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消えたカツ丼事件

いつも賑わっている探偵事務所にいるのは一人の探偵。

その名は「へっぽこ探偵」

ありとあらゆる事件をハチャメチャに解決する。

探偵物の漫画や映画に影響されて探偵になったため、たまに台詞を真似しているときがある。

へっぽこだけど頑張っている無邪気な探偵。

とある町の交番で一件の事件が起こった。

その時に勤務をしていた警察官の田辺巡査が夜勤中の腹ごしらえと近所の定食屋で買っていたカツ丼がほんの数分目を離した隙に突然と消えたのだった。

「これは立派な窃盗事件だ!」

田辺巡査は大袈裟に騒ぎ立て、犯人を捕まえるべく動き出そうとしたが、カツ丼の一つ二つなくなっただけでは本格的な捜査は期待できない。

そこで彼は近所で有名な〝へっぽこ探偵〟に助けを求めることにした。


「今日も平和だな…」

ペットボトルに入った果汁百パーセントのオレンジジュースを一口飲んだ。

探偵事務所は珍しく穏やかでのんびりとした雰囲気が漂っていた。

外からは子供の遊び声が聞こえており、へっぽこ探偵は目を閉じて優雅な気持ちになっていた。

眠気が探偵を襲った瞬間、探偵事務所の扉が勢いよく開いた。

「探偵さん、どうか俺のカツ丼を取り戻してくれ!」

探偵は驚いた勢いで椅子から転がり落ちており、腰を抑えながら立ち上がった。

「いたた…カツ丼?」

田辺巡査の真剣な顔を見るや否や探偵はやる気のない表情で首を傾げた。

「俺のカツ丼が盗まれてんです!」

今にも泣きそうな田辺巡査は探偵の手を強く握った。

「カツ丼一つでそんな騒ぐ?まあいいや、カツ丼を奢ってくれるなら協力するよ」

こうして、事件はへっぽこ探偵の手に委ねられることになった。

まず、探偵はカツ丼が消えたという交番に向かい、増強を詳しく聞くことにした。

田辺巡査によると、報告書を書いているときに小腹が空きカツ丼を机の上に置いたが、突然電話が鳴り、別室に移動した。その間わずか五分程度だったという。

「戻ってきたら、カツ丼が跡形もなく消えていたんだ!」

探偵は虫眼鏡を取り出し、机の周りをくまなく調べたが、目立った手掛かりは見つからなかった。

しかし、机の横に置いてあるゴミ箱を覗いてみると一部が破られた割り箸袋が捨てられているのを発見する。

「おや、これは?」

さらに机の下にはカツ丼の蓋と思われる破片が落ちていた。

「ほかに誰かいましたか?」

「俺以外は誰もいない…と思う。あ、でもさっき近所の猫が窓の外をウロウロしてたくらいかな」

田辺巡査の言葉に探偵はピンとくるものがあった。

交番の近くには野良猫が多く住み着いており、特に一匹の黒猫が頻繁に田辺巡査に餌をねだり来ていたという。

「その黒猫がカツ丼を狙ったんじゃないんですか?」

探偵は交番の周辺を調べ、猫の足跡を発見した。

足跡は窓際から机の方向へ続き、途中で途切れていた。

しかし、カツ丼のような重い物を猫が持ち去るのは現実的ではない。

「猫が手を貸した…という可能性もあるな」

探偵は右手を顎に添えて、新たな容疑者の可能性を考えた。

さらに調査を進めると、田辺巡査の他にも同僚である中村巡査がその時間帯に交番を出入りしていたことが判明する。

探偵は中村巡査を一室に呼び出し、質問をした。

「中村巡査、あなたは田辺巡査のカツ丼が盗まれた時間帯に交番にいましたよね。あなたが田辺巡査のカツ丼を食べたんじゃないんですか?」

探偵が問い詰めると中村巡査は困った顔で言い訳を始めた。

「いやいや、僕は犯人じゃないですよ!ただ、交番に猫が入っていくのを見たからそれを追いかけただけです!」

必死に弁解する中村巡査に近づき、落ち着いた声で探偵は言う。

「では、どうして中村巡査の制服からソースの匂いがするんですか!」

漫画で見た台詞を探偵は使った。

「それは…」

俯く中村巡査の肩に手を置く。

「きっと素直に話したら、田辺巡査は許してくれると思いますよ」

「…わかりました」

中村巡査は机の中からレシートを取り出した。

それは近所のスーパーで購入された弁当のものだった。

田辺巡査はそのレシートを見て事の顛末を整理し始めた。

「つまりこうだな。中村、お前はスーパーで弁当を買ったものの、カツ丼の誘惑に負けて俺のカツ丼に手を伸ばした…」

中村巡査は顔を真っ赤にして罪を認めた。

「ごめんなさい!一時の気の迷いだったんだ!」

探偵は二人の顔を交互に見て肩を撫でおろした。

「まあ、事件解決ですね。次からはちゃんと自分で買うんですよ?」

「はい…」

身を縮めながら下を向く。

その後、田辺巡査はカツ丼を食べられなかった悔しさを胸に、次はもっと美味しいラーメンを食べると言いながら笑って許した。

一方、中村巡査は猫を横に反省の意思を見せ、探偵にも謝罪した。

「不審者とかじゃなくてよかったですね!」

探偵は笑いながら交番を後にした。

帰っている途中、探偵はカフェに寄ることにする。

そこは普段から探偵が愛用している「カフェ・ルース」

カウンターに座り、マスターに今日の出来事を話す。

「今日は君のミスはなかったんだね」

マスターはグラスを拭きながら驚いた表情をした。

「それどういう事ですか!」

静寂だったカフェに笑い声が響いた。

これからへっぽこ探偵が活躍する姿を読者の方々にお届けしたいです!

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