竜王対ゴブリンの勝負が始まった。
「面白かった」 「更新頑張れ」 「続きも読む」
そう思っていただけたら、下から評価、ブックマーク等していただけると、ものすごく嬉しいです。
感想や誤字報告なども、とても嬉しいです




