13.神託の娘
誇らしげに言う彼女は、確かに自分の立場に誇りを持っていた。
「きっと、私なんかよりずっと頭が良いんですね」
これは謙遜や卑屈でもなく純粋な気持ち。
尊敬の念を込めてそう言うと、朔羅がピクっと止まった。
「…朔羅さん?」
「…な、なんでもない。ほら、次は“神託の娘”!」
ドンッと置いた書物。
誤魔化してはいるが、蒼緋は気付いていた。朔羅の耳が、赤らんでいる。
(あ、ちょっと照れてる)
気付いてはいても、それを口にしないのが大人である。
「何百年、何千年かに一度、神が遣わす一族繁栄の象徴。それを、私達は“神託の娘”と呼んでるの」
先ほどと同様に開いたページのとある文章を指差す。
そこには、“神託の娘”についての記述があった。
「“神託の娘”は、必ず満月の日に現れる。そして現れる時は、まず神職にその事を伝えて備えさせるのよ」
「…あ…」
そういえば、初めて出会った時、陽苑がそのような事を言っていた。「神からお告げを受け…」と。
「一族繁栄の象徴たる“神託の娘”は、経済的、社会的、文化的に国全体を発展させる力を持つ。そのせいで国同士の争いに巻き込まれる事もあるから、“神託の娘”を護る為に私達七大守護者がいるの」
つまり、奪い合い。
自国に引き込めば、一族繁栄に繋がるから。
“神託の娘”が現れた時代、戦争が起きた事も一度や二度ではないらしい。
「聖藍様が『常に誰かと共に居ろ』と言ったのはそういう意味よ。貴女は狙われる存在。単独行動は控えろとね」
「でもそれじゃあ神流ちゃんは自由がまるっきりないわ」
「そもそも“神託の娘”に自由なんてないのよ。私達だってそう」
冷ややかにそう言い放つ。
蒼緋はため息を吐いて、「そうね…」と続けた。
「…確かに、神によって運命を決められているのは自由とは言い難い。だけど、それは“自由がない”とは違うわ」
「……何が言いたいの」
「じゃあ聞くけど、朔羅は今の生き方に“自由がない”と思ってるの?聖藍に七大守護者へ推薦されたのも、強制だった?」
すると朔羅は突如憤慨した。
声を荒げて反論する。
「そんな事ない!兄様は私の能力を認めてくれた!親にだって認めてもらえなかった私を、兄様が手を差し伸べて救ってくれたの!だから七大守護者としての立場も自分で選んでるし誇りに思ってる!」
淡々とした喋り方から一転、感情的な言葉が次から次へと出てくる。
「……ほんと、朔羅は聖藍大好きよね」
「…兄様を嫌う人なんて老獪のジジイ共くらいよ」
「それはそう」




