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a.2

それから、毎週火曜日はその女の子と会うことになった。会うといってもカウンター業務があるし、誰も来ないときはどちらも本を読んでいる。図書室で堂々とお喋りというのも憚られた。交わす言葉は決して多くはなかった。

放課後は、時たまその子が図書室に現れた。僕は毎日、下校時刻まで図書室にいたので、その子が来る日は必ず会うこととなった。そんな日は、初めての委員会の日のように、校門まで話をしながら帰った。今はどんな本を読んでいるのか。前に好きだった本は何か。内容は専らそのようなものだった。

貸し出しカードを受け取っても、放課後の図書室通いは止めなかった。読書に加えて、友達と共通の趣味を話すことも楽しみだった。


あまりに図書室に通うので、司書の先生とも早々に仲良くなった。放課後に上級生の委員がいないときは、カウンターを任されることもあった。半年も経った頃には、図書室の小さな主としてその地位を獲得していた。


10月に再度、委員会決めが行われた。この学校の委員会は任期が半年なのである。委員会を変わる人も、そうでない人もいた。僕は変わるはずもなかった。他の希望者は前と変わらずいなかったので、特にじゃんけんという戦闘もないまま残留した。

後期初の委員会にて、担当曜日が決まった。僕は相変わらず何時でも構わなかったので、他の人の都合に合わせた。

今度の担当は金曜日になった。見渡すと、その子は水曜日になったようだった。昼休みに会えなくなると少し落ち込んだが、昼はお喋りもしていなかったので、問題も無さそうだった。放課後に会えたらまた話そうと思った。


それから半年は、金曜日のカウンターに座った。今回のペアはひとつ上の女子生徒で、赤い眼鏡が特徴的な、気さくな人だった。僕が転入生だと分かると、過去に学校で起きたことを面白おかしく語ってくれた。話上手だったので、その内容が本当かどうか、誇張されているのか否かは気にならなかった。僕はけらけらと笑いながら耳を傾けた。


放課後にすることは、読書、たまに来るカウンター業務の他に、司書の生活のお手伝いが加わった。大したことはしなかったが、司書の先生との会話が増えた。僕が好きそうな本も紹介してもらった。先生のお薦めは、読んでみると確かに面白かった。


例の女の子は、放課後に図書室を訪れる頻度が増した。当番の曜日は変わったが、話す機会は寧ろ増えることになった。お喋りには、本だけでなく、日常のこともよく顔を出すようになった。学級での出来事、家族の話、そんなものが話題となった。

ある日、1/2成人式の話になった。一週間後の授業参観日に行われ、将来の夢を発表するのだ。その子は学校の先生になりたいと言った。僕は図書館で働きたいのだと返した。

「司書の先生に憧れたんでしょ」

顔を覗きこんでそう言われた。

「そうだけど」

ぶっきらぼうに答えた。何だか恥ずかしかった。

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