独白
幸薄き人生を歩んで参りました。
決して不幸であったわけではありません。
上を見ればきりがなく、下を見てもきりがない程度の
極々人並みな人生でありました。
ただ
決して何事かを成し遂げる事もなく、何処かへと辿り着くでもなく。
ただただ、普遍の日々を過ごして参りました。
人並みに今一つ及ばず、さりとて人並み以下と断じられる程でもなく。
道行きを選べる自由を持ちつつ、しかして全てが歩める道行きでもなく。
何事かを成し遂げんと没頭し、気が付けば過ぎ去り、結末を喪い。
何処かへ至らんと足掻き続け、振り返れば彼方遠く、行程を喪い。
過去も未来も、私には泡沫の夢の如く、捉えられぬ何かでありました。
思考すればする程に、私には出来ることも、望むことも、求めることも
何もかもが意識から薄れ剥がれ落ち
気が付けば、ただただ立ち尽くし続けておりました。
五感に感じる全てが、無感動に、記憶されず、ただただ今この瞬間に
きっと何処かの誰かはこう感じるだろう、こう反応するだろうと
人らしさを装う為だけに全てを費やし、磨り減らす日々。
夢を語り、行程を定め、結末へと歩み行く人々を目にする度に疑念を抱く。
何故、私にはその気概もなく、諦めすらなく。
嘆く素振りを偽る事しか出来ないのかと。
年を経る度に多くに触れ、多くを失い、人々と出会い、別れ。
こちこちと刻まれる時間の中で、徒に老いだけが蓄積され。
私は私のまま、変わることもなく。
しかして五感は鈍り、錆び付き、等しく定められた終焉に気付かず。
きっと、独り、何処かで、何時の間にか終わって逝くのだろう。
願わくばせめて、誰かを特別とせず、誰かの特別にもならず
何処かの誰かの思い出に影すらも残さず。
独り真白な彼方へ