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柚子とみやびの日常

9月17日。柚子とみやびは登校した。中等部からの編入組だから居場所はない。転校の理由は親の都合ではなく[王道のアニメにハマる男の子がキモかったから]。2人は別に独自の世界観を持ちたくて持ったのではない。女流作家を志した母親たちの影響もあるが、自分たちに合う世界観が周りに皆無なだけだ。話していて楽しいのは母親とフランソワだけ。柚子は宮澤賢治ファンの担任教師との相性が微妙だが、みやびは親日的なカナダ人女性担任教師との相性がよろしくない。柚子は賢治がキライなわけではないが、どうも日本文学なるものにのめり込めなかった。彼の童話はあまりにも難解過ぎてさっぱりわからない。柚子たちは[やまなし]を暗唱させられたが何の感銘も受けなかった。みやびに至ってはもはや説明不要だろう。要は分化の捉え方の違いでしかない。彼女は何を生み出したか?ではなく自分がどう思ったか?を極めて重視した。2人は母親たちと同じく自分の感性に素直。私たちがどう感じたか?が全てであり雑音はどうでもいい。だからこそ柚子たちはふだんデカいチャンネルの動画を見ない。彼らはたいがいズルに手を染めるからだ。心霊動画で仕込みやヤラセをする輩には何も感じない。登録者の数や再生回数や知名度なんてどうでもよかった。要はマイナー好みであり王道やメジャーに与しない。母親はいまだに週刊少年ジャンプを読んだことがなく娘もいまだに読んだことがない。奈月たちは昭和末期の少女漫画やアダルトコミックを愛読したが、レディースコミックにはハマらなかった。嫁としゅうとめの陰湿極まる壮絶バトルがトラウマになったからだ。柚子たちも昭和末期の世界観に極めて近い。明るくてあけっぴろげな性体験への憧れが根強くあるが、もちろんこんな腐れ落ちたガチクズ天国に希望はない。2人はブルマー離れを自身に科した。それは間接的にではあるがヨアヒムたちから科せられたものだ。異世界へ参戦した魔法戦士はブルマーの着用が原則禁止。ブルマー離れをしないと私たちの成長が止まるからだ。魔法戦士は大好きな彼氏と敵国で対戦し、喜び勇んで空へと舞い上がる。そして上からのキックで華やかに幕を開ける。マルスに下着姿を恥じらいながらも披露するのが魔法戦士に科せられた責務。この趣旨に異を唱えた子は皆無であり、これからも出ないだろう。ブルマー離れは成長の証であり、参戦への初めの一歩。三十路の女性はミニスカートに慣れること。思春期の女の子はブルマー離れから始めないと挫折する。ふだんから準備しておかないと急には変われないからだ。幸いにも魔法戦士は現地語の習得を求められないし、事前に健康診断や面倒な手続きは不要。用意するのは濃い色の下着が数枚と指に巻くテーピング。そして訓練記録と対戦記録をつけるノートくらい。あとはヨガのエクササイズをルーティンにすれば完ぺき。マルスは職業軍人でも戦闘のプロでもない。格闘経験は皆無。格闘ゲームや戦略シミュレーションゲームをプレイできず日本語を過度に学ぶのも厳禁。なので魔法戦士が対戦前にまるはだかにされはしない。すでに異世界側は奈月と柚子に[シオン]。楓とみやびに[ニンフォ]というコンビ名を与えていた。奈月はジュール。柚子はヨアヒム。楓はミシェル。みやびはライエルが受け持つが、まだ4人には知らされない。エージェントは予備役であり、魔法戦士は交戦国に保有されてしつけられるのが通例。参戦できるのは満10歳から。上限は満39歳だが最近は40代の問い合わせが急増し、満49歳に引き上げるべしという声も上がる。異世界側が奈月たちをせっつかないのは名古屋の悪魔の残暑のせいだ。名古屋に常駐した異世界のエージェントは6月以降入院者が激増した。コロナに体調不良に熱中症に不眠。中には精神に異常をきたし幻覚や幻聴に悩まされる者も続出。いまだに名古屋が未開であることが判明。異世界側は日本への渡航を厳しく制限した。幸いにも隷花女学院の制服のスカートは長めだし、ミニスカートでの遠出は固く禁じられた。これからは痴漢の季節であり変質者が胸踊らせる危険な時期。名古屋は悪魔の残暑で通報者が死滅しており、鬼作の実態がつかみにくい。柚子たちは近所のスーパーでミニスカートに慣れるしかないが、店舗は明るく広く監視カメラもある。客層もいつもと同じで安心。2人はこの時期にミニスカートを履かないので新鮮な気分を味わえた。もちろん実戦で身にまとうミニスカートは丈が短め。これより更に短くされる。上のシャツもブラジャーをギリギリ隠せるかどうかまで短くされる。腰のくびれに自信が持てないが仕方がない。でも朗報がある。私たちは発育が遅れ気味で幼児体型だが、マルスは私たちのプロポーションを重視しない。どころか成長途上だと温かく受け入れてもらえる。このあたりが日本との違い。スペックや属性だけで彼らは早合点しない。

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