【会議2日目、夜――占い師の推理】
さあ、今夜も今夜とて、パミーナをさっさと追い出したあと、私は占いをするための儀式に臨む。その前に……これまでの状況を整理しましょう。
何せ、昨日は「ベンヤミンを占う」と決めていた。けれど、今日は違う。私は宣言通り、人狼だと思う人を占う必要がある。それぞれの人たちについて、印象を考えていきましょうか。
まずは、潔白だと確実にわかっている人たち。私が占ったベンヤミン、“聖なる子供”の片割れのエラ。そして、人狼に襲撃されたクララ、ベラの2人。
オスヴァルトは、まあ今すぐ占うべき人でないことは確かね。“大司祭ズィリック”の代理人――聖職者として名乗り出ている。人狼を敵とみなすギーマ教の牧師だし、まあ人狼であると考えるのはあまりに不自然でしょう。会議でもかなりの発言力を持っているけど、ベンヤミンと違って流れを作っているわけではない。宗教的な知識を与えたり、他の強い発言をする人程度の意見を言う。でもまあ、重要な立ち位置にいることは間違いないわ。
順番通りに行くと、次はサマンサね。サマンサもギーマ教のシスター。まあ人狼であるとは考えにくいでしょう。発言もそれほど多くないけど、会議の進行について意見していることが多いわね。正直、彼女の正体に関しては思うところがあるけれども……それを踏まえても、占うべきではないわ。
エルザもまあ、人狼であると考える必要はないと思うわ。あんなにも人狼を憎んでいるのだもの。カレンと喧嘩するくらい。
リサは……正直、あまり印象が強くないわね。どうしてかしら。多くないとはいえ、それなりに話していると思うのだけれど。そういえば今日、ルイスに促されて初めに話したのは彼女ね。「何を考察すればいいかわからない」……だったかしら。まだ、人狼なのか村人なのか、判断するための材料が足りないわ。今後はもう少し注目しなきゃ。
ロナルドといえば、自作の防具についての発言が初日からみられたわ。疑問形が多いけど、核心を突くようなこともたまに言っている印象だわ。しっかりと人狼に対抗する気でいるみたいだから、村人よりに見えるわね。まあ、演技である可能性はゼロではないけど。
ギルベルトは……体格だけ見れば、正直ちょっと怖いわね……。強いことは間違いないし。それほど目立って強い意見を言ってもいない。気になる人ではあるわ。今夜の占い候補の1人かもしれないわね。
次は、ヒューベルト。誰かの痛いところを突くようなことを言うことがたまにあるわね。あとは、初めの意見を聞くと、どうも多方面になんとなく攻撃をしている感じがする。そこはちょっと気になるかも。基本的には真っ当なことを言っているように聞こえるけど……。
そして、レオン。たまに口を開くと、“五英傑”の代理人の話をよくする印象。それから、投票方式についてもマイケと言い合っていたわね。村に貢献している感じはするけど、比較的、人狼を探す方向には向いていないかもしれないわ。
次はアントン。ものすごく目立つわけではないけれど、要所要所で色々と意見を言っているわ。私や“五英傑”の代理人も一旦疑う姿勢を見せたわ。それ自体はおかしいことではない。むしろ用心深いことは印象が良いわ。会議が止まったときに先陣を切る人間の1人でもあるし、会議にある程度貢献していることは間違いないわ。今のところ人狼には見えないかも。
エラとベラの双子を飛ばせば、次はティラ、2人の母親ね。あまり会議に積極的に参加はしていなかったわね。特に今日、ベラが襲撃されてからは。人狼とは考えにくいから占い候補とは言えないわ。
それから、イレーネ。イレーネも……今のところ、それほど気になりはしないわね。寡黙なわけでも、目立つ発言をしているわけでもない。ただ、そんなに話の的にはならないわね。逆に、発言するときは誰かを……エドヴィンやエマヌエルなんかを、疑うような発言をしているわ。結構攻撃性が高い人なのかも。まだ情報が足りない。まだもう少し彼女の発言は聞いてみないと判断できないかも。
フレデリック。クララの第一発見者ね。気弱な見た目通り、意見は正直弱いわね。目立たないし、全然話さないし、誰かを疑うようなことや強い意見を言ったりしない。そういえば、パミーナが気になることを言ってたわ。もしかしたら、早めに占っておいた方がいいのかも?
ハリーは、目立たないと思わせて、結構頭が良い発言をする印象だわ。皆とはちょっと違う視点を持っていそう。まだ人間か人狼か、わかるほど明確な判断材料はないけれど、もし人間側だったとしたら、意外と心強い味方になるかもしれないわね。
ノーマンは……“人狼会議”に対する根本的な否定の意見をたくさん言うわね。露骨と言えば露骨だけど、正直人狼っぽさがないわけではないわよね。こういった類の発言は……。彼も、占い候補の1人かもしれない。
そして、マイケ。“人狼会議”経験者と言っていたわね。投票方式について、独特の理由で、つまり村人たちの感情を根拠に、意見を言っていたわ。直感でしかないけれど、人狼であるとは思えないのよね。ただ、どこか得体が知れないのは、どうしてかしら。
エマヌエル。彼はフレデリックと少し似ているわ。誰に対しても疑うようなことを言わなくて、むしろ「皆疑いたくない」ってスタンスを取っていたわね。今日もカレンを処刑することに難色を示して、ルイスに咎められていたわ。ちょっと、博愛主義に振り切っていて、わざとらしいと言えばわざとらしいかも。誰とも敵対しないようにしてるというか。
ターニャは……カレンの発言のせいで、明らかな人狼の味方をする人をかばい続ける人になっていたわ。村の味方として適切ではないけど、私もパミーナがああいうことを言ったら……いや、私は占い師としてああいう発言をするわけにはいかない。けど、気持ちがわからないわけでもない……ちょっと保留で。
次はユリアだけど……「敬虔なギーマ教徒」という印象が強い。けれど……どうしてかしら、なんだか違和感があるのよね……。もしかして、今日の昼の彼女の様子が気になってるのかしら。それから会議のとき。カレンの発言を否定する彼女の様子が、どうにも単なる敬虔なギーマ教信者では終わらない何かを感じた。ううん……。
イェフは、最年少だからか、全然話さないわね。ちょっと材料がなさすぎるわ。ドミニクも似たようなものね。この2人は今占っても仕方ないわ。
次は……ああ、ヴィンフリートね。彼はかなり目立ってるわね。ヘイトも溜めてるみたいだし。どうも信用できないんだけど……占ってもいいけど、もう少し後がいいかも……。というか、彼がもし人狼だったら、占うまでもなく見破れそうだし、なんだかすぐ処刑されそうな予感がするのよね……。
それから、ルイスも。おんなじ感じかも。初日の会議に全然話さなかったのに2日目で突然、「喋らない奴が問題」なんてまくしたてるし、会議以外でも、村人たちに嫌われてるみたいだし。人狼でも人狼じゃなくても、近い内に処刑されるような気がするわ。
パミーナを除けば、こんなものかしら。パミーナはまあ、占うつもりはないけど。もう少し会議中に発言させた方が安全かもしれない、くらいかしらね。さて……この中から1人選んで占わないといけないわけだけれども。どうしましょうね。あからさまに怪しいわけでも、人間とみて問題ない人でも、全く判断材料がない人でもない人物……。
私は、少し考えて、1人を選んだ。
昨日と同じように、占いの儀式を行う。時空の精霊ラウムツァイトを呼び出し、呪文を唱え、答えを聞く。
……占いは成功だ。きっと、明日の会議は大きく動くことになるだろう。