20.老獪の奴ら
二人の光景を背後から見守っている二人は、こっそりと会話していた。
「……良い雰囲気じゃない」
「聖藍様も打ち解けたようですね…」
「朔羅はまだ厳しそうだけど…」
「あやつは頑固ですから」
「……これから、神流ちゃんも大変になるから今はゆっくりしてほしいんだけど」
「…いつまでも、このままという訳には…」
「……そうなのよね…」
歴史上の“神託の娘”がどうなってきたのかを、彼女達は記録だけでなく伝承にて知っている。戦争に巻き込まれた事も一部伝えられてはいるが…。
「……あたし、神流ちゃんには幸せになってほしいのよ」
「……自分もです。神流様は、誰よりも幸せになるべきです」
静かな決意。他の誰かに言われたとかではなく、心からそう願って。
「老獪の奴らには気を付けろ」
官邸内の花園から出る間際、聖藍はそんな事を言った。
「ろうかい…。朔羅さん達も何か言ってた」
「少し厄介な連中だ」
「…そんなに」
その言い方から、心底神流と関わらせたくないのがはっきりと伝わってくる。
「紫穂がついていれば近付く者もいないだろうが、それでも図々しく接触してくる奴はいる。“神託の娘”に対して、差別的な思考を持つ集まりなんだ」
「七大守護者のみんなが言っても、駄目なの?」
「無駄に権力を保持してる。どうにかしようとしているが、中々ボロを出さなくてな」
相当困っているようだ。
「あっ聖藍様!」
「聖藍様だ!」
別宅までの道のりで、すれ違う子供が聖藍に挨拶する。
それに笑顔で応え、慕われているのがよく分かる。
「聖藍様ー。この人はー?」
「“神託の娘”の神流様だ。ほら、ご挨拶しなさい」
「カンナ様ー!」
「カンナ様こんにちわー!」
「こんにちわ」
腰を折って挨拶すれば子供達もそれに応えてくれる。可愛い子供達だ。
「おや聖藍様。そちらのお嬢さんは?」
そこへ、老人が子供達に混ざって乱入してきた。その視線に直感的に神流は嫌な予感がして咄嗟に聖藍の後ろへ。
「…“神託の娘”、神流様という」
「……ほう。“神託の娘”」
小声で聖藍が「老獪の者だ」と言った。案の定である。神流のすぐ後ろに紫穂と蒼緋も待機しており、いつでも出れる姿勢を取った。
「“神託の娘”が来られたと、我らは知らされておりませんが?」
「先日来たばかりだ。まずはここの環境に慣れる事を優先させている。突然見知らぬ世界に来て、体調を崩されては敵わない」
聖藍の説明に、老獪は納得していないようだ。
「しかるべき時に集会を開く。それまで待つように」
「…承知いたしました」




