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a.1

「お父さんの仕事の都合で転入してきました。よろしくお願いします。」

僕は小学校の四年生で通う学校を変わることとなった。転勤の多い職ではなかったが、異動の際は遠くに行くことが多かった。今回もその事例のひとつだった。


この学校のクラス替えは、奇数学年への進級時に行われていた。つまり新たに入ったこの四年時クラスは、既に仲良しのグループが固まってしまっていた。いじめられることはなかったが同時に、既存グループの新たなメンバーとして迎えられることもなかった。静かな孤独に在った。

昼休みと放課後は図書室へ赴いた。一日中でも読書に耽っていられるくらい本が好きだった僕は、図書室が学校で最も落ち着く場所になった。

委員会決めの席で、僕は図書委員に立候補した。前の学校では人気の役と噂されていたので意気込んでいたのだが、他に手が上がることはなかった。僕はようやく、居場所を手に入れた心地がした。


初めての委員会活動日で、僕のカウンター担当が火曜日に決まった。昼休みにカウンターで、本の貸し出しと返却の作業を行う仕事だ。部活にも入らなかったし、曜日はいつでもよかった。ペアになったのは、隣の教室の女の子だった。

「よろしく」

とだけ挨拶すると、

「よろしくね」

とだけ返ってきた。大人しそうな、長い黒髪がとても綺麗な人だった。

委員会が終わると皆部活へ走った。僕はいつものように書架から本を抜き、下校時刻までの時間を潰した。借りて家で読めば早く帰ることもできたのだが、転入してあまり経っていなかったので、貸し出しカードを貰っていなかった。

委員会は長くかかったので、直ぐに下校のチャイムがなったので、僕は渋々本を畳んだ。良いところだったのに。ふと目を上げると、隣の書架に本をなおす人影があった。例の女子生徒だった。戻した本は、どうやらこの間まで僕が読んでいた本のようだった。

「それ、面白いよね」思わず声をかけていた。

その子は少し驚いて、それから弾んだ声で、

「うん。すごく面白い!」

と言った。目が爛々と輝いていた。


早く図書室を出ないと司書の先生を困らせてしまうので、長話はできなかったが、校門を出るまではお喋りをしながら歩いた。静かそうなイメージだったし、後から実際そうであると分かったのだが、本の話をするときは別のようだった。お互いに良い友達になれそうだと感じた。この学校で初めての友達だった。

その日は何故かよく眠れなかった。


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