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第38話、レベリング再開Ⅱ

 ゴブリンが、淀んだ丸っこい目で俺を見下ろしながらケラケラと笑っている。

 その胸元には鈍色に輝く力核コアがあった。

 更に別の2体が繁みの奥から姿を現す。


 今の俺にとって、ゴブリンは強敵だ。

 レベル3ならある程度余裕を持って勝てるが、レベル2で勝つことは難しい。

 そんな相手が3体も同時に出現したのだ。

 普通に考えれば絶望する状況だろう。

 だが今の俺にはなんら怖ろしくない。

 むしろ好機。

 美味しい経験値が向こうからやってきてくれたからだ。


「ケラケラケラ……ッ!?」


 ゴブリンが笑っている間に動く。

 これまでに総計2000体以上のゴブリンを狩ってきた俺だ。

 こいつらの戦闘パターンは熟知している。


 ゴブリンは基本的に残忍で臆病な性格のモンスターだ。

 だから集団で現れる事が多い。

 それも探索者の不意を打つ形で攻撃を仕掛けてくる。

 そんな奴らがノコノコと俺の目の前に姿を現したのだ。

 つまりこいつらは囮。


 そう思って俺が振り向くと、ちょうど俺の頭上の木からゴブリンが飛び掛かってきた。

 俺は用意したナイフで胸を一突きにする。

 俺に力核コアを貫かれたゴブリンは一瞬悶えてそのまま動かなくなった。


「……!!」


 今の不意打ちで俺を仕留めるつもりだったのだろう。

 ゴブリン達が驚愕している。

 この機を逃さない。

 俺は間髪入れず畳みかけた。

 最初に現れた奴の胸を袈裟斬りにし、慌てて応戦しようとしたゴブリンの拳を躱して蹴り飛ばす。

 もう1体は逃げようとしたので、無防備な背中を思いっきり斬ってやった。

 力核コアには届かなかったが、地面に倒れる。

 改めてそいつに止めを刺すと、さっき蹴り倒したゴブリンを改めて斬る。

 ここまで6秒。

 仮眠を取るのと同じ時間でゴブリン4体を倒す。


 ピロリン♪


 遅れてレベルが上がる音がした。

 だが油断はしない。

 獣の臭いが消えていないからだ。

 耳を澄ませると、繁みの奥から微かに獣の息遣いが聞こえる。

 俺が暫く繁みを見つめていると、ガサガサと音が鳴ってもう1匹出てきた。

 慌てずにそいつを斬る。


 これで5体。


 ピロリン♪


 またレベルが上がる。

 獣の匂いが消えたのでステータスを確認する。

 するとレベルが『5』まで上がっていた。

 昨日までレベルが1だった探索者が5まで上がれば、かなり上等だ。

 だが今日はこの程度で終わるつもりはない。


 なんて思っていると、俺は草むらに何か黒光りするものが落ちているのを見つけた。

 魔鉱石だ。


 お。

 ゴブリンがアイテムドロップするのは珍しいぞ。

 2000体狩っても出た事ないのに。


 そう思って早速フリマアプリで調べてみると、『ブラックルチル』とでる。

 ルチルってのは針の事らしく、よく見ると魔鉱石の中に無数の金色の針みたいのが入っているように見える。


 へえ。

『ブラックルチル』は、Dランク深層のモンスターじゃないと落とさないアイテムだ。

 俺が拾ったのは0・5カラットくらいの奴だったが、これだけでも市場価格で20万円はする。

 ゴブリンでもこんなアイテム落とすんだな。

 ラッキー。


 思ってもみない現金収入に俺が喜んでいると、更に何か落ちているのを見つける。

 それは茶色っぽい革でできた水筒のようなもので、中に透明な液体が入っている。


 これは『ゴブリンのミード酒』だ。

 酒って名前だけど、アルコールは殆ど入ってない。

 蜂蜜入りのレモン水みたいな味で、まあまあおいしい。

 効果は一定量飲む、もしくは体に浴びるとHPが回復するほか、一時的に素早さ(AGI)が2上がる。

『ゴブリンの』ってついてるけど、ゴブリンに限らず他の獣系モンスターも落とすので、よくジュース代わりに飲んでいた。

 アイテムまでドロップするなんて幸先がいい。


 思いながら、俺は手に入れた魔鉱石やミード酒を持ってきたバッグに仕舞った。

 そして『むさしの』ダンジョンの奥を見る。


 レベルが5に上がった結果、最大スタミナ値が『55』になった。

 ってことは、ギリで《《アレ》》行けるな。


 以前俺がゴブリンを狩りまくっていた時に偶然発見したトラップ。

『転送罠』に触れるのだ。


 強制的に瞬間移動させるこの罠を使って、俺はこの『むさしの』から転送先のEランクダンジョンに直接潜る。

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