最強ネクロマンサー、ダークエルフがメイドになる
エルフの村を助けたお礼がしたいと、村長の家に呼ばれた。
「…助けていただきありがとうございました…!あ、私はこの村の長のエルザです。先ほど、皆さんに助けていただけなかったら、あやうく私は手籠めにされているところでした…。それだけではなく、村の者もみな奴隷として売られていたでしょう。皆様にはなんと感謝していいことやら…村の皆を代表して、お礼を言わせてください。本当にありがとうございました!」
そういって、エルフの村の長のエルザさんはふかぶかと頭をさげた。
「それにしてもすごいですなあなた方は…あのエルフハンターたちはみなそれなりの強さを持っていて、魔法を封じられてしまった私たちはあっという間にやられてしまいました…それをあんな短時間で圧倒されるとは…」
「確かにすごかったね。まさかこんなに簡単にエルフハンターを倒せるなんて思ってなかったよ。さすが黒騎士さんとレインさん、それにエイファもすごかったね!あんな大男を圧倒してるだもん…びっくりしたよ。エイファって強かったんだね」
「いえ、私は一度あの男に負けてるんです…その時はとても敵う気がしなかったんだけど…シオン様のアンデッドになったからなのかな…?体にすごい力があふれてるです…」
「やはり私が鍛える必要もなかったかな」
「元々シオン殿が使役していたアンデッドの勇者パーティーもCランク冒険者程度だったが、Sランク冒険者並みの力を持っていた。やはり…シオン殿が復活させると生前よりもはるかに強い力を発揮できるようになるようですね。これはとんでもないことだ…エイファ殿もこれならレイン様はどれほどの力を…」
「ふふ、正直自分でも怖いほどの力を感じているよ」
「おぉ…!それは頼もしいですな!私もレイン様に負けないように精進しなければ…」
黒騎士さんが闘志を燃やしている。
「あのぉ、ところですこし気になることがあるのですが…エイファはどうしてしまったんでしょう?なぜそんなダークエルフのような姿になったの…?」
「これは…」
エイファは黙ってしまった。彼女が言いづらいなら、僕が言うべきだろう。彼女を復活させたネクロマンサーとして。
「あぁ…エイファのこの姿は僕が彼女をアンデッドにしたからなんです」
「アンデッド…!?エイファは死んでしまったのですか…」
「はい、エイファは瀕死の状態で魔王軍のギルドに助けを求めに来たんですけど…そこで力尽きてしまって…僕が復活させたんです。そうしないと、この村がどこにあるのかわからなかったので…」
「そうだったのですか…エイファよく頑張ってくれたな…」
「そんな、私は助けを呼びいっただけで、結局シオン様達がいなければ…」
「いや、エイファが必死に頑張ったおかげだよ。それに最後にハンターの頭を倒したのもエイファだしね」
「…あれも結局シオン様のアンデッドになって強化されてたおかげですから…それよりエルザさん…皆は私の姿を見てどんな反応だったの?私、怖がられてなかった?」
「そのことか…確かにダークエルフといえば我々エルフからすれば邪悪の象徴のような存在だからな…みな戸惑っていた。だが…たぶん大丈夫だ。エイファが我々のために戦う姿はみんな見ていたからな。それに敵の親玉を倒したのもエイファだ。見た目や過去の伝承などその事実に比べれば些細なことだよ!」
「それは…シオン様が私に倒すように言ったから…。そうか、そういうことだったんですね。私の変わってしまった姿がみんなに受け入れられやすくするように、あそこを私に任せてくれたんですね」
「え?」
僕はただ、決着はエルフ自身によってつけた方がいいかなと思っただけなんだけど。
「戦いの後の事まで気遣ってくれていたなんて…シオン様ありがとうございます!」
エイファがうっすらと涙目になりながら、感謝している。
「そこまで考えてはいなかったんだけど…」
「あるじ様は照れ屋だな、あの状況でわざわざエイファに任せたのはそういうことしかありえないだろう」
「うむ、あの時はどういう事かと思ったが、シオン殿がそこまでエイファ殿の事を思って行動していたとは、感服したぞ…」
「シオン様はどこまでも先を見ているんですね…部下になれて本当に光栄です!」
黒騎士さん、レインさん、カイルさんがみんなで勘違いしてる。本当にそこまで考えてなかったんだけど。
「それにしても…我々はもうこの森にはいられなくなってしまいますな…先ほどのエルフハンターの配下が奴隷商人を呼びにいっていました…これからどうするべきか…」
「それなら是非魔王城にきてほしい!!我々は全ての亜人を守る為に活動している。これをきっかけに多くのエルフも仲間にすることができれば魔王様もとても喜ぶはずだ!これは実はこのエルフの村を救いにいく上で魔王様から伝えられていたことなのだ」
「よいのですか…?我々エルフは人間達からすれば、金銀財宝と同じ…これまで以上に魔王城は人間達に狙われるようになりますよ…?」
「確かに、これまでならエルフを仲間にすることはそれなりの覚悟が必要だったな…だが、今なら問題ない!シオン様がレイン様を復活させてくれたおかげで今の魔王城の戦力は史上最高、エルフを仲間にしても全く問題がない…狙ってくる人間がいるなら返り討ちだ!」
黒騎士さん…さすがに僕を過大評価しすぎじゃないか?
「シオン様がいれば、たしかにどんな人間が攻めてきても大丈夫でしょうね」
カイルさんまで。
「わかりました…そう言っていただけるなら。では、私達カタリナ森のエルフ一族は魔王城にいくことにします。我々はみなそれなりに魔法に優れていますので、お役に立てることがあれば何でも言ってください!」
エリザさんが僕に握手を求めてきたのでそれに応える。こんな代表者みたいな扱いをされるのはなれないけど…魔王軍の幹部になったこれからはこういう事も増えるのだろうか。
「ところで、今回の一件のお礼はどうすればいいのでしょうか…?村にはあまり蓄えがないので…」
「あぁ、それはエイファにも言ったんだけど、いらないよ」
「いらない…!?」
「それはいくらなんでも…我々はあなた方の助けがなければ奴隷として売られていたのです…何の礼もしないなど、エルフの誇りに傷がつきます!…とはいえ、今回のご恩に報いるほどの謝礼を用意できないので…なんともしがたいことですが…」
「エルフの皆は魔法が得意なんだよね? さっきの言ったとおり、魔王軍で頑張ってくれたらそれで十分だと思うけど」
「いえ、それはあくまでも魔王城に迎えていただけることへのお礼で、そもそも当たり前の事です…今回の一件にはもっとそれなりの礼をしなくては…!そうですな、シオン様さえ良ければ…我々の一族から一人、メイドとして仕えさせていただけないでしょうか?エルフをメイドとして雇うことは大きなステータスになると聞いたことがあります。シオン様さえ良ければ、私でも構いませんよ」
「えぇ!?あなた村長ですよね?」
「村長だからこそ責任をとるべきなのです…!大丈夫です。後継となる者ならいくらでもいます。そもそも便宜上村長を名乗っているだけで、たいして役目がないのですよ…それこそ結界のチェックをすることぐらいで…まぁ、シオン様次第ですね。さぁ、村の皆にも同意はとれています。誰をメイドにされますか?」
エリザさんが僕にぐいぐい迫る。
「いえ本当にお礼はいらないですから!」
「なんですと…!?私ではダメですか?では誰を?」
「いえ、だから本当にお礼はいらないんですよ…」
「エルザ村長、シオン様には私がお礼をします」
「エイファさん?」
何を言ってるんだろう。
「元々、シオン様にこの村を助けていただくようにお願いしたのは私です。そして私はシオン様のアンデッドになりました。この恩を返すのは私にやらせてください!村長の代わりにメイドとして、誠心誠意つとめます!」
なんでそうなるの!?
「そうか…?決意は固いのか?私が代わっても良いのだぞ?」
「代わりません!」
「そうか…ならば何もいうまい…」
エルザさんは少し残念そうな顔をしている。やはりエイファさんに一人に全てを押しつけるような形になるのが嫌なのだろうか。そのために自分の身を捧げることができるなんて、優しい人だ。
「シオン様!これからよろしくお願いします!」
「本当にお礼なんていらないんだけど」
「そういうわけにはいきません!」
こうして、ダークエルフのエイファさんが僕のメイドになったのだった。「メイドは一人で十分です…」そんなタマの声が聞こえてきたような気がした。
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