22.デートのお誘い?
「中はこんな感じだ」
「広い…!」
試しに中も見てみるか、と言われ素直に扉を開ける。一人用の個室にしては広い。王族貴族の一人部屋並みの広さがある。
ここに寝泊まりする人物がそれだけ高貴な立場である事の証明らしい。
「…お姫様になったみたい」
「可愛い事言うわね」
「そんなに気に入ったなら、ここに決めるか」
「え、そんな簡単に決めていいの!?」
「別に、お前が住まなければただの空室で誰も使わないだけだ」
下見のつもりが、神流の部屋が確定した。
「どうする?今日からもう住んじゃう?」
「えっえっ。」
「…その方がいいかもな。ここなら、官邸から目と鼻の先だ。何かあった時すぐ駆け付けられる」
流れるように手続きが進む。実際のところ、コンシェルジュの黒鄭に「部屋が決まった」と伝えたのみで、神流自身は何もしていない。
部屋の名前に“神流”と表記され、正式に神流の部屋となった。
「決まるの早くないですか…?」
「迷っていつまでも決まらないよりいいわよ」
「同感だな」
七大守護者は揃って決断力も早いらしい。
官邸へ戻ると颯紫と柚樹が「もう戻ってきたんですか?」という顔で聖藍を見た。
「…官邸内と、庭、別邸まで行ってきた」
「いやいや、別邸まで行くんならいっそ全部案内してやれよ」
「それじゃさすがに…」
呆れた颯紫。遠くで柚樹がため息を吐いている。
どういう事だろう。
「……最近仕事詰めだったの」
「…え?」
「神流ちゃんが来たから、あえて聖藍に案内をさせて仕事から離したくてね」
「………」
明日の分の前倒しだと言っていたが、もしかして。
「…あ、あの!」
聖藍の袖をきゅ、と掴む。聖藍だけでなく周り全員が目を見開いた。
「……私、この世界の事もっと知りたい!…から、案内して、くれないかな…!?」
蒼緋は口を手で覆った。紫穂は目を潤ませ感動している。
颯紫は口笛を吹き、柚樹は小さく拍手をした。
「そうだな、聖藍は今日一日神流様の案内役という事で!」
「急ぎの仕事もありませんし(二回目)」
「周囲の警戒はお任せください」
「そうと決まれば、早速準備しましょう!」
「おい?」
趣旨が変わった。
急遽、聖藍と神流の街の散策となり、それならばと蒼緋が気合いを入れたのだ。その理由が。
「せっかく聖藍と街を回るんだから、とびっきりお洒落しないと!!」
いやなぜだ。
「???」
「髪飾りはこっち。ちょっとお化粧もしましょうか」
「あの、」
「あ、動かないで」
「ハイ…」
シャランと綺麗な石が付いた髪飾りと控えめだが存在感のある耳飾り。
髪もかわゆくアレンジして、ほんのりと口紅をつけて。
「あたし達はちゃんと遠くから警護してるから、神流ちゃんは気にせず聖藍と楽しんで」
「……?」
ふふ、と笑う蒼緋はなんだか楽しそうだ。




