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後宮の下賜姫様  作者: 四宮あか
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巣食うモノ

 小蘭はいつも朗らかな主が玲真様の訪問があってから浮かない顔をしているのをひどく心配していた。

 琳明様と出会い、顔じゅうにあった醜い吹き出物が消えたことは、小蘭の今後の人生を大きくかえる出来事であった。


 上等な衣が駄目になった時も、衣よりもこの時期に衣を洗い直した小蘭のことを真っ先に心配する優しさだけではなく。

 衣を駄目にしたのは小欄ではないとすぐに見抜くほどの人物だった。自分の器量でつくことができるなかで最も当たりの妃だと思う。

 その主のこの落ち込みはなんなのか……



 琳明は心を落ちつけるために緊張を緩和する薬草茶を飲んでいた。しかし、それでごまかされるものではない。

 ほんの一刻にもみたいな時間で、琳明のたった一年だけと思っていた腰掛けの後宮暮らしは一変したのだ。



 その変化は次の日すぐに訪れた。

 琳明の小さな宮にいれられた大量の小麦が出され、あれほど苦労した干し野菜もあっという間に処理された。

 小麦のおかげでぎゅうぎゅうだった宮が玲真が動いたことでこうも簡単にすっからかんになった。



 続いて玲真から一通の文が届けられた。小麦を欲しい部署があったから助かったというお礼の文であった。しかし、手紙には似つかわしくないみかんの香り。玲真がみかんを食べながら文を書くとも思えない。

 最後に文は嫉妬する者もいるので燃やしてしまうといいとかいてあることから。琳明はもしやと思い火鉢にヒラヒラと手紙をあぶった。



 読み通り字が現れた。



 紅 麗華


 (ハク) 美蘭(ミラン)


 (セイ) 蝶花(チョウカ)


 紅 麗華を知っていたことから、残り二つも人名だとすぐに解った。

 他に何か書かれているわけではない。昨日のことから私が動き調べる相手がこの3人だと思いいたった。


 紅 麗華は一緒に入内したが紅家の直姫(チョクヒ)。他の二人もお会いしたことなどないが、家名に色が入っておりどれも名家で、直系もしくはそれに近いお姫様だろう。

 当然苗字的にも私のような下級妃賓であるはずもなく、すべて上級妃賓なのだろう。

 どうやって接触すればいいの無理難題だわと思うが、玲真が間を取り持つということは期待できそうにない。

 一下級妃賓である琳明のところには玲真が足しげく通うことは明らかに不自然だもの。


 名を覚えてそのまま火鉢に手紙をくべてしっかりと灰になるのを琳明は見届けた。

 昨日ことはまぎれもない本当に起こった出来事で生き残るために覚悟を決めて取り入り動かねばならない。



「本日はどうされますか?」

 小蘭が琳明にきいた。

「一緒に入内した方に会いに行きたいと思ってますの」

 琳明はニッコリと笑みを浮かべた。最初はあったことがある人物のほうが不自然ではないだろう。

 琳明は、たった二人の女官をつれて下級妃賓の住まうところから、上級妃賓の住まう場に行くことにした。



 下級妃賓の住む場所も、中央に大きな池があり、季節の木々が沢山あると思っていたが。上級妃賓の住む場所は下級妃賓の住まう場所とは全く違った。

 石畳の石がまず高価なものだとすぐにわかったし。宮も琳明のものと比べると大きさは3倍はあると思う。


 すれ違う女官も衣の色も、衣に使われている糸の質も全く違う。

 完全に下級妃賓の琳明は場違いだ。

 玲真が言う言葉から推測するに、ここに住んでいる妃達も、王のお越しがろくにないはずだ。

 ピリピリとしている妃の目に止まらぬように気をつけねばと思う。



 女官に道をききながら紅 麗華の宮へと到着したのだが、上級妃賓の宮の中でもやはり直姫が腰入れしただけあって宮の大きいこと。


 忙しく動く女官に声をかける。 

「紅 麗華に李 琳明が会いに来たと伝えてくださる?」

 こういう時は自信たっぷりにだ。少しでも不審な気配があると、絶対に上に伝えることなく、お断りされてしまうことを琳明は知っているからこそ、さも麗華に私の名を言えば伝わるという風を装った。

「かしこまりまして」

 衣を上から下までゆっくりと眺められてから女官は下がった。



 やはり駄目だったか……と思った時だった。中に入るように促された。

 中は豪華絢爛だ。上級妃賓の中から未来の皇后がでるだろうし当然だろうけれど。

 思わず頭の中で、装飾品を値踏みしそろばんを叩いてしまうのが悲しい。

 案内された客間の椅子に腰かけ琳明は紅 麗華が現れるのを待った。


(麗華に会うのは入内したとき以来。私のことを覚えているかしら、覚えてなかったらどうしよう……)


 緊張しながら椅子に座っていると、美しい陶器の茶器でお茶が運ばれてきた。

(銀食器は使わないの?)

 毒の話をきいていたからこそ、初歩中の初歩である銀食器が使われていないことにギョッとした。



 出されたものに口をつけないわけにはいかない。

 女官が下がったのを見計らって、素早く刺繍のはいった上等だと思われる支給された布で陶器の湯飲みを、別の布で受け皿を拭いてからたもとに入れる。

 冷ます振りをして息を吹きかけながら、香りに問題ないか確認する。

 といっても、お茶に匂いが目立つような毒をいれる三流が紛れ込んでいるのではないから玲真が出張っているのだろうが。

 解毒薬で中和できることから即効性のあるのもではないだろうと、ほんの少し口に含む。

 高い茶葉だということがわかるが、得体の知れないものが入ってるかもしれないと思うとゾッとした。

 さらに別のハンカチでやっぱり飲み込むことが精神的にできなかったお茶を含ませたもとにいれた。

 一応量はほんの少しとはいえ減っているので失礼には当たらないだろう。



 きょろきょろと部屋を見渡し、麗華の部屋に異変はないかを探っていたときだった。

「入内の時いらいね。私の宮に顔を出してくれるとは思ってもみなかったわ」

 麗華が顔を出したのだ。


 白い肌は以前のように美しいのはわかるが、琳明はわかってしまう。伸びのいい鉛のはいった白粉を麗華が塗っていることに。

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