5.幼馴染
すると陽苑は笑い出した。
「ふっ、あはは!高貴な方!確かに!」
穏やかな話し方とは裏腹なその笑い方。
目に涙を溜めてまで、彼は大笑いした。
「僕達はもう、幼馴染として育ったのでそんな風には思った事ありませんね。むしろ親友で悪友みたいな」
「あ、あくゆう?」
「幼い頃はよく、みんなで悪い事をしては聖藍のお父上に怒られたものです。今ではある程度大人になりましたが、子供なんてみんな昔はそんなものでしょう?」
神流はようやく、彼らも自分と同じ存在なのだと安心した。なんだ、育った環境が違うだけなのだと。
「…陽苑…も、よく悪い事をしていたの?」
「僕と聖藍が筆頭ですね。あともう一人同い年の子がいますが、彼女もなかなかの悪戯っ子でした」
人は見かけによらないらしい。今穏やかそうなこの青年が、幼い頃は悪ガキだったとは。
「みんな、仲良いんだね」
「一緒に育ってますし、一緒に学んできた仲間ですからね」
世間話に花を咲かせている間に、今度はまた違う家屋に到着した。旅館、のようにも見えるがもうどちらなのか区別がつかない。
「ここは?」
「しばらくの間神流さんの住むところです」
「住…!?」
「信頼出来る人のところの方が僕も安心出来ますし、ここならみんなの家も近い」
「ち、ちなみにどなたの家…」
「僕と聖藍の幼馴染の、女の子の家です」
ガラッと扉を開ける。中はもう立派な旅館そのものだ。
「蒼緋!いますか!」
声を上げるとすぐさま返事が来て、若い女性が奥から出てきた。黒髪で前髪を切り揃えた、昔ながらの大和撫子のような外見。
「はいはーい、どうしたの陽苑。この時間は神殿にいるはずじゃない?」
「“神託の娘”が来たので、君にも紹介しておこうかと」
「あ!この子?やだ、可愛い!!」
イメージしていたのと違い、随分とフレンドリーである。しかも、先ほど陽苑は“悪戯っ子”だと言っていた。外見とのギャップが大きい女性だ。
「宜しくね!あたしは華平 蒼緋!」
「お、朧月 神流です…」
元気よく挨拶してくれる。ここまでぐいぐいくる友好的な人物に耐性がないので神流はたじろいだ。
「神流ちゃんね。今日来たの?」
「来たばかりですね」
陽苑が代わりに答える。
「大変だったでしょ。疲れてない?泊まるところはどうしてるの?」
「実は蒼緋のところにお願いしに来ました」
「え、ほんと!?」
「はい。他だと少々心配ですので」
「わやったー!」
まるで子供のように喜びはしゃぐ姿に、神流も一気に打ち解けた。
「ふ、不束者ですが、宜しくお願いします…!」
「!!聞いた!?陽苑!!“不束者”ですって!!律儀!!誰かさんと大違い!!」
「それ僕も含まれてます?」
「神流ちゃん、あたしの事は“お姉ちゃん”って呼んでね!?」
「しれっと何お姉さんムーブかましてるんですか。“蒼緋”で良いでしょう」
“お姉ちゃん”という呼び名の指定に少し考え…。
「…そ、“蒼緋姉さん”…?」




