閑話 ダークエルフの少女から見た、最強ネクロマンサー
私、エイファはカタリナ森のエルフ一族の一人だ。私はあの日、森の見張りの役目を任されていた。
人間、とくにエルフハンターがこないかどうかを見張るのが仕事だ。
エルフハンター…私たちエルフにとっては、悪夢のような存在だ。エルフは魔法に優れていて、ちょっとした魔獣なら倒せる程度の力がある。村の実力者ともなるとAランク冒険者並みの力も持っている。私自身も見張りを任されいるのは村でも魔法と弓の腕に優れている方だからだった。
あの日はエルフハンターを見つけて、いつもなら村に戻ってみんなに知らせて迎撃の準備をするところだった。でも、私はその男たちが得意げに話している言葉を聞いてしまった。
「おやぶん…エルフは魔法に優れてますよね…大丈夫なんですかねぇおいらたち肉弾戦なら自信あるんすけど、魔法ってなると離れた距離からぱしゅぱしゅやられてうぎゃ~って感じになっちゃわないっすかねぇ~」
「あのなぁ、この一定範囲の魔法を無効化する魔道具さえあれば、なんも心配いらねぇからよ。来る前も魔法使い相手に試してきただろう? これさえあればエルフは魔法を使えねぇ。これで三回目だぞこの説明は…」
その男は特殊な魔道具を持っているようだった。たしかに、その男たちは迷いの森の結界の効果がほとんどないようだ。普通なら、あっちにいったりこっちにいったりを繰り返すはずなのに。
そして、その説明しているおやぶんという男の顔には見覚えがあった。
たしか、数年前までこの辺りを根城にしていた山賊として有名な男だった。たしか、Aランク冒険者でも高位の戦士を正面から打ち負かしたという逸話を持っている男だった。
もしも、あの男の持っている魔道具が魔法を無効化することができるなら、とてもまずいことになる。魔法が使えない状態であのハンターたちに対抗できるほどのエルフは私の村にはいない。
「さぁて…次はこっちの方に行くか!」
まずい…その奥を少し進めば、私たちのエルフの村が見えてくる。
なんとか私が、不意をついてあのおやぶんとよばれた男を倒さないと…。その決意を固めて、私は弓矢を構えた。
そして弓を放つ。
「おっとぉ!?」
男は私の放った弓矢を直撃する寸前に反応して腕でガードしていた。
「え?おやぶん!?大丈夫ですか?」
「大丈夫に決まってるだろぉ、俺はAランク冒険者を倒した大山賊ハーカス様だ。こんな弓矢なんぞで死ぬかよ。さて、それより弓を放った奴がいるってことはだ…いるなぁ!?エルフ!!」
「まじすかおやぶん!」
「だよなぁ?そこの茂みに隠れてるお嬢ちゃん」
そこから私は必死に戦い、抵抗した。しかし、結局は深手を負って逃げるのが手いっぱいだった。村の方に逃げることはできない。すでに、私が帰ってこないことで村のみんなは異変に気付いてくれているはず。
私の役目は、助けを呼ぶことだ…。エルフを助けてくれるものなどいるのだろうか…。
エルフはまったくどの種族ともほとんど交流をとっていない。人は私たちを奴隷にすることしか考えていないからありえない。魔族は味方してくれる者もいるが中にはエルフを狙うものはいるから怖い。
でももしかすると、魔王軍なら。今の魔王はエルフに対して好意的で、実際に魔王軍のメイドにはエルフがいると聞いたことがある。
だから私は、今にも倒れそうな体に気合いをいれて力を振り絞って、森の外まで駆け抜けた。そして、やっと魔法が使えるようになったのに、気づき。転移の魔法で魔王城へ飛んだ。
そして、ギルドへ駆け込んだ…そして倒れた。自分が死ぬのが分かった。
最後にやさしそうな声が聞こえた。私はこの人なら、助けてくれるんじゃないかと思った。でも死にかけの私には説明することはできなかった…ただ助けてという言葉しか伝えることができなかった。みんなごめんね…私はけっきょく何にもできなかったよ.。
そう思っていたのに、なぜか私は目を覚ました。姿はずいぶん変わってしまっていたけど。
そこからは、あっという間だった。私が転移の魔法でエルフの森に飛ぶと、レイン様、黒騎士様、カイルさん、そして私自身も、シオン様のおかげで強くなっていたから、一緒になってがあっという間に、エルフハンター達を蹴散らした。ハンターの親玉も私が倒すことができた。
村を助けた後、私は自分の姿をみんなに見られるのが怖くて、森の奥に一人で隠れていた。そんな時、シオン様が私の元にやってきた。
「エイファ、ごめんね」
「な、なんですか?なんであなたが謝るんですか?」
「だって、今の君の姿はエルフにとって好ましくないみたいだからさ。そんな姿になったのは僕が君をアンデッド化させてしまったからなんだ。だから、一言謝っておきたかったんだ…」
シオン様は本当に申し訳なさそうに私に頭を下げた。この人は私に謝りに来たの?何も悪いことをしてない。むしろ感謝される事しかしていないのに。エルフの村の皆に大歓迎されて、囲まれていたのに。普通の人間なら、絶世の美女揃いのエルフに囲まれたら有頂天になる。それなのに、シオン様は、私の事を気遣って、会いに来てくれたのだ。
私は信じられなかった。この世界にこんな優しい人間がいるなんて…。
「なんでシオン様が謝るんですか?シオン様は私達エルフの村を何の見返りもなく助けてくれて…それなのに…」
「僕は君に許可なく、アンデッドにしてしまった…僕は今の君も綺麗だと思うけど、エルフにとってはそうじゃないのかもしれないからさ…いま、君が悲しんでるのは、やっぱり僕の責任だと思うんだ…ごめんねエイファさん」
「シオン様、シオン様さえ良ければ、私をシオン様のおそばにおいていただけませんか?私はこの姿では、村の皆とこれからも一緒に暮らすことはできないと思うんです」
自然とそんな言葉が出てきていた。この村にいられないなら、いえ、もしも受け入れて貰えたとしても、私はこれからシオン様のそばにいたい。そんな気持ちが生まれていた。
「うぅ~ん、その必要はないと思うよ?」
「やっぱり、私では…無理ですか?」
私では、シオン様の傍にいる資格はないのだろうか。それはそうかもしれない。私は魔法と弓がすこし優れているだけの普通のエルフだ。シオン様とはつりあっていない。
「そういうことじゃないよ! …エルフの村の皆は君を怖がる事なんてないと思うんだ。実際、僕に会いに来たエルフのみんなエイファのことを気にかけてたよ、だから僕が探しに来たんだ。僕もエイファが急にいなくなって心配だったから」
そうだったのか。
「勝手かなとは思ったんだけど、皆に聞かれてその姿のことも、エイファがぼろぼろになりながらも、魔王軍に助けを求めに来たことも伝えたんだ。君のことを怖がってる人なんていなかったし、むしろこの村を救ってくれたエイファのことを英雄だって言ってたよ。エルフハンターの頭を倒したのもエイファだもんね」
「私が英雄?」
私が英雄だなんて…。あれはシオン様のアンデッドになった影響で強くなっていただけだ。元の私ではあの男に手も足も出なかったんだから。
「とにかく…村に戻ろうよ。みんな心配してるから」
私はシオン様がさしのべた手を握った。そしてみんなの元に戻ると、私が想像していたことはみんな杞憂だったことを知った。みんな、私の見た目に少し戸惑ってはいたけど、とても歓迎してくれた。かけられるのは言葉は私に対する感謝の言葉ばかりだった。
とくにエルフハンターの親玉を私が倒したことを褒めてくれた。もしかしたら、あのときシオン様が、私に戦わせてくれたのは、ここまで見越していたのかもしれない。
あの人はなんて、凄い人なんだろう。普通の男なら、エルフのような絶世の美女達の前では良い格好をして、自分の手柄だとアピールしたいはずなのに、シオン様は他のエルフにお礼を言われても「エイファのおかげだよ」「エイファがいなかったらここに来ることはできなかった」「僕はとくに何もしてない」と、私に手柄を譲るような事ばかり話していたらしい。なんて優しくて、器の大きな人なんだろう。
そして、シオン様は村長のエルザさんの家で更にシオン様の器の大きさを見せられることになる。
エルザさんはなんと村長として、今回の一件のお礼として、自らシオン様のメイドになると言ったのだ。エルザさんは美形揃いのエルフの中でも、更に飛び抜けた美貌の持ち主だ。魔法の腕も素晴らしく、面倒見もいい。だからこそ、村長を務めていた。
そんなエルザさんがメイドになるなんて、言ったら、誰も断るわけがない。
だけど、シオン様はお礼なんていらないと言ったのだ。私がお願いしたときとおんなじように。普通なら、ありえない。いくら、一度いらないと言ったとしても、実際に目の前にエルザさんほどの美女から、何度も貴方のメイドになりたいと言われて、断る事ができる者がいるだろうか。
このとき、私はもうすでに、シオン様に心底惚れ込んでいた。だから、私は自分がお礼をしたいと伝えた。
それをシオン様は、受け入れてくれた。そして、私はダークエルフとしてシオン様のメイドになった。最初は嫌だったこの見た目もシオン様の仕えている証拠だと思えば、むしろ誇りに思えるようになった。
「エイファ、仕事を教えるです…」
「はい!」
そして、私はシオン様のメイドになることになったけれど、シオン様にはすでに獣人のタマ様というメイドがいたようで、タマ様は最初は「メイドは私一人で十分です…」と不満げだったけれど。とても優しい方で結局私のことを後輩として可愛がってくれるようになった。見た目はタマ様の方がよっぽどかわいらしいのだけれど。私はこうしてメイド見習いとしてのタマ様から仕事を教わっている。
シオン様は、時々私に「嫌になったらいつでもやめていいんだからね?僕のアンデッドになったっていっても、時々僕の元に来てくれれば、体も腐敗しないはずだし、傍にいなくても大丈夫なんだよ?だから無理しないでね?」と声をかけてくださるけど…。
私はシオン様が嫌でなければ、一生偉大なネクロマンサーである貴方の元に仕えたいという思いでおります。と伝えるのだけどシオン様「僕は偉大なネクロマンサーなんかじゃないんだけどなぁ、みんながいなきゃ何もできないんだから…」と不思議そうな顔で謙遜するのだった。
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