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ヘレン女神化法案可決

9月21日。アシタカ公国はヘレン女神化法案を可決した。日本で知られていないのは地獄の酷暑が元凶だ。名古屋に常駐するエージェントが怒涛のごとく呑み込まれ、いまだに入院中。後任者を赴任させたのがお盆明け。すると今度は[梅雨もどき]の洗礼を受け、体調不良に見舞われた。異世界で名古屋は魔法戦士を輩出した聖地として知られていたが、当時から未開の地だと恐れられてきた。特に近年は地獄の酷暑で毎年必ず死傷者が出ることからエージェントのなり手がいない。幸いにも死者は出ていないが、精神に異常をきたした者も数知れない、梅雨もどきはお盆明けに発生するが、2度めの夏の到来を告げる地獄からの使者として恐れられた。アシタカ公国は魔法戦士取り込みの後進国。まず後任者が入院中で名古屋に展開するエージェントが1人もいない状態。次にマザーの慢性的な不足。マザーは交戦国へ仮投降した魔法戦士に性的な訓練を施す両性具有の女性兵士。近年は落ち着いてきたが、いまだに仮投降を夢見る子が少なくない。でもマザーは単価が高く、アシタカ公国は貧乏国。彼女たちに高給を支払うだけの余裕がない。本来ならば魔法戦士を取り込むことで一大産業化が進み、国も庶民も潤う流れになる。でもいまだにアシタカ公国は貧困から抜け出せず、ヘレンの半数を隣国のファルカン公国から借りている状態。エリスとレイカはファルカン公国生まれ。そこでアシタカ公国の魔王さまはヘレンの女神化を思いついた。問題なのは魔法戦士の出口戦略がないこと。仮投降が売りにならない以上、ヘレンを女神化するしかない。もともとアシタカ公国は魔法戦士に不評だった。まず魔法戦士は仮投降させてもらえない。次に対戦場所の多くが森の中の広場なため冬が寒くてリタイヤ率が極めて高い。最後に名古屋に常駐するエージェントの不在。名古屋で試着会が開かれたのは6月15日が直近だからもう3カ月以上開かれていない。でも王族には大人気。その理由はお姫さまたちが恵まれていないからだ。でもそれは婚約破棄とか偽婚約のせいではない。[世話焼きババア]のせいだ。彼女たちは若い子たちのマッチングに異常なまでの執念を燃やす。だが先祖をたどれば商売人。それも露天商がダントツに多い。世話焼きババアは王族の間で[ヘルバア]と呼ばれて蛇蝎のごとく忌み嫌われた。サラたちを初めお姫さまたちが参戦した理由は仮投降だけではない。ではなぜ日本のライトノベルでヘルバアが注目を浴びないのか?本が売れないからではない。ヘルバアに魅力がないからだ。魅力のない人物を軸に据えて小説を書き始める人はいない。魅力のない人に振り回されたがる人はいない。そこには王族も庶民もない。サラたちの日常は日本人より遥かにマシだが、ライトノベル並みに下らなくてつまらないのも歴然たる事実。お姫さまたちがみんな日本のライトノベルを読むのは面白いからではない。誰が持ち込んだか不明だが、それだけ娯楽がないからだ。でもラノベは読めば読むほど下らなくてつまらない。他に娯楽もないしネットも普及しない。というか異世界側はネットを普及させない。陰湿な犯罪の温床になるからだ。でもその弊害は皆無に等しく、異世界は娯楽に乏しいくらい。下らなくてつまらないものを普及させるのはいつだって下賤な輩。王族の間ではラノベゲームが大流行している。これは自慢師ゲームから派生したもの。自分がどれだけ低次元のラノベを読んできたかを自慢し合ってマウントを取り合う。勝つか負けるかのギリギリのクロスゲーム。これは白熱した。サラたちは[王族ラノベ甲子園]にエントリーを済ませた。王族ラノベ甲子園は来年から春と夏に開催予定。秋の国体はない。王族のみの大会であり、ヘルバア以外誰でもエントリーできる。ラノベは日本のみを対象とする。ルールは自慢師ゲームを準用する。ユニークなのは必ずしもラノベを読了する必要がなく未読ですら構わない。つまりハッタリをかまし合うゲームという側面を併せ持ち、虚飾に満ちた王族社会を如実に表している。だが今の日本と違うのは王族も庶民も節度があり、民度が高いということだ。日本は民度が極めて低く、自慢師ゲームが流行るなど100パーセントあり得ない。でも異世界では日本の情報が希少にも関わらず自慢師ゲームが早くも定着。サラとルーラはとある下劣なラノベを話題に盛り上がった。「去年誰かに聞いたやつが最高だよね」「あのエルニーニョもどきね」「女の子が2カ月で学校やめて。いきなりタイトル詐欺」「その子たまたま6月にやめただけでしょ?」「理由は忘れたけどね。もったいぶって言うもんじゃないわ」「ただ60年前と比べて6月の気温が倍になって暑い暑い言うだけの話」「エルニーニョ全く関係ないじゃない。それから何が始まるの?」「汗臭い女の子の恋のから騒ぎ」「いったい誰が喜ぶの?」「それ以前に誰も読まないわ」

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