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冬のホットドクター

作者: omi

雪道を歩くときは気をつけよう。そんな思い出。

 「パンが無ければケーキを食べればいいのよ♪」


 なんてほざいたマリー・アントワネットのごとく、


 「雪が降ったら除雪車を出動させればいいのよ♪」


などと考える日本海側ド田舎育ちのワタクシ。冬季、都会の方が何故タイヤチェーンを常備しないのか、不思議でたまりません。えっ!?だっていつ何時、チェーン規制になるかわかんないじゃん!?冬季限定ビールとか生チョコがコンビニに並んだら、勿論タイヤは冬仕様だよね!?


 そんなド田舎者の冬基準は置いといて。


 むかーしむかしのことじゃったー……。

 まだ私がピッチピチと言ってまかり通る年頃だった、本当に遠い昔。


 当時、あなごやカキで有名な某地方都市に住んでいたのだけれど、前夜に積もった雪がシャーベット状になって、非常に滑りやすい状況だった。その頃は何しろピッチピチだったもんだから、合理性よりオシャレ心を優先させた靴を履いてて、ギャグマンガの如く見事に滑ってドシーン!!(『コロン』なんてぬるいコケかたじゃなかった)向こう脛を強打し、通りかかった中坊に起こしてもらうという生き恥をかいた。


 パ、パパパパンツ見られたっ!


なんて乙女的な恥じらいより、向こう脛がとにかく痛いので会社に遅刻の連絡を入れ、近くの病院へ向かい診察してもらうと、お医者様の目がランランと輝いている。心なしか鼻息も荒いような気がする。


 まぁっ、せくしーだいなまいつなアタクシの魅力にクラクラですか!?ドクター!


などとプラス思考でロウテンションを持ち上げようとしてたら、ドクターが叫んできた。


 「この症状はわかります!私、知ってるんです!よく知ってます!!

 




 これはこれはこれは関取が練習中によくやるケガと同じです!!」




 「関取の練習中のケガがどんな状況でできるか」について松○修造レベルの熱弁をふるうドクターに対峙し、ピッチピチ(まだ言う)であるはずなのに、例えが「関取」な私は呆然とするしかなかった。

 「そのケガ、関取」と評されたピッチピチ(まだまだ言う)だった私が、意識を遠のかせながら聞き取った話によれば、こちとら知ったこっちゃねーが、ドクターは相撲部屋の練習を見学するくらい相撲好きだったらしい。まぁ、そんなわけで相撲オタクが心トキめかす関取症状にブチ当たったもんだから、ドクターのテンション、上がる上がる。

 

 「関取がぶつかり稽古をしたとき、すごい衝撃なんですよ!土俵に足をついたらひどい打ち身になって、血が患部に溜まってですね!」

 

 目の前の患者が、外に積もる雪より冷たい視線を送ってることなんて、眼中にありゃしない。


 所々、相撲に例えられながらしてくれた説明によれば、とにかく関取並みに酷い打ち身であるらしい。

 それで患部に血液が溜まり、ブヨッとなっているらしい。

 湿布を貼るだけでは治りが遅いので、ドクターとしては患部を切って血液を抜き取り、経過を見たいらしい。


 私は医療素人なんで、細かいところは忘れちゃったんだけど(なにしろ遠い昔だから)こんなことをやっぱり鼻息荒く語ってきたわけだ、その相撲オタクのドクターは。


 ただ残念なことに、実際の治療を受けてないこの段階で、私内ドクター評価「レベル・ヤブ」に番付決定済みだったもんだから

 



 「イヤです!!( ̄□ ̄♯)」



 負けてたまるか、オタクの提案真っ向拒否。

 あんたにメスを握らせるつもりは毛頭ねぇよ!!

 ドクターは食い下がってくるけど、既に心がささくれた「例え・関取」の私だって譲らない。


医「それでは完治が遅くなります!ここはやはり切開して!」


私「遅くて問題全くありませんから!切るのイヤです!」


医「いや、しかし!これは関取がですね!早く治すために血を抜いて!!」


私「湿布で地道に治します!!何ヶ月かかろうが湿布で結構です!!」


医「ですが関取はこんなとき!」


私「なんでそこまで切りたがるんですか!それ以外ないってわけでもないでしょ!?とにかく湿布!湿布で結構!!」



 このドクター、本当にすごく興奮しててしつこかったけど、どうにか寄り切り湿布を貰って会社に行った。


 わかってんのか、このヤブめ。

 この診察中、あんたの使用率ナンバー1単語は「関取」なんだよ!

 そしてこの私に「関取」って評価はシャレになってねーんだよ!!

 あげくに湿布でちゃんと治ったわ!!



 この「レベル・ヤブ」という素人判定が、間違ってなかったことが立証されるのは、また後日の話。

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