共謀共同正犯
煙が高く上っていった。
「まさか、ーーーんてねぇ」
「知らなかったわぁ」
「ーーーさえーーーーければ、」
人というのは勝手なもので、こうすればいいああすればよかったと、この期に及んでも他人のことをぐちゃぐちゃ、ぐちゃぐちゃ。空へと旅立つ彼女達に最期の賛辞を送ってやればいいのにと、柊は独りごちた。
「柊くんも哀しいでしょう」
親友二人がまさか恋人同士で、しかも死んでしまうなんて、ねぇ。
二人の遠縁の親戚か何かだろう。曖昧な笑みでそうですねと答えれば満足げに言葉を継ぎ足してくるから、今はショックで上手くお話出来ないのでと残念そうな表情を浮かべる。
「まぁそれも当然よね」
元気出して、ありきたりな言葉。そう思っているなら一人にしてくれと息を吐いた。
目を閉じる。脳裏に閃くのは、さゆりと菖蒲が指を絡めながら万もの百合のベッドに眠っていたところ。二人きりのハネムーン。
あんなに綺麗な女性達を、柊は人生で一度も見たことがなかった。
(……一人にされちまったなぁ)
ずっと植物三人組と呼ばれてきた。何年来続いた関係か。寂しくないといえば嘘になる。
だがあんなに美しい寝顔を見て誰が彼女達を責められるだろうか。
(自殺、ね)
政経学部一回生の柊は法には詳しくない。だがサークルの法学部の先輩に聞いた話がこんなところで蘇る。自殺は本当は罪だけれど、それを責める相手がいないから罰せられないだけなのだと。それでは二人は罪人なのだろうか。
二人だけの世界へと旅立っていった彼女達は、何の咎を、何の罪を背負って旅立ったのだろうか。
(自殺……教唆、だっけ?)
百合の花で寝たらいい。
現での苦しみを、夢での幸せを。二人のそんな状況と覚悟を知ってそう提案したのは柊だ。
もし彼女達に罪があり、この世が責める相手が柊しかいないならば、それはそれでもいいような気がした。
(もっと、しっくりくるのは)
共謀共同正犯。
二人を殺した犯罪者に、柊も含まれるのだから。
ここで二人を幸せにすることが出来なかった柊も、二人の咎を背負うのだから。
真っ白な骨を拾う。
(俺が背負った咎は)
せめて最期だけでも。
穢れなき幸せで、二人を包めたのでしょうか。