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僕と神様

作者: 牛肉太郎
掲載日:2018/06/02


『僕』のそばには『神様』がいる。


『神様』と初めて会ったのは5歳のとき。


『お父さん』と『お母さん』のお墓の前。


その日は雨が激しく降っていた。




ただの交通事故。

『お父さん』と『お母さん』と幼馴染の『ミカちゃん』と『僕』を載せた車が事故に巻き込まれた。

『僕』を除いた『人間』はみんな死んでしまったらしい。

ねずみの国を目指した道中、後部座席で眠っていた『僕』は起きたら病院のベッドの上にいた。

『親戚の叔父さん』から『お父さん』と『お母さん』のことを聞かされた。

そのときは良くわからなかった。

お墓の前に連れて来られたとき、何となくもう二度と『お父さん』と『お母さん』に会えないことを理解した。

涙は出なかった。

『人間』は悲しすぎると涙は出なくなるのかもしれない。




ただただお墓を見つめる『僕』のそばにやってきたのが『神様』だ。


『神様』は言った。


「私がきい君を幸せにしてあげよう」




どうやら『僕』はいらない子らしい。

『親戚の叔父さん』達は、誰が『僕』を引き取るか話し合っている。

『僕』がその様子を見ていることに気づくと、眉間にシワを寄せて舌打ちした。

『僕』は『お父さん』と『お母さん』だけでなく、居場所をも失ったことを理解した。

涙は出なかった。




『神様』がひょっこり現れた。


「ちっとも幸せじゃない」


『僕』は『神様』に苦情を言う。


「どうしてほしいの?」


『神様』は『僕』に問いかける。



次の日、『僕』に『家族』ができた。


その日から『神様』は『僕』のそばにいる。




『僕』はテレビゲームがほしいと『神様』にお願いした。


「……こういうのも幸せなのかなあ」


翌日の夕方、渋々といった表情で『神様』はゲームをくれた。


ゲームをずっとやっていたら、『神様』に取り上げられた。


一日一時間。それが『神様』と『僕』の新しい約束になった。




『僕』は頭が良くなりたいと『神様』にお願いした。


『神様』は参考書を持ってきた。


「わからないところ教えてあげるから、筆記用具を早く出しなさい」


なんか違う。もっと手っ取り早く頭が良くなりたかった。


それを伝えたら、怒られた。


一生懸命努力している人への冒涜らしい。


半年後、僕はクラスでも成績上位に入るくらい頭が良くなった。




『僕』は『彼女』がほしいと『神様』にお願いした。


好みのタイプを事細かく聞かれた。


次の日、『彼女』ができた。


歩道を歩くときは、道路側を歩かなければいけない。


お金を払うときは、『僕』が全額払わなければならない。


格好は小奇麗にしないといけない。


『神様』と『僕』の約束が一気に増えた。


何故かと聞いたら、『紳士』の嗜みであり、『彼氏』の常識と言われた。




『僕』はいい会社に就職したいと『神様』にお願いした。


面接の練習が始まった。


『僕』は悟った。


頭が良くなりたいと願ったときと同じパターンだと。


こうなると、『神様』は意地でも言うことを聞いてくれない。


『僕』は必死に『神様』の試練に耐えた。


その介あってか、一年後、それなりの会社に就職できた。




『僕』は『神様』からそろそろ結婚すべきじゃないかと言われた。


「独身を謳歌したい」


そう答えたら、『僕』は『神様』に殴られた。


それはもうしこたま殴られた。


「結婚するから。結婚するから」


翌日、『僕』は腫れた顔で役所に届けを出して、新しい『家族』を作ることになった。




『僕』は『子供』がほしいと『神様』にお願いした。


『神様』は優しい笑みを浮かべ、頷いてくれた。


10ヶ月後、『僕』の『息子』が生まれた。




季節は幾度も巡り、『僕』を取り巻く環境も移りゆく。

『僕』にも3人目の『子供』が生まれて、5人『家族』となった。

気づくと『僕』は『お父さん』の、『お母さん』の年齢を超えていた。

当時の彼らも、子供だった『僕』が考えていたほど『大人』ではなかったのかもしれない。

そう思えるようになる頃、『神様』が病気になった。




『僕』はもっとそばにいてほしいと『神様』にお願いした。


「きい君を幸せにできたかな?」


『神様』は『僕』に質問する。


「幸せじゃないから、まだ幸せじゃないから。だからそばにいてよ」


『神様』は苦笑した。


「わかったわかった。


 私がかかった病気は見えなくなる病気なの。


 いなくなるわけじゃないからね。


 私はきい君のそばにずっといるよ」


三日後、『神様』の姿は『僕』の目には映らなくなってしまった。


『僕』は泣いた。




それからは大変だった。

今までやっていた仕事に加えて、子供の面倒に、洗濯、料理に掃除。

今まで『神様』に如何に頼っていたかを実感させられた。

自分の時間を作ることもできず、ただただ目の前の対処をしているだけで時は過ぎていった。




『神様』がいた時間と同じくらい、『神様』がいない時間が過ぎた頃。

『僕』は体を動かすことも難しくなっていた。

その『僕』の眼の前に、再び『神様』が現れた。


「きい君。頑張ったね」


微笑む『神様』


彼女の笑顔は出会ったときの幼い顔でもあり、別れたときの大人の顔でもあった。


「本当に大変だったよ」


「あははは。さすがきい君だ」


『僕』が皺くちゃの顔で苦情をいうと、神様は声に出して笑っていた。




「幸せだった?」


『神様』は『僕』の手を取る。


「……何を今更」


『僕』は『神様』の手を握り返した。






『僕』のそばには『神様』がいる。


『神様』と初めて会ったのは5歳のとき。


『お父さん』と『お母さん』のお墓の前。


その日は雨が激しく降っていた。



ただただお墓を見つめる『僕』のそばに『神様』はやってきた。


「私の名前ね。逆から読むと神になるの。


だから私は『神様』。


偉いんだよ。


なんでも願い事を叶えられるんだ。


だから、私がきい君を幸せにしてあげよう」



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― 新着の感想 ―
[良い点] 「独身を謳歌したい」と言った僕に、神様が怒ってしこたま殴るシーンが好きです。 暴力は良くないんですが、そっくりな結婚のエピソードをリアル友達から聞きまして。 ああ、女心だなあと。 [一言]…
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