6.蒼緋姉さん
すると陽苑と蒼緋の両方が神流を見て固まった。雷に打たれたように。
「…………神流ちゃん。うちの子になる?」
「えっ?」
「こらこらこら」
必死に蒼緋を止めて、陽苑がこれからの事を指示した。
「蒼緋。神流さんに身の回りの事を教えてあげてください。日用品も揃えて、お金は聖藍のところから。近々護衛を付けます。それまでは蒼緋が彼女についていてあげてください」
「あんた、当然のように聖藍のお金を使うわね」
「別に良いでしょう。元々そういう手筈です」
とんとん拍子に話が進んでいく。
前もって来る事が分かっていたとは言え、あまりに用意がいい。
「じゃ、部屋に案内するわね。あんたはまだ仕事が残ってるでしょ、さっさと戻りなさい」
「……人を厄介者みたいに」
シッシッ。
神流を引き寄せた蒼緋が、邪魔者とばかりに陽苑を手で払う。あわあわ腕の中で狼狽える尊い命に向かって、蒼緋は微笑んだ。
「大丈夫。ここは安全よ。陽苑が言った通り、七大守護者の領域に立ち入るような侵入者はいないわ」
「しち…、?」
聞き慣れない単語である。
「明日、全員呼びます。神流さんは、一晩ゆっくり疲れを癒してください。…どうせこれから、忙しくなるので」
「あっ、ハイ…!」
やる事が山積みなのだろう。陽苑は帰ってしまった。
もしかして忙しいのに面倒を見てくれたのか…と顔に出ていたらしい。
「…ふふ。あいつの多忙はいつもの事だから」
「いつも…」
「神主だしねー。いつ神からのお告げがあるかも分からないし、普通に神職としてのお勤めもあるのよ」
「あ。なるほど」
踵を返す蒼緋が楽しげに振り返る。
「さ、こっちよ」
長い廊下を歩いていくが、ところどころ内装も和を感じた。
「ここを使って」
「…ひろい」
一人で使うには広すぎる部屋。それはそうだ、彼女は母とアパートで暮らしていた。二人で暮らすに無難な広さの。
「布団はすぐに持ってくるわ。風呂と夕飯の準備が出来たら呼ぶから、それまでくつろいでいて」
「あ、え」
客人のようなもてなしである。何か手伝う事は、と聞くが。
「神流ちゃんのお仕事は、今は休む事よ」
笑顔でそのようにはっきり言われてしまえば神流もハイ、としか言えなくて。
「心配しなくても、神流ちゃんにも役割はあるの。それが今は休息を取るってだけ」
まるで母親だ。しかし、体調を心配してくれているのは理解出来たので神流も素直に受ける事にした。
「…はい。ありがとうございます、蒼緋姉さん」
「ふふっ♡それでいーの。あとタメ口で大丈夫よ」
「うん、分かった」




