最強ネクロマンサー、竜王と出会う
「ふむぅ…この魔道具…不思議なのじゃ。こんな貴重な魔道具をエルフハンター達は一体どこで手に入れたのか? こういった魔道具は普通なら、何かしら出自がわかるような紋章やら何やらが刻まれていることがあるのじゃが…一体どこの誰がこんなものをエルフハンターに与えたのじゃろう。それより気になることがもう一つあるのじゃ…シオン殿!私をいつまでたっても魔王様呼びで、名前で呼んでくれないのじゃがどう思う、シルフィ!?」
「あら、そんなことですか?」
魔王のメイド、シルフィがくすりと笑う。
「…そんなこととはなんじゃ!」
「まぁ、礼儀正しい少年でいいじゃないですか。魔王様のことを尊重してくださっているんですよ。逆に考えてください。名前で呼んで良いと言われて、次から気安く呼び捨てにするぶしつけな性格だとそれはそれで魔王様の好みではないのでは?」
「うむぅ、たしかになのじゃ…あの奥ゆかしい感じのシオン殿が…可愛いのじゃ」
「ならば、いいではないですか。そのうち本当に仲良くなった時にきっと名前で呼んでくれますよ。それにしても…シオン様は凄いですね。あのプライドが高く警戒心が強いカタリナ森の一族のエルフ達がまとめて、この魔王城にくるとは…。カタリナ一族は、力がそれほどない分、凄く臆病で警戒心が強いのですよ。いくら命を助けたとは言え、あれほど無防備に信頼されるシオン様というのは一体どういうことなのか…」
「きっと可愛いからなのじゃ」
「確かにシオン様は可愛いですが、それだけとは思えませんね…」
こんこんとドアをノックする音がした。
「世間話中、失礼する。入っていいか?」
「…その声は…まさかなのじゃ…」
「なんだいるではないか!いるなら返事をしろ!久しぶりだなアンリ!」
扉を開けて、入ってきたのは灼熱のように燃える赤髪の美少女。竜王ロンロン。正直今は会いたくない相手だったのじゃ。
「ロンロン…!な、何をしにきたのじゃ!?」
「もちろん姉上を返してもらいにきた!アンリひどいな。何故あの姉上が復活したのを教えてくれなかった。友人としてひどい裏切りだ」
「…確かにロンロンと私は友達なのじゃ…だけどちょっと今回は伝えない方がいいと思ったのじゃ。親しき仲にも秘密ありという言葉もあるなのじゃ」
「とにかく姉上に会わせろ!どこにいる?」
「い、今は旅行中なのじゃ」
「そうなのか、まぁ、姉上も復活してちょっと遊びたくなる気持ちもわかる。帰ってくるまで待つよ。それでいつ帰ってくる?」
「さ、三年ぐらいかな~なのじゃ」
「長過ぎる!!そんなに待つ時間はない!」
「そ、そんなこと言われても…いつ帰ってくるかどうかはレイン様次第なのじゃ…三年ぐらいの可能性もあるのじゃ」
「アンリ貴様…怪しいな…本当に姉上は旅行に行ってるのか?」
じ~っと私の顔を見つめるロンロン。思わずひたいから汗がぽつりと流れる。それをくんくんと嗅ぐロンロン。
「この汗の…嘘をついてる匂いだな…」
「うぅ、相変わらず獣人並みに臭いに敏感な奴なのじゃ…」
「やはり、姉上はまだこの街にいるようだな!姉上のいるとこに連れていけ!!連れて行かないと人化を解除して暴れるぞ!」
そう言って、口からボフっと火を吐くロンロン。
「…わかったのじゃ。はぁ~困ったのじゃ…ロンロンときたら力こそすべての力至上主義のわがまま竜人…シオン殿を困らせないといいのじゃけど…」
「シオン!!そいつが姉上を復活させたネクロマンサーだな!そいつに話がある!」
「シオン殿に危害を加えるのだけはやめてくれなのじゃ!頼むのじゃ!」
一応先に牽制しておくのじゃ。もしもロンロンのせいで、シオン殿が魔王軍を抜けるなんてことになったら、とんでもない迷惑なのじゃ。
「アンリ、安心しろ!これでも竜人の長だ。竜王ロンロンとしてふさわしいふるまいをする!」
「現在進行形であんまり長にふさわしいふるまいはできてないと思うのじゃ」
「そんなことないだろう!」
◇◆◇
「いや~今日もいい天気だな~」
屋敷の庭で体を伸ばす。ネクロマンサーって部屋に引きこもりがちな根暗なイメージを持たれていたけど。僕は毎朝こうやって朝の光を浴びるようにしてる。
なんだか気分がよくなるよね。
「それにしても…みんな僕を過大評価しすぎな気がするなぁ…」
この間のエルフハンターの一件でもすごく褒められてしまった。僕は何もしてないからいらないというのに、金一封の褒章までもらってしまった。ただ、その後は特に何もない。魔王軍の幹部って暇だなぁ。ここまで攻めてくる勇者なんてめったにいないみたいだし。
これからも基本的にギルドで困ってる人を助けるのを活動にしていくことになるのかなぁ。そんなことを考えていると。目の前に勝気そうな吊り目の美少女が一人立っていた。
近所の子かな? なんか、だれかに似てるような気がする。
「貴様がシオンか…?」
「そうだけど…僕に何か用かな?」
「やはりか!噂通りなかなか貧弱そうで可愛い見た目だではないか!その見た目で保護欲をくすぐり姉上をたぶらかしたのだな…」
「…それはありがとう。僕からすれば君の方がよっぽどかわいらしい見た目だけど…それにたぶらかしたって誰のことかな?」
「わ、私がかわいいだと…!? な、なんということ…ひどい侮辱だ!この私に向かって可愛いなんて…!怒り心頭だ!貴様は今私の逆鱗に触れてる!」
目の前の美少女が頬を真っ赤にして急に悶えだした。怒っているというよりは恥ずかしがってるように見えるけれど。
「う~ん…ごめんね。怒らせるつもりじゃなかったんだけど」
「もっと誠意ある謝罪を要求する!」
「…どうすればいいんだろう」
「それはもち…うぅ、アンリなにする…」
魔王様がその子を押しのけるようにして、ずいっと前にでてきた。魔王様も来てたのか。
「シオン殿、謝る必要はないのじゃ」
「そうかな?」
「…シオン殿はその者は竜人の長ロンロンなのじゃ。シオン殿に話があるそうなのじゃ。ちょっと理不尽な子じゃから気を付けてほしいのじゃ」
魔王様がささやくように言った。
「竜人の長…?こんな可愛い子が?じゃあ、ロンロンさんって呼べばいいのかな…?それともロンロン様?」
「敬称で呼ばれるのは好きではない!ロンロンと呼べ!」
言われてみれば頭の角とか背中にぴょこっと生えてる翼とかレインさんと似てる。そういえば、顔だちも何となくレインさんと似てるなぁ。ちょっとまだ幼いけども。
「ふわぁ…あるじ様…今日も早起きだねぇ…」
噂をすればなんとやらで、レインさんが起きて庭に出てきた。レインさんはアンデッドになってるけど、寝るのが好きだ。
「あ、あねうえぇえ!!」
レインさんの胸へ体当たりするように飛び込むロンロン。すごい勢いだ。僕だったら吹っ飛ばされそう。そんな体当たりをふわっと優しく受け止めるレインさん。
「む、ロンロンではないか。懐かしいな…相変わらずだな。こんな突進、普通なら死んでるぞ?」
「あねうえぇ!!!懐かしいな!!アンデッドになって復活したと聞いて多少腐ってて臭うかと思ったけど、すごくいい匂いだ!生きてるときと全然変わらない姿でびっくりしたぞ!」
「ふふ、そこは私のあるじ様のおかげかな」
「なるほど…どうやら噂通りシオンというやつはすごいネクロマンサーのようだな!姉上をこんな綺麗に復活させてくれて礼を言う!貴様は大した奴だ…!礼を言おう!」
ぺこりと頭を下げるロンロン。
「いえいえ、そんな…」
「これまでいろいろお世話になったな!姉上は私の花嫁として、竜人の里に連れて帰るぞ!」
「…え?花嫁?」
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