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後宮の下賜姫様  作者: 四宮あか
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木箱

(まったく、まったく、まったくなーーーーーんてケチなの! 王様なのだから上手くやった暁には、報償のつもりで結婚祝いにと気前よく一式揃えてくれてもいいじゃないの。というか、もともと下賜姫として後宮に召し上げて、おいおいは家臣に下賜させるつもりだったのだからそれに伴う予算があったはずでしょ!

 こーーーーーんな危ない橋を渡らせておいて、最低限の金子を持たせて市井に帰すとかみみっちいことするんじゃないわよ。あーーーーーーー腹立つ!!!!!!)

 愛想笑いをしつつも、琳明は玲真にしてらやれたことで腸が煮えくり返っていた。

 琳明がどのような契約を玲真と結んでいたかは向俊にはわからない。

 だからこそ、一言いってやろうとした琳明を制しして、約束をより玲真にとって有利なものに結びなおされたのが腹が立つ。



(こっちが、逆らえないと思って好き勝手して、これだから身分の高いやつというのは存在そのものがめんどくさいのよ)

 きっとここに饅頭の材料があれば、琳明の手によって怒りにまかせて沢山の小さい饅頭ができあがったことだろうが後宮内ではそれはかなわない。



「さて、下賜姫様がお怒りになる前に手短に話を進めよう」

 玲真のせいだというのに……ともかく本題へと入ることになった。

 誰のせいでこうなってんのよ! と口から飛び出しそうになるのを琳明はグッと表情一つ変えることなく耐えた。



 玲真が言うには、琳明は体調を崩し今日から1週間の間、宮にふせるそうだ。その間の人払いや女官の対応は玲真がうまいことやってくれるそうだ。

 琳明と向俊はというと、後宮内は下女の服と宦官服のまま移動。

 後宮へと食材が搬入される業者になんとか話をつけたそうで、食材を後宮に持ってくる木箱が食材を後宮へ卸せば空になるから、向俊は業者の服に着替え業者の中に紛れて。琳明は木箱の中に入れときた……。



「うそでしょ……大丈夫なのそれ」

 脱出方法があまりにも原始的すぎないかとか、検閲はどうなるのとか一言どころか二言も三言もいいたいことがある。

「検閲を抜けるそのために、2重底の箱を作らせた。だから遅れた。お前がもう少し長身のある女だったらダメだったが、小柄なほうでよかったな」

 箱に入るのは自分ではないからと言ってめちゃくちゃだ。

 いったいどれだけの時間を箱の中にいなければいけないのか……。

「まってちょうだい、それって私がもし検閲のときに箱の中にいるとばれたらどうなるのかしら?」

「……それはもちろん、業者はこういうだろうな、『うちの荷物に紛れて市井にでようと考えるなんてこの下女は!』と」

「それじゃ私だけがばれたら貧乏くじじゃない」

「処分は私がすることになるから、その時にうまくとりなしてやるから心配するな。鞭で何発かもらうくらいですむだろう」

 無謀よと思うのに、もう荷物は搬入されてるから時間がないと言われればあれこれ言う暇もなく、本当に大丈夫なのと思いながらも下女の服に着替え琳明は後宮の他の女たちの中に紛れた。



 空の籠に布をかけて、さも何かをしているように装い琳明は向俊の後を追い目的の場所まで向かう。

 後宮に住まうすべての者が食べる物はかなりの量である。

 特に野菜は下女達も食べるからとにかく量がすごい。



 あとは本当にあっという間にだった。運び込んでいる男の一人と目が合うと、琳明はあっと今に木箱に押し込まれた。乱暴すぎると抗議する暇もなく、琳明の上にもう一枚木の板がのせられた。

(本当にこんなので大丈夫なの?)


 そう思うが、木箱に入ってしまった琳明にできることは後はひたすら神と天に対して祈り息を潜めるだけた。

 それにしても寒い。

 下女の服は粗末だ。冬になろうというのに、ほんの少ししか厚みのない綿生地である。

 妃の格好をしていた時は、一等いいものとまではいかないけれど、琳明にすれば上等な絹の衣を何枚も羽織るし、温めた石を布でくるんで服の内側に入れていたから余計にこの簡易なかっこの寒さが余計に身に染みる。

 時間がないからこそ、そんな温めた石など持ってくる暇は当然なかったし。なんとか、この下女の服のたもとに、先日麗華のところで茶器を拭いたものと、お茶を含ませた布を持ってくるのが精いっぱいだった。



 あらかじめわかっていればいろいろ準備したものを。実際にやらないやつというのは、いつもこっちがどうなるかなんて考えちゃいない。

 箱の中で体を小さく小さくして箱から出されるときは今か今かと待つ。


「ちいっと冷えるが踏ん張れよ」


 荒っぽい言葉がかけられる。

 私にではないだろうと思っていたが、箱に何か入れる音がして私に言ったのだとわかった。

 上に載る木は一応つっかえがあるから、琳明の上に直接載っているわけではないが上にのせられたものがまずかった。


 腕に冷たいものが当たって声が出そうになるのを琳明は口を両手でふさぎとめた。

 冷たい冷たい水だった。

 雪解け水のような冷たさがポタリポタリと琳明に落ちるたびに悲鳴が上がりそうになる。



 木箱が揺れる。いよいよ動くのだ。

 早く早く。気持ちが焦るが箱の中にいる琳明にできることは何もない。


 上蓋が開く音がした。

 箱の中身を確認してるのだろう。

「雪か……」


 先ほどの荒っぽい男とは違う声だった。






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