表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

わたし、めりーさん。

作者: ぽぽんた

初投稿の小説です。

現代版メリーさんはこんな感じになってほしい。

2話完結です。暇つぶしになればうれしいです。

「あー腹減ったなぁ。ねむ。。」


独り言をこぼしながら深夜ひと気のない駅に降り立った。

この時間になると電車から降りてくる数人も片手で足りるほどの小さな駅だ。



仕事で遅くなることは良くある事だが今日は特に遅かった。

繁忙期になってから、毎日残業ばかりでろくに寝てもいない俺が体調を崩したのが先月の話だ。

睡眠時間も足りず、ろくに飯も食えない状態だった俺は仕事中に貧血を起こして意識を失った。

気が付いた時には病院のベッドの上で点滴を打たれていた。

病室に駆け付けた母親にはひどく心配され、実家の農業を継ぐことを勧められたが

ひとまず母親にはそのまま家に戻ってもらった。


生活環境の改善を考え、まずは通勤時間の見直しからと

これまで2時間以上かかっていた距離を短縮するため、引っ越しを決意した。

ついに実家から出ることを決めたのだ。

実家はいい。飯も出てくる。風呂も沸いている。

洗濯はされて畳まれて居る。最高だ。


だが田舎だ。


都内への勤務には少し、いやかなり遠いのだ。

体力の限界により、今回の事態になったことを考えると

実家暮らしを脱する時が来てしまったのだ。


勤務先へのアクセスは短くしたいが今までの環境を考えると

都内近郊よりも少しだけ離れた静かな地域で暮らしたい。


とういうことで、乗り換えなしで都内へアクセスできるが

住みたい町ランキングには入っているこの町へ引っ越してきた。


駅の周りには対したものはないが、主要道路沿いにはファストフード店が何件かあるため

初めての一人暮らしの俺には非常に心強い。

きっと自炊はしないであろう。


一人暮らしを始めて、気取った料理をするような生活は俺には無理なのだ、

アニメのキャラクターの声真似をしながら料理を作ったり

コンビニで買った総菜を、それっぽく盛り付けることだってできはしないだろう。


めんどくさいし。


つまり本日もコンビニで買った弁当が夕飯となる。


「しかしこの辺りも実家の田舎と変わんないな。終電ともなると人は歩いてないし。

まぁもともと住宅地とはいえ人通り少ないからな。駅も小さいし。」


独り言が言えるくらい周りにはひと気もなく真っ暗。

首都圏内とはいえ、発展しているのは限られた地域。

住みたいまちランキングにも入ってはいるが

自然が残るこの地域は少し落ち着く。実家には及ばないが。


「この辺りも駅から離れれば真っ暗だなぁ。」


職場への近さは求めていたが、家賃は安く抑えたい。

そう考えた俺は少しでも家賃を抑えるために、駅前のマンションではなく

少し駅から離れたアパートを借りることにした。

駅前から離れるだけで家賃が大幅に下がるのだから、多少の不便は仕方がないと思っていた。


しかしこれが少し思っていたのと違った。

駅から離れるということは、住宅街へと向かうと思っていたのだが

住宅街への坂や階段は想定外だった。

この辺りは地形的にもこの山坂が魅力の町らしい。

階段を上り坂を上り、畑を横にみながら住宅街の端まで進むと

我が家である。


いや、我が家しかない。


端に敷地が余っていたから作ったであろうアパートは

周りに民家もなくポツンと建っている。

田舎暮らしで暗闇には慣れているがかなり暗い。


民家も少し離れているし、畑も近いため灯が少ない。

それが家賃の安さの理由かと少し納得はしている。


だがこの人通りのなさ。昼間も多くはないが夜はほとんどだれも歩いていない。

住み始めて2週間。ひと気のなさが怖すぎてまだ慣れない。


「まぁ変質者に襲われるような見た目でもないし、ひったくりに注意ぐらいか?」


目の前にある看板をみながらまた独り言をつぶやいた。


「まぁこれだけ人目も少なければひったくりも出るだろうな。

かわいい女の子が一人で歩いてなんかしたらひったくりどころじゃないだろうな。

って女の子どころか誰も歩いてないけどなー。むしろこの辺りで女子を見かけたことないし。

まぁ俺の歩いてる時間も関係するのか?朝駅でもそこまでみかけないな。

子供はたくさん声がするからいるんだろうけど。」


誰もいない夜道で独り言を言いながら坂道を上っていた時だった。


ジリリリリリン!ジリリリリリン!


「うわぁっ!」


設定した覚えのない黒電話の着信音がスマホから鳴り響いた。


「びっくりした。てかこんな着信音設定してないぞ?」


画面を確認すると非通知と表示されていた。

非通知って。最近かかってくることなんてなかったから二度見したわ!

それよりもこんな夜道で大音量の黒電話が鳴るって子供の時に見たホラー映画かよ!

正直かなりびっくりした。

なんて考えている間にも俺のスマホからは黒電話が鳴り響いている。


ジリリリリリン!ジリリリリリン!


・・・出るべきか。


ジリリリリリン!ジリリリリリン!


いや非通知に出るの正直嫌だ。気持ち悪い。取りたくない。

だが着信音は途切れる気配はない。俺は意を決して電話に出ることにした。


「・・・・もしもし?」


ー・・・・・・・・


「ん?もしもし?」


ーわたし、めりーさん。今駅前にいるの。


え?誰?


ーわたし、めりーさん。今駅前にいるの。これからむかうわ。


新手のいたずら電話か?

俺の知り合いには「メリー」なんて名前の知り合いはいないし。

しかもずいぶんと幼い声だった。


「いたずらなら、」


ーツー・・・ツー・・・・・・


「切れた。なんだよ。」


しばらくスマホの画面を見ながら歩いていると

アパートの前まで来ていた。

家の鍵を探そうとポケットに手を突っ込みカギを取り出した。


ジリリリリリン!ジリリリリリン!


「っ!!!!!」


ジリリリリリン!ジリリリリリン!


画面には非通知と表示されていた。

またさっきと同じやつかな。とりあえず出てみるか。


「もしもし?」


ーわたし、めりーさん。今坂道をのぼっているの。


やっぱりさっきの奴か。親は何してる。非常識だぞ。

「君さ、こんな時間にいたずら電話なんてやめなさい。親御さん近くにいる?」


ーツー・・・・ツー・・・・


「あー。切れた。なんなんだよ」


最近の子供は小学生でもスマホは持ってるし、こういう悪戯が増えてるのか?

しかし夜中の1時過ぎにいたずら電話って。

俺が子供の頃は21時には寝てたぞ。

まぁ夜更かしが苦手だったから眠くなって勝手に寝てただけなんだけど。

しかも子供の頃の習慣が抜けなくて、この年になっても夜更かし苦手だし

オールは大体途中で寝落ちする。

うむ。寝る子は育った。


「まぁいいや。寝よ。風呂は朝でいいか。眠い。」

スーツを脱いで、そのままベッドに横になった。


「あーそろそろ布団干したいな。土日晴れるかな。」

目を閉じるとすぐに睡魔が押し寄せてきた。

布団に入って5秒で寝つける俺の特技は子供の頃から変わらない。

俺は布団に潜り込むと、睡魔に逆らわず意識を手放した。


ジリリリリリン!ジリリリリリン!


ジリリリリリン!ジリリリリリン!


「あー!!クッソふざけんなよ!

おい!お前いい加減にしろよ!何時だと思ってるんだ!」


ーわたし、めりーさん。今扉の前にいるの。


「扉の前?」


ーわたし、めりーさん。今あなたの家の前にいるの。


「は?」

俺の家の前にいる?何を言ってるんだ?


    トントントン


「!!!!!!」


俺の部屋に玄関の扉をたたく音が響いた。

嘘だろ?寝ぼけてて幻聴でも聞いたか?

今本当に俺の部屋の前に、電話をかけてきたやつがいるのか?


「もしもし?あのさぁ」

ーツー・・・ツー・・・


えー。なにそれコワい。気持ち悪すぎるだろう。

電話は切れているが、その後扉を誰かが叩いた。

扉の向こうに電話をかけてきた少女がいるのか?

「メリー」という名前の。


「そういえば子供の頃に見た映画でそんなキャラクターがいたな。

なんだったっけ。夏休みに毎年上映していて子供心にトラウマになるほど怖かった映画。」

学校に関する怪談を集めた内容で、ハラハラドキドキ観ていた

あの懐かしい映画が頭をよぎっていた。

懐かしいなぁ。友達と皆で見に行った記憶が蘇る。

そういえば結局何作あったのだろうか。

最後はどの作品だっただろうか。俺は見たのか?

DVDになってるのなら見てみたいな。


そんなことを考えながら布団に潜り

スマホをいじりながら懐かしい映画のタイトルを検索していた。

そして気が付けば再び瞼は閉じようとしていた。

さっきまで眠っていたのだ。当然すぐに睡魔は襲ってくる。


「あの電話が無ければ。。そういえば電話の後なんかあったような。。」


そのまま俺は意識を手放し深い眠りへとついた。

扉の前に来たという少女の存在はすっかりと忘れて。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ