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最強ネクロマンサー、竜王を庇う

「これまでいろいろお世話になったな!姉上は私の花嫁として、竜人の里に連れて帰るぞ!」


「…ん?」


衝撃的な一言だった。


「ロンロン?どういう事だ?」


「姉上は黙っていてください!」


「あの…竜人って同性で結婚する風習でもあるんですか?」


「そんな風習はない。ただ、竜王には自分の妃を、女の私の場合は婿になるが…竜人の里では強さこそ至高!つがいにはお互いの強さを高め合う者を選ぶことになっているのだ!」


「それで何故レインさんを…?異性じゃないと子供はできないんじゃないの?」


「…姉上が好きだからだ!!理由などない!つがいになればずっと一緒にいられるだろう!子供は気合いと根性で作る!」


そういって、レインさんに抱きつくロンロン。


「ふむ、ロンロン。私を慕ってくれる気持ちは嬉しいが、いくら竜王の権威が強いとはいえ、女同士でつがいになるなんて無茶が通じないだろう。それに私はあるじ様と主従の誓いを結んだのだ。誓いを破ることはありえない。それに、ここの生活も気に入っているのだ」


「嫌です!姉上と一緒にいたい!」


「無茶を言うな…私にはあるじ様を守る役目があるのだよ」


「むぅ!!わかった!!…仕方ない」


そう言ってレインさんから離れて、ため息をつくロンロン。


「こうなったらシオン!!貴様に姉上を賭けての決闘を申し込む!!」

「えぇ!?どうしてそうなるの?」


「姉上がお前の為にここに残るというなら、お前を倒して姉上を我が物にする!至極まっとうな理論だ!安心しろ…殺さないように手加減してやる」


「ずいぶん物騒な話になってきたですね…」


「シオン様…大丈夫ですか?」


タマとエイファが屋敷から出てきた。僕のことを心配してきてくれたのかな?


「面白い展開になってきてるです…」


「タマ…面白がってる場合じゃないよ。竜王と戦ったら、僕なんてすぐやられちゃうよ」


「なんで、ご主人様が直接戦う前提になってるです?」


「え?そりゃ決闘っていったら挑まれた当人同士が戦うものでしょ」


「…ご主人様はネクロマンサーなんだから、自分のアンデッドに戦わせるです…常識的に考えて」


「そうなの?決闘なんてしたことないから知らなかったよ…てことは僕の代わりにレインさんが戦うってことになるのかな?…でもそれだと」


「な、貴様!!私と姉上を戦わせるつもりか?私より強い姉上を決闘相手に出してくるなんて…やめてほしい!!もうちょっと勝てそうな相手にしてほしい!」


「…ロンロン、おぬし王としての誇りはないのじゃ?」


「本当に欲しいものを手に入れようとしているときに誇りなど不要!!そんなものは犬にでもくわせておけばいいのだ!」


「う~ん、やっぱそうなるよねぇ。どうしよう…」


「なんでそんな相手の主張を飲むです?」


「…やっぱり仲の良い姉妹同士が戦うのはよくないと思うからさ…」


「ご主人様は人が良すぎるです…」


「シオン様!でしたら私がやりましょうか?」


「え?エイファが…?」


「はい!あれからメイドとしての仕事だけじゃなく、レインさんにいろいろと鍛えてもらってるので…レインさんが戦えないのなら、シオン様のアンデッドは私だけですから…私がシオン様の為に戦います!」


「気持ちは嬉しいけど…」


「私はその子が相手でいっこうに構わない!!勝てそうだし!」


「なんてずうずうしい竜王なのじゃ…」


「では、決まりだな!!いくぞぉ!!!」


「え?も、もうちょっと準備しないの?」


「常在戦場!決闘が成立した時点で、戦いはすでに始まっているのだ!!」


そう言って、ロンロンはエイファに突っ込んでいく。そして…。


ロンロンはエイファのビンタで吹っ飛ばされた。


「あぐ…あぐ…いたい…なにこれ…」


ロンロンは地面に突っ伏している。


「あの…大丈夫?」


僕はロンロンに声をかける。


「だ、大丈夫に決まっているだろう!!な~に、今のはちょっと油断していただけだ!エイファといったな!あの程度の一撃全く効いていないぞ!貴様なかなかやるではないか!!」


そう言って、僕のさしのべた手を掴み、支えにするようにしてぷるぷる震えながら立ち上がるロンロン。


目にはうっすら涙が流れている。いけない…可哀想だ。


「あの…無理しない方が…ぷるぷるしてるし…」


「無理などしていない!これは武者震いだ!でもこのままだと倒れそうだから、後ろから見えないように支えてくれ…」


「いいけど…」


「やはり、さすが竜王様ですね…いまの牽制の一撃を食らって吹っ飛んだときは、あれ?もしかして弱いのかなと思いましたが…その様子では、やはり効いていなかったのですね!なら次は全力でいかせてもらいます」


「ほ、ほ~ん…なるほど、さっきのは牽制の一撃…これから全力…そうなのか…どうなってるのだ…なぜちょっと肌の黒いエルフ一人が竜人でも最強の王に上り詰めた私をここまで圧倒してるのだ…?そうかこれは夢か?」


ロンロンが現実逃避をしてる。


「では魔力を拳に集中させて…」


「凄い魔力の高まりを感じるのじゃ…」


「あれは私が教えた竜人の奥義だな。もう使いこなせるようになっていたのか…」


エイファの拳に魔力が集まっている。風を切り裂くような音がする。これはやばそうな感じがする。


「いきます!!」


「夢…これは悪い夢…」


まだ現実逃避してる!このままだともろに直撃しちゃう。


「エイファだめっ!!!」


僕はエイファとロンロンの間に割り込む。


「し、シオン様…?」


「エイファ、もう勝負はついたよ」


「え?どういうことですか?それだとさっきの私の軽い一撃で竜王様がやられたってことになっちゃいますけど…?それはさすがに…」


そうなんだけど。でもこれをそのまま伝えるとロンロンの面目が丸つぶれになってしまう。ロンロンさんも小声で『まずい…このままでは竜王としての威厳が…みんなになめられてしまう』と悲壮な顔で言ってる。


「…え~とロンロンは今日は風邪を引いていてすごく体調が悪かったみたいなんだ…!立っているのもやっとな状況で無理をしていたんだよ。この勝負は後日に持ち越そう」


「そうだったのですか」


「シオン殿、優しいのじゃ。私はまさかロンロンが風邪を引いているとは思わなかったのじゃ」


「ロンロン…そんな状況で、私のために決闘を…悪いことをしたな…」


良い具合にみんな信じてくれた。それもそうか…さすがに竜王がここまでぼろ負けするなんて想像してなかったんだろう。エイファも自分の力に自覚がそれほどないみたいだし。


「あの、ロンロンさん大丈夫?」


「シ、シオン貴様!!私に情けをかけるとは…」


「あれ?顔が真っ赤ですけど大丈夫ですか?もしかして本当に風邪引いてた?」


「こ、これは何でもない!!お、覚えていろよ!次は絶対に勝つ!!次は姉上だけじゃなくお前も私のものにしてやるからな!!」


そういってロンロンは竜化して、飛び立っていた。なんで、僕まで対象に入っているんだろう?何か恨まれるようなことしたかな?


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